Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

ダリアの花、177

2017-05-15 22:33:15 | 日記

 「あの人本当に医者を呼びに行ったのかしら。」

目を開けて身じろぎ一つしない蛍さんに父は独り言のように話し掛けて来ました。

「あんな人の言う事が信用できると思う?」

自分に問いかけているように蛍さんに話し掛けて来ます。

「あんな人って?」

蛍さんが目を上に向けたまま聞き返しました。

あんな人はあんな人だよ、そう父は独り言のように繰り返していましたが、その内ハッとして、

「蛍、お前生きているのか?まだ息があるのかい?」

と、真顔で彼女の顔を覗き込んで来ました。

  「お父さんたら、縁起でもない。」

まるで私が死んだみたいなこと言って、と、蛍さんは呆れて父に問い返すのでした。

「あんな人って、伯母さんのこと?」

勿論そうだと父が言うので、蛍さんは伯母さんの事を気の毒に思いました。

 「如何してお父さん、伯母さんの事を悪く言うの。伯母さん何時も親切で優しいのに。」

今日だってこうやってわざわざ私の看病に来てくれて、さっきも上の伯父さんの伯母さんと一緒に2人で水枕を替えてくれたんだよ。

お母さんなんて全然顔も出さないじゃない。伯母さん2人ですごく親切にしてくれて優しかったんだから。お母さんに比べたら、全然違うわ。

2人ともとても良い伯母さん達じゃないの。お父さん、そんな伯母さんに怒鳴ったりして、それこそ罰が当たるというものよ。

 そう蛍さんが父に説経をすると、父は呆れて、蛍さんから顔を背けると、あれが親切というものなのかなぁ。

彼は娘の意見にさも反対するように疑わし気に嘆息すると、

「お前、自分が何をされたか知らないからそんな事う言うんだ。」

さも不満げに父は蛍さんに語り掛けるのでした。そして彼は1人でぶつぶつと何やら愚痴っていましたが、

  「それに、以前も…」

父はそこで言葉を切ると、何事かを思い出したようでした。その事について何か気付いたように視線を宙へと浮かせました。

父は何かしら過去の事を考えているようでした。そしてぽつりと、

「前にも、お前に手を出した事があるんだ。あいつ。」

あの時はよく見ていなかったから気が付かなかった、今回ははっきりこの目で確認したから、騙されないぞ。

もうあんな奴信じないからな。父さんにもあれにもよく言っておかないと。そんな事を父は呟くのでした。

そして何事か決心したようにきゅっと口を一文字に結ぶと、じーっと蛍さんの顔を見詰めるのでした。


ダリアの花、176

2017-05-15 22:08:36 | 日記

「大体、義姉さんの子でもないのに、如何してあなたが手を出したりするんです。親がちゃんといるのに。解せないなぁ。」

そう父が憤然として言うと、伯母は肩を落として力なく言うのでした。

「義姉さんがそう言っていたのよ。お義父さんがそう希望しているという話だったものだから。それに、澄さんの時の事を思い出してごらんって言われたものだから。」

「澄だって。」

「これは蛍の事なのに、如何して澄が出てくるんだ。」

と蛍さんの父は合点がいかないなぁと、口に出します。

「大体澄は怪我じゃなく病気で亡くなったんだよ。」

怪我をして危ない蛍とどう関係があるというんだ。そう父があなたの言う事は本当に解せないなぁと義姉に言うと、

伯母は答えました。

「澄さんが酷い病で、あれだけ苦しんで亡くなった事を、私や義姉さん、義兄さん、お義父さんやお義母さんだって、家の人だって、皆まだ確りと覚えているんです。」

あなたは家にいなかったから知らないんでしょうけど、それは酷い苦しみようで、傍で見ていた私達でさえ気の毒で、可哀そうで、

何もできないもどかしさを嫌という程味わったんですよ、またあの時のような苦しみや悲しみを繰り返したくないんですよ、

義姉さんも私も、そしてお義父さんもそうらしいと義姉さんが言うものだから、止む無く私が始末を引き受けたんです。

伯母がそう説明すると、蛍さんの父は眉間に皺をよせました。

 「澄がそんなに苦しんだなんて、私は初耳だなぁ。」

本当の話ですかと彼は言うと、あなたの言う事は如何も信用できない、こんな場面を目の当たりにした後なら尚更でしょう、

父に聞いて真実を問いただしてみないと、大体私がここへ来たのだって父に言われての事です。父があなた達と同じ意見だとは思えなぃなぁ。

そう蛍さんの父は自分の考えを示します。伯母は、ではお義父さんに確かめてみられたらいいでしょう。

