きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

ドキュメンタリー映画『パンケーキを毒見する』 監督:内山雄人さん 「菅政治」が陥っているばかばかしさを笑う

2021-07-18 06:29:43 | 映画について
ドキュメンタリー映画『パンケーキを毒見する』 監督:内山雄人さん 「菅政治」が陥っているばかばかしさを笑う

時の首相を俎上(そじょう)に載せた、日本では前代未聞のドキュメンタリー映画です。菅義偉首相の大好物を皮肉った「パンケーキを毒見する」。ブラックユーモアで風刺しつつ、笑えない現実に警鐘を鳴らします。権力監視のメディアとして「赤旗」日曜版も登場。30日の公開を前に、内山雄人監督に話を聞きました。板倉三枝記者


撮影・後藤淳
うちやま・たけと=1966年生まれ。90年、テレビマンンユニオンに参加。93年、「世界ふしぎ発見!」でディレクターデビュー。「歴史ドラマ・時空警察」など


映画「新聞記者」など、話題作を手がけてきた河村光庸(かわむら・みつのぶ)プロデューサーから、テレビマンユニオン所属の内山ディレクターに話があったのは、昨年11月半ばのことでした。
テーマは菅首相で、コンセプトは「スカスカ政権を明らかにする」。既に「パンケーキを毒見する」というタイトル名と、五輪真っただ中という公開時期が決まっていました。
「河村さんいわく、衆院選前にぶつけて影響を与えたい、と。しかもハコ(劇場)も決まっていて…。日本でも有数の大劇場である新宿ピカデリーでやるよ、と聞いた時は冗談だろ、と思いました。こういう政治ドキュメンタリーはドカンとやるんだ、という河村さんの“賭け”ですね」
自分に話が来るまで6、7人の映画監督が断ったことを後で知ります。
「制作期間がわずか半年なので当然かな、と思います。僕はテレビの人間だから短期集中には慣れていた」
現政権を扱うことへのためらいは―。
「畏れや不安はありました。ただ時の総理を扱う機会は、僕ら制作会社の人間にはまずない。今を逃すと、もうチャンスはない。それ以上に前政権から“おかしな事”が続き、そんな政治不信に何かできないかと忸怩(じくじ)たる思いでしたから…覚悟を決めました」



【30日公開】
映画「パンケーキを毒見する」は、30日から東京・新宿ピカデリーほか全国ロードショー。©2021『パンケーキを毒見する』製作委員会

取材の初っぱなから相次いで取材拒否
年明け、取材開始。しかし、初っぱなから相次ぐ取材拒否に遭います。
菅グループの中核をなす「ガネーシャの会」所属の若手議員から、市議や県議、マスコミ、評論家、ホテルにスイーツ店に至るまで…。「途中から逆に面白くなって、ネタにしてやれ、と」
突破口を開いたのは法政大学の上西充子教授よる「国会パブリックビューイング」でした。上西教授は、日本学術会議会員の任命拒否をめぐる国会討論を素材に解説。共産党の小池晃書記局長(参院議員)と菅首相のやりとりをノーカットで見せます。「菅首相の答弁、行動がとにかく笑えます。完全にコントなんです!」と内山さん。
上西教授は「(国民を)うんざりさせるのが、ある種の手法かな、と。政府にとっては、政治に関心を失ってくれた方が自分たちは安泰ですからね」と解説。自民党の石破茂氏も「35年この世界にいて初めて見る言論空間。議論がかみ合っていない」と話します。
自民党の村上誠一郎氏や立憲民主党の江田憲司氏、ジャーナリストの森功氏や元朝日新聞記者の鮫島浩氏も登場。経済産業省出身の古賀茂明氏や元文部科学事務次官の前川喜平氏らは、自身が受けた政権からの圧力を生々しく語ります。

