遊びをせんとや

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絵本画家 赤羽末吉 ~ス―ホの草原にかける虹~

2021-09-01 06:04:07 | ブックリスト
夏の初めから読み始めたが、途中で血圧があがったりして
少し読んでいてつらい部分もあったので、時間をかけて
8月の中旬にやっと読み終わった。

絵本画家 赤羽末吉 スーホの草原にかける虹



以前にもブログに書いたが、
以前の記事はこれです。
OGPイメージ

一番好きな絵本作家~赤羽末吉 - 遊びをせんとや

子どもができて一番の儲けものは絵本の世界と出会ったことだと言っても過言ではない。いずれ絵本のことをまとめてブログに書きたいなーとぼんやり思っ...

一番好きな絵本作家~赤羽末吉 - 遊びをせんとや

 


私は日本の絵本画家の中で赤羽さんが一番好きです。
かなり昔にデパートで原画展を観て、その感を強くした。

この壮大な詳細な伝記は赤羽さんの三男のお嫁さん「お茂さん」赤羽茂乃さんが書かれた大書である。

赤羽末吉はその才能を生かし、旧満州で運送会社の経理から満州電々の仕事に就く。

働きながらも精力的に中国各地を回り、その土地の郷土玩具集めた。モンゴルにも足を延ばし現地の人々と交流した。
中国での絵画文化活動にも力を入れた。

満州からの引き上げが凄まじく、戦後の暮らしも楽ではなかったので、娘さんや息子さんが次々に亡くなっていく。
そこがつらくて読めなかった。

それでも戦後、アメリカ大使館のチーフデザイナーとしてアメリカ文化等を紹介するのに展示物のディスプレイとかしてはった。
だから赤羽さんの作品には大陸的なおおらかさとなんだかモダンなエッセンスが共存しているんだとわかった。
そんな忙しい中でも絵本を描き続けて出版されていた。
そして中国と同じように、日本全国を旅する。

もともと、中国では日本画を描いていたので、基本はしっかりしている。
画材は豊富である。墨、和紙、顔彩、岩絵の具と色々使える。
デザイン能力は高いので絵本の流れや見せ方は当然、心得ている。
そして、何事もあきらめずに校正を重ねていったので出来上がった作品は必ず子供の心を打つ。

今回、この詳細な伝記を読んで改めて、赤羽末吉の子どもへの眼差しの暖かさを感じた。
それは中国で出会った名も知らない市井の人々への眼差しと通じる物がある。

扇面にこだわった「かさじぞう」


鬼が素敵なこぶじいさま


和紙をちぎって重ねて表現した繊細な作品「お月さん 舟でおでかけなされ」

子供たちに読んでやりながらなんて素敵な絵本なんだろうと思ってた。

大胆に縦に画面を使った「へそもち」

五重塔の高さが際立つ。

そしてモンゴルを訪れてなかったら描けなかった「スーホの白い馬」

今だに涙なくして読めない。これが描きなおされた作品だったとは。

日曜日に小早川秋聲の経歴を知った時も、絵を描く人は本当に心が広くて、強いなーと実感した。
貪欲というか、諦めないというか、そしてモチーフに向ける眼差しが作品に投影されるんだ。

赤羽末吉さんの原画はほとんどがいわさきちひろ記念館に寄贈されているので、また本物に会いに行こうと思った。