碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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桜木紫乃『起終点駅(ターミナル)』がいい

2012年06月08日 | 本・新聞・雑誌・活字

桜木紫乃さんの『起終点駅(ターミナル)』(小学館)。

これが、なかなかいいのです(笑)。


直木賞候補作『LOVELESS(ラブレス)』が評判となった桜木さんの最新作品集。

北海道を舞台に描かれる、女たちと男たちの喪失と再生の物語であり、全6篇に微妙な陰影を与えているのが北の国の自然だ。

表題作に出てくるのは弁護士の鷲田完治。国選弁護しか引き受けないため周囲から「変わり者」と呼ばれている。

そんな鷲田がある女の弁護をしたことから、ふと過去をふり返る。1960年代後半、学生運動のアジトで出会った冴子との日々、そして別れ。2人の女がなぜか重なってゆく。
 
「かたちないもの」の主人公は笹野真理子だ。大手化粧品会社で管理職を務めている彼女の元に、かつての恋人・竹原基樹の納骨式に出て欲しいという手紙が函館から届く。

10年前、突然2人の関係を解消し、東京を去った竹原。北の街を訪れた真理子は手紙の差出人である神父の角田吾朗から、その後の竹原がいかに生き、死んでいったのかを聞く。

「海鳥の行方」のヒロインは新聞記者の山岸里和。希望に燃えて入社した新聞社だったが、配属先の釧路支社で、そりの合わないデスクから徹底的に叩かれる。

そんな失意の中で出会ったのは初老の漁師だった。違う世界で生きてきた男と話をするうちに、里和の中の何かが溶けはじめる・・・・。