碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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日清のどん兵衛CM アニメの力、世界観に引き込む

2022年11月23日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム

 

 

アニメの力、世界観に引き込む

日清のどん兵衛CM

「どんぎつねシーズン 2  耳そこですか? 篇」

 

日清のどん兵衛が展開している、アニメーションCMのシリーズだ。どんぎつねと青年の物語だが、毎回、キャラクターデザインが素晴らしい。

第1弾を担当したのが漫画「ツルモク独身寮」の窪之内英策さん。放送中の第2弾は「まねこい」で知られるモリタイシさんである。マニアックな漫画ファン、アニメファンも納得の人選だ。

舞台は大正時代の帝都・東京。路面電車が通る道を袴姿の女学生が走る。尖った耳と大きな尻尾のどんぎつね(声・早見沙織)だ。

家で天ぷらそばを食べていた青年(声・小野賢章)に、「なんできつねうどんじゃないんですか?」と詰め寄る。

天ぷらをサクッとかじる青年。「裏切りの音!」と指で耳を塞ぐが、その位置は人間と同じだった。「そこが耳?」と青年。

間違いに気づいて愕然とする、どんぎつね。「見なかったことに」とテレる姿が何ともかわいい。

力のあるアニメは、繊細な表現と大胆なデフォルメで見る側を独自の世界観に巻き込んでいく。このCMを見ながら、ふと長編を夢想してしまうのは秀作の証だ。

(日経MJ「CM裏表」2022.11.21)