河太郎の読書日記

本とか映画とかいろいろ

f植物園の巣穴

2009-09-14 21:57:16 | 読書(小説)
梨木香歩、朝日新聞出版。
「家守奇譚」の雰囲気で、お話は「沼地」のような。
語り手は「私」。ストーリーも終盤になって名が明かされる。
植物園に勤める「私」が、植物園で、椋の木のうろに落ちた
あたりから、不思議が始まる。
歯が痛くなって歯医者にかかれば、歯の穴は奈落のように深く、
歯医者の家内の前世は犬だったり。
「私」の心の闇が明かされ、癒されていくわけだが、
最初に提示された物事はほぼすべて真実ではなくて、
文字通りめくるめく、真実が明らかになり、大団円。
なんか、とてもいい話に収まって、ちょっとびっくり。
しかもフェミニンなテイスト?頑固旦那が妻に振り向くような。
次から次へと情景の変わる幻想譚。
日常から逃避した気分を味わった。
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ミシシッピがくれたもの

2009-09-11 21:51:06 | 読書(小説)
リチャード・ペック、東京創元社。
アメリカの児童文学。
原題は、私たちのあいだにある川。
南北戦争って、単純な白黒の対立みたいに思っていた。
形式として3部に分かれているけど、第2部の祖母の語りは唐突で、
前後の「わたし」と、なめらかに結びつかない。
そこは、うまくできていて、もう一度読み直すと、
ちゃんと書いてあったんだということがたくさん見つかる。
しかも、デルフィーンとカリンダの不思議な少女たちの秘密。
少年は、父に連れられ、初めて祖父母を訪ね、祖母から昔話を聞く。
そして、自分のルーツに触れ、少年は大人になるのだ。
淡々としたストーリー。だけど、静かな驚きがあるお話だ。
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船に乗れ!1合奏と協奏

2009-09-10 21:26:11 | 読書(小説)
藤谷治、JIVE。
高校音楽科物語。
「のだめ」以来、クラシックの敷居はちょっと下がったか。
とはいえ、かっこいいとかそういう部分があるのは変わらない。
私もそういうのに憧れて大学オーケストラに入ったわけだしなー。
ともかく。
大人になった主人公が、青くて恥ずかしい子ども時代を回想する、
というところから始まる物語。
昔と今の自分は全く違う、と自虐するほどの出来事とはなんだろう。
主人公サトルは、1巻読む限り、この高校ではそれなりにできる
チェリストで、憧れの彼女ともいい感じ、という王道を歩んでいる。
だけど、初っぱなの回想や、1巻ラストのこれから坂道を転げ落ちる、
というような一文が、この先どうなるんかなーと思わせる。
ってことで続きを楽しみにすることにする。
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ダチョウ力(ぢから)

2009-09-09 21:34:31 | 読書(その他)
塚本康浩、朝日新聞出版。
意外に大手から出版されているのだな。
装幀やレイアウトも凝っている。
ダチョウの抗体マスクを作った獣医師のエッセイ。
なぜ彼はダチョウに魅せられたのか?
ってなところからはじまり、研究風景がおもしろおかしく語られ、
なおかつ、ウイルス防御の作用機序とかも分かりやすく説明。
分かりやすいと思うのは同業者だからか?
たまに「ウイルス」が「ウィルス」になってる誤植が気になる。
研究って、面白いよねー。私にはしんどい部分が多かったけど。
たまに大学の研究生活が懐かしくなる。
面白かったよ。
私が99年に伊那市のダチョウシンポジウムに行っていたら、
人生変わってたのかもなあ。
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アーモンドチョコレート色のワルツ

2009-09-08 20:35:56 | 読書(小説)
森絵都、講談社。
ひとつづつこの著者の本を読んでいってるけど、
どうにもやっぱアクがないというか。
3つのピアノ曲をテーマに、
子ども時代の終わりとか大人への入り口というか、
そんな時期を描いている。
表題作に出てくるサティのおじさんは面白かったな。
子どもが好きそうな。

この人の本を読んでいると、
子供心を大事にするあまり、社会の子どもへの優しい嘘を
全部むき出しにしてしまったかのような印象を受ける。
サンタクロースのように、いつか分かる通過儀礼のようなものも
残して行かなきゃいけないんじゃないのかーと思う。
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