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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

小池都政の実態(下) 共産党、公約違反を追求

2024-07-01 07:10:49 | 政治・社会問題について
小池都政の実態(下) 共産党、公約違反を追求


語らない外苑再開発
多数の樹木を伐採・移植し、超高層ビル3棟を建設する外苑再開発計画に対して、多くの市民や著名人、環境・都市計画の専門家など批判の声が広がり、都知事選の大きな争点になっています。
しかし、小池氏は神宮外苑再開発で、批判の声を「ネガティブキャンペーン」「一方的な情報」だと非難してきました。知事選政策でも外苑再開発について一言も語っていません。

待機児童は解消せず
「『人』が輝く東京」ではどうか。小池氏は「待機児童97%減少」を掲げます。しかし、小池氏が挙げる数字は、認可保育園に入れなくても自治体独自補助の保育施設を利用したり育児休業を延長して復職を諦めたりした場合に、待機児童とみなさない「新定義」の児童数です。
認可保育園等(認定こども園、地域型保育事業を含む)に申し込んだのに入れなかった実質的な待機児童(今年4月1日現在)は、共産党都議団の調査で少なくとも55区市町村1万2229人に上っています。
共産党都議団は一貫して認可保育園の増設を求め、都有地・国有地の活用などを質問や条例提案で繰り返し提起。石原慎太郎知事時代(1999~2012年度)の“安上がり保育”推進から、認可保育園の増設へと都のかじを切らせ、大規模な増設を実現してきましたが、待機児童問題は決して「ほぼ解消することができた」(今年2月議会で代表質問への答弁)問題ではありません。



都知事選前最後の定例会で討論に立つ日本共産党の原純子都議(左)。右手前は小池百合子知事=6月12日、都議会本会議

給食無償化新たな格差
小池氏は「2期目公約の実現」として「50の自治体で給食無償化」を挙げました。
しかし、小池知事は昨年秋までは、都議会で「(法律では)学校給食費は児童・生徒の保護者負担とされている。学校給食費の取り扱いは国の責任と負担によるべきもの」(昨年9月議会で共産党の白石たみお都議の代表質問に)と答弁するなど、冷淡な態度を取っていました。
学校給食の無償化を求める都民の世論と運動が広がり、12月議会でようやく「学校給食費の負担軽減に大胆に踏み出す」と表明しましたが、都の補助率は経費の2分の1にとどまっています。23区は無償化しましたが、財政力が弱い多摩・島しょの市町村では無償化に踏み出せない自治体が残されるなど“新たな多摩格差”が生じています。
今年6月の都議会で、共産党の米倉春奈都議が「半額補助では財政的に厳しいと悩む市町村も少なくない。都内全ての子どもたちの給食費を無償にするには、都が全額補助することが重要だ」と迫りましたが、小池氏は答弁に立ちませんでした。
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年6月28日付掲載


「『人』が輝く東京」ではどうか。小池氏は「待機児童97%減少」を掲げます。しかし、小池氏が挙げる数字は、認可保育園に入れなくても自治体独自補助の保育施設を利用したり育児休業を延長して復職を諦めたりした場合に、待機児童とみなさない「新定義」の児童数。
認可保育園等(認定こども園、地域型保育事業を含む)に申し込んだのに入れなかった実質的な待機児童(今年4月1日現在)は、共産党都議団の調査で少なくとも55区市町村1万2229人に。
学校給食の無償化を求める都民の世論と運動が広がり、12月議会でようやく「学校給食費の負担軽減に大胆に踏み出す」と表明。しかし、都の補助率は経費の2分の1にとどまる。23区は無償化しましたが、財政力が弱い多摩・島しょの市町村では無償化に踏み出せない自治体が残されるなど“新たな多摩格差”が。
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小池都政の実態(上) 「都民守る」と公約したが

2024-06-30 07:13:19 | 政治・社会問題について
小池都政の実態(上) 「都民守る」と公約したが

大激戦の東京都知事選(7月7日投開票)で、現職侭の小池百合子氏(71)が3期目を目指す政策で掲げる2期8年の「実績」の実態を見ました。(東京都・川井亮)

小池氏は政策で「2期目公約の実現」として、①「都民の命を守り『稼ぐ』東京の実現」②「『人』が輝く東京」③「『都民ファースト』視点での行財政改革・構造改革」を挙げました。