ちょっとこわごわ 赤旗編集局を訪ねた
では権力を監視するのは誰なのか。内山さんが注目したのは、「スクープ連発で知られる共産党の機関紙『赤旗』」でした。内山さんは日曜版編集部などを取材。大手メディアが見過ごした「桜を見る会」や官房機密費のスクープは、なぜ生まれたか。104分の上映時間のうち15分を「赤旗」に割きました。
「『赤旗』はこれだけスクープを出してるのに、一部の新聞を除いて、どこもちゃんとやっていない。テレビでは、まず『赤旗』取材は考えられない。それなら撮りに行こうと」
内山さんが、共産党本部や「赤旗」を訪ねたのは初めてでした。
「正直、ちょっとこわごわでした。説教を聞かなきゃいけないのかな、とか。勝手なイメージですけどね」
そのイメージは?
「変わりましたね。実際取材してみると、若い人も多く、すごく実直で気持ちのいい人たちでした。ネットやSNSで公にされたオープンソースでやっていることにも好感を持ちました。ニュースの価値判断を間違っている大手新聞社が崩れていくのは、当然の流れなのでは、と」
映画は、古舘寛治さんのナレーションで、日本の現状を風刺した「べんぴねこ」のアニメーションを挟み込みながら展開します。
「中学生にも見てもらえるように、日本が陥っているばかばかしさを笑いの中で表現したかった。選挙に行ったら何か変わるかもしれない、と思ってもらえたらうれしいです」

「しんぶん赤旗」日曜版 2021年7月18日付掲載



映画『i-新聞記者ドキュメント』は圧巻でしたね。
東京新聞記者望月衣塑子さんと菅義偉官房長官との対決が見もの。
今度は首相になった菅義偉さんが登場。国会で自分の言葉で答弁できない。情けない現実。
政治に関心を持ち、投票に行くことで何かが変わる。
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映画「フィールズ・グッド・マン」 ネット空間でヘイトが加速 実在ユーザーの証言に衝撃

2021-03-07 04:59:52 | 映画について
映画「フィールズ・グッド・マン」 ネット空間でヘイトが加速 実在ユーザーの証言に衝撃
SNSの闇を描いたドキュメンタリー映画「フィールズ・グッド・マン」が、12日から公開されます。フォトジャーナリストの安田菜津紀さんに、寄稿してもらいました。

フォトジャーナリスト 安田菜津紀

変わり者で、とろんと眠たげな目を向け、けれども友人たちから愛されるカエルのぺぺは、若者たちのリアルな日常を描いた漫画「ポーイズ・クラブ」のキャラクターだった。「だった」と安易に過去形にするのは、不適切かもしれない。ぺぺは紛れもなく、作者のマット・フユーリー氏が生み出したのだ。ところが、そんな「オリジナル」を覆うほどの過激な現象が、マットとぺぺに降りかかっていた。




予兆はあった。ネット空間でペペは、ぺぺが放ったせりふ「feels good man(気持ちいいぜ)」と共に、徐々に改変された姿で表れはじめていた。漫画のキャラクターを、不特定のユーザーが自身で描き直しアップする行為は、「よくあること」と見過ごされがちだ。ところがぺぺはやがて、匿名掲示板「4chan」で人種差別のイメージと共に拡散されていく。熱狂的な「トランプ現象」とも結びつき、気づけば作者の意図とかけ離れた独り歩きは、もはや歯止めのきかないところまで加速してしまっていた。
とりわけゾッとしたのは、ぺぺをヘイトのシンポルにまで祭り上げていった人々の証言だった。一見すると“普通”の人々が、ネットで攻撃的な言葉を書き込み続け、矛先を向けたターゲットに“粘着”していく過程が、実在のユーザーの言葉と共に徐々に浮き彫りになっていく。
「原作なんて関係ない」といわんばかりに、自身がヘイト拡散の「加担者」であることを正当化する若者さえいた。「単なるネットの書き込み」と高をくくってはいられない。言葉の暴力は歯止めをかけなければ、身体的暴力に豹変(ひょうへん)する。
こうして映画は、SNSの構造的な問題をとらえながら、自己承認欲求を満たすためにネットストーキング(インターネット上のストーカー行為)を繰り返す心理にも迫り、あふれ続ける「過激な言葉」の濁流の水底に何が堆積しているのかをあぶり出していく。
ともすると人は、わかりやすい「シンボル」や「アイコン」を求めがちだ。だからこそマットとぺぺが、のみ込まれていったフェイクやヘイトの渦は、遠い国の問題とは思えなかった。






