*最初に書いた「ダンスの愉しみ 2」とは違いますが、書き直したものをここに上げておきます。
「 すずちゃん、心配しなくて大丈夫よ。」
お遊戯の指導の1人の先生が鈴舞さんに声を掛けました。先生は彼女以外にも不安そうな顔付きをしている子の名前を次々と呼ぶと、皆んなちゃんと出来るようになるから大丈夫ですよと、不安を和らげる為に声を掛けるのでした。
少しずつやるから、皆で音楽に合わせて踊る内にちゃんと皆踊れます。確信を持った先生の声でした。出来ない、お母さんに叱られる。前に踊れなかった。など言う声が数人上がり、鈴舞さんは同年代の経験者の子達の声に嫌な予感を覚えるのでした。
彼女は顔をしかめました。それは他のお遊戯未経験な子にも同様だったのでしょう、先生達は再度キッパリとしたように出来ますと言うと、お母さんに言っておいてあげます。今度はちゃんと出来ますよ。皆前の時より大きくなったからね。等、指導の上で不安要素になる子供達にキチンと対処の言葉を投げ掛けると、早速もうレコードが掛かりだしました。
こうして、不安を抱えた鈴舞さん、そして他の皆はその時の遊戯に取り掛かる事になりました。しかし、先生達が言った通りでした。何日かすると鈴舞さん達はお遊戯を全て覚え、きちんと曲に合わせて踊ることができるようになっていたのです。
なるほどと、鈴舞さんは思いました。この時彼女は踊れるものなのだなぁ、出来るものなのだなぁと、お遊戯というダンスに何かしらの手応えを感じていました。所謂達成感を覚えたのでした。
しかし、この経験から、彼女が以降の学校行事のダンス全てに気楽に取り組めた訳ではありませんでした。運動会であれ学校祭であれ、出し物の踊りを覚えるという最初の日には、彼女は『出来るかしら?』と、お遊戯の最初の日に感じたと全く同じ緊張感と不安感を覚えるのでした。それで彼女は尚更の様に指導の先生から一時も目を離さず、必死に耳を傾けて先生の言葉を一言も聞き漏らすまいと集中すると、熱心に振付を習得するのでした。