そう言うと、つーっと廊下へ出て行こうとしました。

 「何処へ行くんです、逃げるんですか。」

蛍さんの父がきつい声で言うと伯母は沈んだ声で答えました。

「お医者様を呼びに行って来るんです。」

手当てしてもらうんでしょう、腫れが段々酷くなって来ましたからね。

そう伯母が言った通り、蛍さんの額には大きなたん瘤が出来て、瞼のあたりまで腫れが広がって来ていました。

「たん瘤が出来たのなら大丈夫なんじゃないですか。案外大した怪我じゃないのかもしれませんよ。」

腕白盛りの男の子を何人か持つ伯母は、安堵したように微笑むと、病室に父を1人残して廊下に出て行ってしまいました。


ダリアの花、175

2017-05-15 10:06:18 | 日記

 蛍さんの父が2階に駆け上がり、娘の病室への廊下を走るのももどかしく、

勢い付いた儘でだっーと病室の入り口に飛び込むと、丁度事は行われる最中で、それは彼の目の前で終焉を迎えました。

 ばしっ!

蛍さんの額の上で音がして、この時、義姉と義弟の目と目が合いました。

「何するんだ、あんた!」

蛍さんの父はそう言うと、きゅっと唇を噛んで目を怒らせると、蛍さんの寝ている寝台に近付き、義姉の手から箒を取り上げました。

それは病室を掃除する箒でした。彼女はその箒を両手で逆さまに持って、その柄で蛍さんの額を面とばかりに叩いたところだったのです。

 父が病室の入り口に立った時、その箒は打ち下ろされ宙を下りている所でした。

一瞬父の姿が目には行った伯母は、それが義弟と分からなくても、人の気配に振り下ろす手を躊躇して仕舞いました。

その為箒の勢いが削がれ、手元も狂い、打ち身に合わせようと狙ったところから外れ、箒の柄は蛍さんの額に命中したのでした。

 眠っていた蛍さんは大きな音に目を覚ましました。

目を開けようとしましたが、何だか目の前が真っ暗で目が開きません。その後漸く目に映った視界も、いつも見ている世界とは何だか違って見えます。

何しろ彼女は片方の目だけで物を見ていたのですから、何時もと比べると、目に映る世界は要領を得ないというものです。

それでも、目に入る2人の表情から、段々と父と伯母が険悪な雰囲気だという様子が分かって来ました。

 何しろ父の言葉が何時になく乱暴で、語調も荒々しい物でした。伯母も父に負けずに何やら盛んに言い争っています。

その2人の声を識別する事が出来るようになった頃、彼女は父にお父さんと声を掛けるのでした。

 「お父さん、如何したの?」

その声に父は振り向いて蛍さんの顔を見ました。そして、酷く驚いた表情になり、

「医者だ、医者だ、義姉さん医者を呼んできてくれ。」

と叫ぶのでした。

「そのままにしておいたら。」

と伯母は言い、どうせ助からないんだから早い方がいいでしょう。本人も苦しまなくて済むんだから。と続けて言うのでした。

 蛍さんの父は

「いや、私はまだ諦めていないんだ。」

「駄目でも出来るだけ長く、この子には生きていてもらいたいんだ。」

と強く主張するのでした。


まだ何も

2017-05-15 08:50:18 | 日記

 まだ何も贈っていないんです。

先週末から風邪で寝込んでいました。風邪が流行っているのでしょう。

 母の日までは、鉢花を送ろうと思い彼是物色していました。

定番のカーネーションにしようか、カラーの寄せ植えにしようか、カーネーションとミニバラの寄せ植えもよいなと、

鉢の種類などにも目を止めて眺めていました。鉢飾りのついている物、ブリキの変った形の鉢になっている物、等々。

選べないでいる内に週末。食事に行ってもよかったのですが、のんびりと家で過ごしました。

 昨日の母はというと、昼頃から食欲が無いと昼食を食べず、夕飯も要らないと寝込んでいました。

『病気かな?やはり風邪かな?』と、普通なら思う所ですが、盛んに何度か外出して外に出て行く姿に、

病気とは思えないと感じました。

 そして夕飯時、やはり食べたくないと言うので、私の方では、『これは、外で何か食べてきているのでは?。』と、勘ぐっていました。

おかずが気に入らなかったのかしらと思ったのですが、(母方の祖母がよく作っていた沢庵の煮物に、練り物を加えて煮込みにしてみました。沢庵の煮物は郷土食です。)

今朝、昨日は母の日と思いつくと、ああ、、何かプレゼントか外食に連れて行って欲しかったのかもしれないと思いました。

それで拗ねていたのかしら?と思った事です。

 私達、自分の子と孫が風邪で寝込んでいたので、外食に行きたいとも言えず、背中を向けてうろうろしていただけだったのでしょうね。