碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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三島由紀夫、52年目の「11月25日」

2022年11月25日 | メディアでのコメント・論評

 

 

1970年(昭和45年)11月25日、
三島由紀夫 没。

享年45。

合掌。

 

 

1969年5月13日、東京大学駒場キャンパス900番教室

 


名作ドラマ『阿修羅のごとく』再放送で、あらためて知る「向田邦子」の凄み

2022年11月25日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

 

 

名作ドラマ『阿修羅のごとく』再放送で、

あらためて知る「向田邦子」の凄み

 

19日(土)の夜、NHKのBSプレミアムで、ドラマ『阿修羅のごとく』(全3話)が再放送されました。
 
脚本は、向田邦子さんです。
 
最初に放送されたのは、40数年も前の昭和54年(1979)。
 
ただし、人間の本質というか、普遍的な心情が描かれており、時代を超えた名作と呼べる1本です。
 
主要人物は、性格も生き方も違う四姉妹(加藤治子、八千草薫、いしだあゆみ、風吹ジュン)。
 
彼女たちを軸に、老父母、夫や恋人も含めた赤裸々な人間模様が映し出されます。
 
謹厳実直なはずの父親(佐分利信)に、愛人がいたことが判明して騒動に。
 
その過程で、家族それぞれが抱える秘密も明かされる展開は衝撃的で、向田ドラマの代表作の一つとなりました。
 
たとえば、こんな場面があります。
 
おムスビをつくる姉妹たち。つくりながら、食べたり、手のごはんつぶをなめとったり。
 
「あら、巻子姉さん、(おムスビ)三角なの?」
「そうよ」
「うち、俵じゃなかった?」
「綱子姉さん、『たいこ』型だ」
「オヨメにゆくと、行った先のかたちになるの」
「すみません、いつまでも俵型で――」
 
また、彼女たちが雑談する場面。
 
「あたし、覚えてるなあ、お母さんが足袋、脱ぐ音」
「夜寝る時でしょ、電気消した後、枕もとで」
「足のあかぎれに、足袋がひっかかって、何とも言えないキシャキシャした音、立てンのよねえ」
 
こういったセリフは、向田さんにしか書けません。
 
さらに、再放送を見ながら、あらためて驚いたのが、以下の場面・・・
 
家で、父親のコートにブラシをかけている母親(大路三千緒)。小学唱歌をのんびりと歌っています。
 
「♪でんでん虫々 かたつむり」
 
コートのポケットの中から、ミニカーがひとつ、ころがり出ました。
 
妻が浮気に感づいていないと思い込んでいる夫。
 
愛人が生んだ子供(男の子!)にプレゼントするつもりのミニカーです。
 
母親は黙って、手のひらに乗せてしばらく見ていました。
 
「♪お前のあたまはどこにある」
 
畳の上でミニカーを走らせたりする母親。
 
いきなり、そのミニカーを襖(ふすま)に向って、力いっぱい叩きつけるのです。
 
襖の中央に、食い込むように突き抜けるミニカー。
 
穏やかな母親の顔が、一瞬、阿修羅に変わります。
 
「♪角出せ、やり出せ、あたま出せ」
 
突然、電話が鳴ります。母親はいつもの様子に戻って、
 
「もしもし、竹沢でございます。――ああ咲子(四女)、あんた元気なの?」
 
・・・いやあ、怖いです(笑)。
 
こういうシーンを、さらりと入れ込んでくるのが、向田邦子の凄みでしょう。
 
今回のような「名作ドラマ」の再放送、今後もどんどんやって欲しいものです。
 
ちなみに、続編となる『阿修羅のごとく パートⅡ』(全4話)は、12月3日(土)の夜、同じくBSプレミアムで再放送されるそうです。