東京新聞に連載しているコラム「言いたい放談」。
今回は、先日見た映画『愛と誠』について書きました。
1972年の「愛と誠」
三池崇史監督の怪作にして快作『愛と誠』を見てきた。まず梶原一騎原作による純愛一直線の劇画が、歌って、踊って、ケンカしてのミュージカル仕立てになっていたのに、びっくり。
また、七〇年代に「少年マガジン」の連載をリアルタイムで読み、実写の早乙女愛(同じ芸名の女優さんが演じた)を見て、「違うんだよなあ」とツッコミを入れていた者としては、劇画のヒロインにあまりに酷似した武井咲にも驚いた。早乙女愛の、あの髪型が似合う女優が私の生きている間に登場したことが奇跡だ。後はひたすら武井咲を眺めていればいい。
映画の舞台は一九七二(昭和四七)年という設定。太賀誠(妻夫木聡)の背後で怪しく光る「新宿の目」など、昭和の記憶を呼び覚ます記号が並ぶ。スケ番、金粉ショー、アンナミラーズ風制服、いずれも“七〇年代イコン”だ。
しかし最大の仕掛けは昭和歌謡曲の連打だろう。「激しい恋」「空に太陽がある限り」「夢は夜ひらく」などに拍手、「また逢う日まで」には合掌。出てきた曲を全部歌える自分に笑ってしまう。
劇中の早乙女愛は名門・青葉台学園の三年生だ。この年、私も地方の高校三年生。知らなかったとはいえ、愛と誠、「君のためなら死ねる!」の岩清水弘とも同期だったのだ。四十年後の今、彼らがどうしているのか、気になる。
(東京新聞 2012.06.27)