コロナ禍で病院独法化
「都民の命を守る」公約の中で「新型コロナ対策」を実績に挙げていますが、小池都政が行ったのは、新型コロナウイルス対策の先頭に立っていた都立・公社病院を独立行政法人化(2022年7月)したことでした。
都立・公社病院は平時から感染症病床を確保してきました。コロナ禍には最大2210床のコロナ病床を確保し、障害者や透析患者ら入院先の確保が難しい患者を積極的に受け入れました。厚生労働省の調べでは、全国のコロナ病床数の上位1~11位を都立・公社病院が占めました。
独法化は「経営効率」優先で、都の財政支出の削減が目的です。都は独法化で「人材を柔軟に確保できる」としてきましたが、実際には独法化後1年半余で職員不足などにより19病棟の計629病床が休止しています。
コロナ禍では、公衆衛生の拠点の保健所に「電話がつながらない」という事態も相次ぎました。区部では各区に保健所があるのに対し、多摩地域では7カ所しかなく、府中市など6市を所管する保健所は100万人もの人口を抱えています。
都は「保健所のあり方を検討する」としていましたが、1月にまとめた対応策では「市町村等関係機関との連携強化」やデジタル化を進めるとした一方、住民が求める保健所の増設は盛り込みませんでした。
小池氏のコロナ対策は、自慢できるものではありません。



都議会で3選出馬表明後、記者団に語る小池百合子知事=6月12日、都庁

行財政改革資料白塗り
小池氏は「『都民ファースト』の視点での行財政改革」を実績として挙げています。
しかし、知事就任当初掲げていた「情報公開は(都政の)信頼回復への一丁目一番地」(16年12月議会での所信表明)はどうなったでしょうか。
小池氏は16年12月議会では「黒塗り資料の積極的な公開も進めてきた」と述べましたが、晴海五輪選手村用地の投げ売り、神宮外苑再開発、築地市場豊洲移転、カジノ誘致検討などの公文書を日本共産党都議団やジャーナリスト、市民団体が開示請求したのに対し、都は黒塗り文書を連発しました。
ジャーナリストらがこれを批判すると、今度は文書の非開示部分を枠で囲んで白く塗りつぶす「白塗り」にしました。「黒塗り」を「白塗り」にしたのが実績だと言うのでしょうか。

ごまかした市場の移転
小池氏は16年の知事選で「築地市場豊洲移転は立ち止まる」公約を掲げ、17年6月の都議選直前の会見では「築地は守る」「(築地は)市場としての機能が確保できるための方策を見出(みいだ)す」「(仲卸業者が)築地へ復帰する際のお手伝いはする」と述べていました。
しかし、都議選が終わると一転じて豊洲移転推進を打ち出し、8月の記者会見で移転決断の理由を問われると「それはAI(人工知能)だからです」と意味不明の発言でごまかし、移転を強行したのです。
その後、築地市場跡地は三井不動産などを事業予定者に選定。事業者は収容人数5万人の大規模集客施設や大規模会議場、高層マンションなどを建設する計画を打ち出しました。「築地は守る」公約は影も形もありません。
24日の討論会では、かつて「築地は守る」と述べていたことについて問われ、小池氏は「築地の定義がよく分かりません」としどろもどろでした。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年6月27日付掲載


「都民の命を守る」公約の中で「新型コロナ対策」を実績に挙げていますが、小池都政が行ったのは、新型コロナウイルス対策の先頭に立っていた都立・公社病院を独立行政法人化(2022年7月)したこと。
都は独法化で「人材を柔軟に確保できる」としてきましたが、実際には独法化後1年半余で職員不足などにより19病棟の計629病床が休止。
晴海五輪選手村用地の投げ売り、神宮外苑再開発、築地市場豊洲移転、カジノ誘致検討などの公文書を日本共産党都議団やジャーナリスト、市民団体が開示請求したのに対し、都は黒塗り文書を連発。批判されて「白塗り」に。
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ビジネスと人権 国連「訪日報告書」を読む(下) 差別構造の全面解体必要

