それでも蛍さんは、何かしらの答えを求めて木戸をじーっと見詰めてみました。そうする内に彼女にはあの木の戸の裏側には何か目に見えない物、土筆以外に隠された秘密が有るような気がしてくるのでした。
「おいおい、ホーちゃんの番だぞ。」
気付くと蜻蛉君が蛍さんのすぐ傍まで来て声を掛けていました。蛍さんは蜻蛉君に涙を見られたく無くて、彼から顔を背けると、そっぽを向いてぷん!と、怒ったふりをしました。そして盛んに目を瞬いて涙を乾かそうとしました。
「私したくない。放っておいて、もう蜻蛉君となんか遊びたくない。…」
そんな事を怒った口調で盛んにまくし立てて、蛍さんは自分の所から彼を遠ざけようとしました。
「仕様が無いな。」
彼は蛍さんの思惑通り、「ホーちゃん1回抜かしだ。」、そう茜さんに声掛けして元の場所へ戻って行きました。
蛍さんは蜻蛉君達の隙をついて手で涙をさっと拭うと、もうこれで大丈夫かなと思いました。
『誰も私が泣いていた事には気付かないだろう。』
そう思うと彼女はほっとしました。もうこれで落ち着いた、涙は出てこないと彼女は思いました。しかし、如何いう訳かまた程無く彼女の目にはほろほろと涙が溢れ出て来るのでした。蛍さんはこれには驚き困ってしまいました。自分ではどうにもならない涙なのです。