日本でもヘイトや誹謗(ひぼう)中傷は、掲示板やSNSで日々繰り返されている。追い詰められたマットはある時、自身の作品中でぺぺを葬ったことがあったが、漫画のキャラクターだけではなく、言葉の刃によって命を絶つまでに人が追い詰められることさえある。法改正やプラットフォーム側の運用のあり方が問われるのはもちろん、スマホのボタンひとつで加害者になってしまわないために、立ち止まり、再考できるかが、私たち一人ひとりにも求められている。

「しんぶん赤旗」日曜版 2021年3月7日付掲載


何の悪意もなくネットに公開した画像や動画が、その作者の意図を超えて変質されて拡散、ひいてはヘイトに使われてしまうってこと。
SNS社会の脅威を描き出します。
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映画「おもいで写眞」 コロナ禍だけどアイデア出し「年取ると楽しいよ」の日本を

2021-01-25 08:00:48 | 映画について
映画「おもいで写眞」 コロナ禍だけどアイデア出し「年取ると楽しいよ」の日本を
東京で夢破れた若い女性―故郷でお年寄りと触れ合い 生きがい取り戻す
監督 熊澤尚人さん

人生を重ねる豊かさを若者の成長と重ねて温かく描いた映画「おもいで写眞」が公開されます。東京での夢に破れた若い女性が、故郷のお年寄りと触れ合う中で生きがいを取り戻す物語です。オリジナル脚本を9年間練り上げてきた熊澤尚人監督に話を聞きました。
萩原真里記者


撮影・山城屋龍一記者

主人公は、メークアップアーティストをあきらめ、祖母の死を機に富山に帰った結子(深川麻衣)です。写真館を営む祖母に育てられた結子は、町役場で働く幼なじみの一郎(高良健吾)に頼まれ、団地のお年寄りの遺影撮影を始めます。しかし、「縁起でもない」と敬遠され…。
熊澤監督は、ふと目にした新聞記事から着想しました。「高齢者の遺影を撮るカメラマンが、撮影を嫌がられて困っているという記事でした。ご自身が輝いていた場所でなら撮らせてくれるんじゃないかなと思ったんです」
地方の高齢者に焦点をあてた映画を作りたいという思いは、2005年のオリジナル脚本作「ニライカナイからの手紙」を制作したころから温めてきたといいます。
「撮影をした竹富島の公民館で『ニライカナイ~』の完成披露上映会をしたんです。撮影中は家から出てこなかった車いすのおじいちゃんや酸素を吸入するおばあちゃんなどが、みんな見に来てくれました。最後に出口でお礼を言おうと立っていたら、逆に『ありがとう』って手を握られて。僕の原点です」



映画「おもいで写眞」は29日から全国で公開。110分

今作のもうひとつの柱は、うそを許せない結子が、そんな自分と向き合う成長物語です。
「実は、僕は父とは子どものころから会っていません。この年になってもいまだに複雑な思いがあります。そんな自分をどうやって受け入れていくか。親子関係の複雑さという普遍的なテーマが僕の大きなテーマでもあります」
独り暮らしのお年寄りが多い団地で、孤独死を減らそうと活動する一郎と結子。映画では高齢化が進む地方の現実がリアルに描かれます。
「9年前に脚本を書き始めた時よりも、いまはさらに高齢化が進んでいますよね。そしてコロナ禍で、さらに家から出なくなったお年寄りが、うつになってしまったり、歩けなくなってしまったり。
みんなでアイデアを出し合って、『年を取ると楽しいよ』という日本になるといいですよね」
コロナ禍で“物語の大切さ”を実感したといいます。
「映画も物語ですが、うそでもフィクションでも、その話を聞いただけで潤ったり、頑張ってみようと思えたりしますよね。特にいまは、物語は人間にとってものすごくプラスになる。高齢になっても“自分はこういうふうになりたい”と挑戦することがすごく大切だと感じています」