2024-06-25 07:03:08 | 政治・社会問題について
ビジネスと人権 国連「訪日報告書」を読む(下) 差別構造の全面解体必要

労働者教育協会 筒井晴彦理事

国連「ビジネスと人権」作業部会の報告書は結論部分で、国に25項目、ビジネス界に10項目、市民社会に3項目を勧告しています。労働に関わるものを中心に紹介します。

条約批准を
国に対する勧告ではまず、▽リスクに直面するグループに対する不平等と差別の構造の緊急かつ全面的な解体▽国際労働機関(ILO)「雇用と職業における差別禁止条約」(第111号)、同「職業上の安全と健康に関する条約」(第155号)など4条約、6議定書の批准(表)―を求めています。


国連「ビジネスと人権」作業部会が批准を求めている条約と選択議定書
・ILO「雇用と職業における差別禁止条約」(第111号)
・ILO「職業上の安全と健康に関する条約」(第155号)
・ILO「強制労働条約」(第29号)の2014年議定書
・ILO「原住民及び種族民条約」(第169号)
・国連「すべての移住労働者とその家族の権利の保護に関する国際条約」
・国連「女性差別撤廃条約」の選択議定書
・国連「人種差別撤廃条約」の選択議定書
・国連「経済的・社会的・文化的権利に関する国際規約」の選択議定書
・国連「市民的・政治的権利に関する国際規約」の選択議定書
・国連「障がい者の権利に関する条約」の選択議定書


ILO第111号条約は、雇用と職業におけるあらゆる差別を禁止する条約です。第155号条約は、労働者の安全と健康を守るために具体的な対策を講じることを企業に求めています。この2条約はILOの中核的条約です。
そのほか以下のことを国に勧告しています。
▽人権デューデリジェンス(人権侵害を防止するための調査と対策)を義務付ける法律を制定する。
▽独立した強力な国内人権機関を遅滞なく確立すること。司法救済および裁判外救済へのアクセスを改善する。
▽同一価値労働同一賃金の原則を実施するための取り組みを強化し、男女間賃金格差を是正する。民間部門における女性代表の割り当て(クオータ制)の採用を含め、指導的地位に占める女性の比率を高める。
▽既存の差別禁止法を明確かつ包括的な差別の定義を盛り込む内容に改正することを含め、差別を公式に禁止し、制裁を科す。
▽技能実習生制度を改正する際は、国際的な人権基準に基づいて明確な人権保護を盛り込む。
▽労働監督を強化し、強制労働および人身売買の被害者の確認を強める。
▽在留資格にかかわらず、差別のない雇用機会への平等なアクセスと適正な賃金、安全な労働条件を保障することを含め、すべての労働者に労働法が適用されることへの認識を高める。

企業へ勧告
企業に対する勧告には以下のものがあります。
▽国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいた苦情処理システムの確立。効果的な苦情処理システムとするため、すべての基準をジェンダーに配慮した方法で解釈する。
▽損害をあたえた被害者・共同体を効果的に救済する。
▽企業の意思決定機関に女性の代表を増やす。
▽就活生に対し、差別につながるような質問を撤廃する。あらゆる形態の差別、搾取、ハラスメント、権力乱用、その他の暴力を職場から撤廃する。
▽労働者の結社の自由と団結権、団体交渉権を促進する。
日本政府と経済界には、勧告内容の速やかな実施が求められています。
国連「ビジネスと人権」作業部会は、日本の人権状況について引き続き情報提供を求めています。人権後進国の日本の状況を国際社会に告発しながら、国際基準にもとついて、誰もが自分らしく生きることのできる社会を実現したいと思います。
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年6月22日付掲載


国に対する勧告ではまず、▽リスクに直面するグループに対する不平等と差別の構造の緊急かつ全面的な解体▽国際労働機関(ILO)「雇用と職業における差別禁止条約」(第111号)、同「職業上の安全と健康に関する条約」(第155号)など4条約、6議定書の批准(表)―を求めています。
企業に対する勧告には以下のものがあります。
▽国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいた苦情処理システムの確立。効果的な苦情処理システムとするため、すべての基準をジェンダーに配慮した方法で解釈する。
▽企業の意思決定機関に女性の代表を増やす。etc…
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ビジネスと人権 国連「訪日報告書」を読む(中) リスクに直面する人々

