鈴舞さんの日舞の見学1日目は、この様な感じで終了しました。これ以外に特に師匠のご機嫌を損ねるという様な事も無く、友達の稽古にお叱りも無く、何しろ皆習い始めて日が浅く、練習時間もそう長く無く終了したので、全ては滞りなく済んだのでした。「今の所を家で練習するように。」と、初心者の弟子達に申し付けると師匠は鈴舞さんに顔を向け、
「まぁ、あんたも習う気が有るからここへ来たんだろうからね、」
そう言って、もう2回くらいは通ってみるかいと、家の人に聞いてからだねとにっこり笑って微笑むのでした。
「日舞を習いたい。」
早速家に帰った鈴舞さんは母にせがむのでした。にちぶ?要領を得ない母に、踊りだよ踊り、日本の踊りだよって、皆が言っていたと彼女が言うと、母は、ああと、日本舞踊だねと笑い。あんなものに興味があるのかと、へええと妙な顔付をして娘を見ると笑うのでした。
「ま、お父さんやお義母さんに聞いてからよ。」
と、母は言いましたが、多分習ってよいだろうと鈴舞さんに快諾の返事をするのでした。
が、事はそううまく行かず、結果から言うと鈴舞さんは日舞を習う事が出来なかったのでした。父の反対があったのか、祖母の反対があったのか、鈴舞さんには不明でしたが、母から彼女の希望を聞いた祖母はええと言葉も無く呆れ返った声で
「お前さん、娘を芸妓にでもしたいのかい。」
と嫁を諭したのでした。