「俺の一族はこの世の中の事をきちんと把握しているのさ、ちゃんと達観しているんだ。」
と彼は笑みを浮かべて言うのでした。茜さんはそんな蜻蛉君の自慢気で誇らしい様子に気付くと、首を垂れてもう1、2歩彼のすぐ真横へとにじり寄り、ぴたりと体の側面を彼の真横にくっ付けました。そしてぽそぽそと
「その除念とか言うのを、もう少し詳しく教えてもらえないかしら。」
彼女は益々興味深々で、彼に物をねだる様な調子で頼み込むのでした。
本当に蜻蛉君が祟りの良い解消方法を知っているのかどうか、除念という物が本当にこの世の中に存在するのかどうか、この時にも彼女はまだはっきりとした確証は持てなかったのですが、彼のこれだけの余裕のある態度を見せつけられると、この話が本当にまんざら嘘では無くて、確かに何かしらの祟り等、怒る相手の怨念を上手く振り払える方法が有るのだろうと感じられるのです。彼女はどうしても真実を知りたくてたまらないのでした。
蜻蛉君はそんな物欲しそうな茜さんの顔ををちらりと見ると、ふふんとばかりに笑いました。そして、
「信じる?この話を信用するのかい?この俺を?」
と声を掛けました。こくりと茜さんは彼の眼を見てここぞとばかりに頷きました。そして思わずごくりと唾を飲み込みました。『そんな方法が本当にあるんだ⁉』この時、彼の眼を覗き込んだ茜さんはそう確信しました。「信じるわ。」
「教えてよ、ねっ、私とあんたの仲じゃないの。」
茜さんは熱心に彼に頼み込みました。如何しようかな…、そんな言葉を迷うような相手を焦らすような感じで言うと、彼は「本当に除念って言う物がこの世にはあるんだ。」と打ち明けました。
茜は聞いた事無かったのか、除念という言葉。ま、大抵の奴は知らないけどな、除念なんて言葉。そんな風に除念の言葉を口にする度に、彼はいかにもこの世の中の事は達観した、物事大した事は無いと言わんばかりに、段々と態度も大きくなって行くのでした。