2024-06-24 07:13:27 | 政治・社会問題について
ビジネスと人権 国連「訪日報告書」を読む(中) リスクに直面する人々


労働者教育協会 筒井晴彦理事

国連「ビジネスと人権」作業部会の報告書は、差別などのリスクに直面しているグループとして、女性、LGBTQI+の人びと、障がい者、先住民(アイヌ民族)、マイノリティー、子ども、高齢者などをとりあげます。


2024年ジェンダーギャップ指数ランキング
順位(23年)国名指数
1(1)アイスランド0.935
2(3)フィンランド0.875
3(2)ノルウエー0.875
4(4)ニュージーランド0.835
5(5)スウエーデン0.816
6(7)二力ラグア0.811
7(6)ドイツ0.81
8(8)ナミビア0.805
9(11)アイルランド0.802
10(18)スペイン0.797
14(15)英国0.789
22(40)フランス0.781
36(30)カナダ0.761
43(43)米国0.747
87(79)イタリア0.703
94(105)韓国0.696
106(107)中国0.684
118(125)日本0.663
129(127)インド0.641
(0が完全不平等、1が完全平等)


深刻な差別
女性…世界経済フォーラムの2023年のジェンダーギャップ指数で146カ国中125位だったことや、日本政府の統計で女性労働者の68・2%が非正規雇用で働いていること、賃金もフルタイム同士の比較で男性の75・7%、非正規同士の比較で80・4%にとどまることを紹介。「女性の職業はしばしば補助的労働や臨時的雇用、パート労働に限定されている。その結果、キャリア昇進の機会が制限され、低賃金となっている」と強調しています。
大企業の男女賃金格差の公表を「積極的な第一歩」と評価する一方、女性の昇進差別やセクハラについて憂慮すべき事例が報告されているとし「指導的地位と意思決定機関においてジェンダー多様性の促進が必要」だとしています。
LGBTQI+の人びと…昨年成立したLGBT理解増進法について「LGBTQI+の個人への差別を禁止する条項が存在せず、差別の明確な規定が存在しない」と厳しく指摘しています。
障がい者…職場における差別と低賃金、見せかけだけ企業が雇用義務を果たす雇用代行事業の横行など「偽装雇用」に懸念を表明しています。障がい者の雇用促進には、法定雇用率の基準拡大が不可欠だと主張しています。
マイノリティー・先住民…アイヌ民族が職場で依然として差別に直面していること、在日コリアンや在日中国人の労働者に対し、雇用主がヘイトスピーチを含めた差別を繰り返していることに懸念を表明しています。
高齢者…差別的雇用慣行が存在すること、65歳以上の高齢者の70%が非正規で働いていること、60歳から65歳までの高齢者の賃金が同じ仕事をしている場合でも引き下げられていること、他のOECD(経済協力開発機構)諸国と異なり年齢差別禁止法が存在しないこと、雇用主が定年制を設け高齢者に劣悪な仕事を押し付けていることーなどを報告。「高齢者の労働権のための政策」を求めています。
アニメ制作者…報告書は、アニメ制作者が長時間労働を強いられているにもかかわらず初任給が年間150万円しかなく、制作者の30・8%がフリーランスまたは個人事業者で労働法の保護を受けていないとし、「アニメ業界は、これらの問題に取り組み、制作者に人間らしい労働を拡大することが絶対に欠かせない」と訴えています。

長時間労働
報告書は、企業による労働組合の日常活動への妨害や組合組織化を理由とした職場への立ち入り拒否などの事例があるとし、「公正で法律を順守する職場慣行を促進するうえで、労働組合は必須の役割を担っている。作業部会は、労働組合の重要性を繰り返し強調する」と主張しています。
長時間労働に関わって、職業に起因する病気、とりわけ精神疾患に対する損害賠償件数が増えていることに懸念を表明。残業時間の上限規制に例外が設けられていること、医師の場合は年1860時間もの残業が可能となっていることにも強い懸念を示しています。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年6月21日付掲載


