碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

言葉の備忘録299 どんなこと・・・

2022年11月05日 | 言葉の備忘録

 

 

 

どんなことをしているとき、

いちばん自分が楽しいか、

自分がいちばん生き生きしているか、

それをしっかり見定めるのが、

人生において大事なことになります。

 

村上春樹

(TOKYO FM「村上RADIO~マイ・フェイバリットソングズ&村上さんに聞いてみよう~」10月30日放送より)

 

 


「医療ドラマ」に変化  現実を踏まえた説得力

2022年11月05日 | 「北海道新聞」連載の放送時評

 

 

碓井広義の放送時評>

「医療ドラマ」に変化 

現実を踏まえた説得力

 

この秋の連続ドラマには複数の医療ドラマが登場している。興味深いのは、「私、失敗しないので」などと豪語するスーパードクターがいないことだ。現実が抱えるさまざまな課題も提示しながら、医療の世界を舞台にした人間ドラマになっている。

1本目は「ザ・トラベルナース」(テレビ朝日-HTB)である。トラベルナースは有期契約で仕事をするフリーランスの看護師。米国では範囲は限られているが、高度の資格を持つ看護師が医師の指示で医療行為を行うことができる。

この医療ドラマの注目点は三つある。まず世間ではあまり知られていないトラベルナースをテーマとしたことだ。次にナースとして男性看護師を設定したことである。看護師と聞けば女性を思い浮かべる人は今も多い。しかし現場では多くの男性看護師が活動しているのだ。そして三つ目のポイントが、主人公の那須田歩(岡田将生)と対比する形でベテランのトラベルナース、九鬼静(中井貴一)を置いたことだろう。

米国帰りの那須田は、医者が絶対優位の日本の現場にイラだつが、九鬼は看護師の立場を踏まえながら、巧みな言動で医者たちを自在に操っていく。そんな九鬼の信条は「医者は病気しか治せないが、ナースは人に寄り添い、人を治すことができる」。この“第二の主人公”が物語に奥行きを与えている。

もう1本、意欲作と呼べる医療ドラマが「PICU-小児集中治療室」(フジテレビ-UHB)だ。PICUは全国に約40施設ほどしかなく、今後の普及が待たれている。

ドラマの舞台は北海道。「丘珠病院」の植野元(安田顕)が率いるPICUに参加したのが、主人公の新米小児科医・志子田武四郎(吉沢亮)だ。真面目で一生懸命だが、経験と技術の不足は否めない。しかし、それだからこそ見えることも言えることもある。

少年がトラックにはねられ、救急搬送されてきた。胸の肋骨(ろっこつ)が折れて肺を損傷している。植野たちは安全策として右肺の全摘出を決めるが、武四郎は納得できない。これから長い年月を生きる子どもにとって、人生の幅が狭まると考えたからだ。結局、肺を生かす形での治療が行われることになった。

これまでの医療ドラマには、物語を盛り上げようと過度な演出を施した作品が少なくない。だが、医者も看護師も万能のヒーローではない。悩みながら迷いながら、最善の治療を目指して奮闘しているのだ。患者に寄り添う医療ドラマの出現を大いに歓迎したい。

(北海道新聞 2022.11.05)


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2022年11月05日 | 気まぐれ写真館