女性…世界経済フォーラムの2023年のジェンダーギャップ指数で146カ国中125位だったことや、日本政府の統計で女性労働者の68・2%が非正規雇用で働いていること、賃金もフルタイム同士の比較で男性の75・7%、非正規同士の比較で80・4%にとどまることを紹介。「女性の職業はしばしば補助的労働や臨時的雇用、パート労働に限定されている。その結果、キャリア昇進の機会が制限され、低賃金となっている」と強調。
障がい者…職場における差別と低賃金、見せかけだけ企業が雇用義務を果たす雇用代行事業の横行など「偽装雇用」に懸念を表明。
アニメ制作者…報告書は、アニメ制作者が長時間労働を強いられているにもかかわらず初任給が年間150万円しかなく、制作者の30・8%がフリーランスまたは個人事業者で労働法の保護を受けていないとし、「アニメ業界は、これらの問題に取り組み、制作者に人間らしい労働を拡大することが絶対に欠かせない」と。
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ビジネスと人権 国連「訪日報告書」を読む(上) 人権機関の不在に懸念

2024-06-23 07:13:47 | 政治・社会問題について
ビジネスと人権 国連「訪日報告書」を読む(上) 人権機関の不在に懸念

昨年夏、日本において企業活動が人権に与えている影響を12日間にわたって訪日調査した国連「ビジネスと人権」作業部会の報告書が、6月18日から始まった国連人権理事会(~7月12日)に提出されました。報告書の内容について労働者教育協会の筒井晴彦理事に寄稿してもらいました。

労働者教育協会 筒井晴彦理事

報告書の分析は多岐にわたります。報告書はまず、差別などのリスクに直面している人びととして、女性、LGBTQI+の人びと、障がい者、マイノリティーグループと先住民(アイヌ民族)、子ども、高齢者を挙げ、それぞれの人権状況を分析しています。
さらに、①健康・気候変動・自然環境(福島第1原発事故、PFAS=有機フッ素化合物)②労働権(労働組合、長時間労働、移住労働者と技能訓練制度)③メディアとエンターテインメント産業④バリューチェーン(原材料調達から販売までの事業活動)と金融の規制―という4テーマについても詳しく分析しています。
本連載ではこれらのうち、職場における人権問題を軸に報告書の内容を整理し、紹介します。

「LGBTQI+」:レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クエスチョニング、インターセックスほか多様な性のあり方を表す言葉。



訪日調査の結果について日本記者クラブで会見する国連「ビジネスと人権」作業部会の専門家=2023年8月4日

国家の義務
報告書は、人権を保護する国の義務に関わり「日本国内において『国連ビジネスと人権に関する指導原則』への認識不足が全般的に、とりわけ東京以外の地方で見られることを注視する。指導原則が定める権利と義務、責任を関係者が全面的に理解するには、相当の努力が求められる」と指摘しています。
指導原則は、①人権を保護する国の義務②人権を尊重する企業の責任③被害者救済へのアクセス拡大―という3本柱(一般原則)で構成され、さらに柱ごとに「やるべき」原則を定めています。合計31のやるべき原則のうち14原則が企業の責任に関わるものです。
作業部会は、日本の関係者が指導原則を全面的に理解するために、日本政府に相当の努力を払うよう求めているのです。

企業の責任
報告書は企業の責任に関わって「企業の99・7%を占める中小企業において指導原則への理解が低い。指導原則を理解・実行する点で、企業間に大きな格差が存在する」と指摘します。また「もっと積極的に指導原則の義務を遂行する必要が国にはある。もっと実践的な指導を経済産業省と厚生労働省、外務省、法務省に求める」とのビジネス界の主張を紹介しています。
報告書は、司法の利用と効果的な救済に関し、「指導原則と広範な人権についての裁判官の低い認識が重大な問題の一つとなっている。作業部会は、日本において(政府から独立した)国内人権機関が存在しないことを強く懸念している。経済協力開発機構(OECD)38カ国のなかで、国内人権機関が存在しないのは日本を含め8カ国のみである。法務省の人権局は、国内人権機関の機能を果たしていない」と厳しく指摘しています。
国内人権機関はすでに世界120カ国に存在しています。国連はこれまでも、世界であたり前になっている国内人権機関の確立を繰り返し日本政府に勧告しています。
(つづく)(3回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年6月20日付掲載


作業部会は、日本の関係者が指導原則を全面的に理解するために、日本政府に相当の努力を払うよう求めている。
作業部会は、日本において(政府から独立した)国内人権機関が存在しないことを強く懸念している。経済協力開発機構(OECD)38カ国のなかで、国内人権機関が存在しないのは日本を含め8カ国のみ。
国連はこれまでも、世界であたり前になっている国内人権機関の確立を繰り返し日本政府に勧告。
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