「しんぶん赤旗」日曜版 2021年1月24日付掲載


「遺影写真」というとマイナスイメージがありますが…。その人の人生と重ね合わせて撮る、撮られることでこれから目的を持って生きる。
そんなプラスイメージで見るってことですね。
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声上げた“おかか”たち 女性のたたかい現代に 映画「大コメ騒動」 本木克英監督

2021-01-09 07:26:43 | 映画について
声上げた“おかか”たち 女性のたたかい現代に
映画「大コメ騒動」 本木克英監督

もとき・かつひで 映画監督。1963年生まれ。松竹に入社し98年、「てなもんや商社」で監督デビュー。監督作「超高速!参勤交代」(ブルーリボン作品賞)、「空飛ぶタイヤ」(日本アカデミー優秀監督賞)、「釣りバカ日誌」11~13、「居眠り磐音」ほか


「米を旅にだすなー」―富山の浜のおかか(女房)たちの叫びが胸を貫きます。102年前、女性たちが声をあげた米騒動。富山出身の本木克英監督にとって、「いつかは」と念じていた題材を痛快にエンターテインメントとして描きました。その「大コメ騒動」が、1日からの富山県先行公開に続き、8日から全国で公開されます。本木監督に聞きました。(児玉由紀恵)

1918年、富山の漁師町。松浦いと(井上真央)は、夫(三浦貴大)を出稼ぎに送り出し、3人の子を抱えて日銭を稼ぎます。60キロの米俵を背負い、蔵から浜の船まで運んで日当は20銭。ところが、米の値段は一升が20銭以上で、さらにどんどん値上がりし、シベリア出兵の報とともに、次第に手の届かないものに―。困窮する、いととおかかたちは、米の積み出しを止めようと立ち上がりますが…。
映画は、実際の事件を基にオリジナルの物語で運ばれます。



8日から東京・TOHOシネマズ日比谷ほか全国で公開©2021「大コメ騒動」製作委員会

先人への敬意
「明治以降、日本の近代化の過程で、ばんどり騒動(ばんどり=蓑をまとった一揆)など嘆願運動が繰り返されてきました。新聞の普及で全国に知られるようになったのが、1918年7月の米騒動でした。全国では、一部暴徒化したり、打ち壊しをしたりした例もありましたが、この富山の場合は、それとは異なります。細民(さいみん)と言われた女性たちが、生活のため必死の思いで米俵にしがみついて積み出しを止めようとした、それが『暴動』などの刺激的な伝えられ方をして、当事者たちは長らく口を閉じていたのです」
「真摯に面白く、僕なりの表現方法、娯楽映画の形で」という本作。「口をつぐんでしまったばあちゃんたちの気持ちを富山弁で」と先人への敬意がこもります。
おかかたちを引っ張っていく「清んさのおばば」(室井滋)は、その名を聞けば子どもも泣き出す異様な風体ですが、ここぞというとき叫びます。「負けんまい!」と。おかかたちは結束して「米安う売れー」と訴えたり、米屋の女将の分断策に乗せられたり。警察と権力者らとの陰での結託もあり、ドラマティックな展開で引き込みます。
本が好きな、いとの読む新聞でおかかたちは世の中の動きを知ります。
その新聞の誇張や虚偽の報道ぶりは、現代の報道をも照射するかのようです。
「これを作っているときに、トランプ大統領のフェイクニュースが話題になっていました。また、香港の民主化運動が激しさをまし、がんばる女性や若者たちのニュースも届いていた時期で、そんなこととリンクするイメージがありましたね。米騒動後、ジャーナリズムが弾圧され、やがて戦争へ。そんな歴史も考えてもらえるきっかけになれば―」
腰に重心をかけ歯をくいしばって重い米俵を運び、始終日焼け顔のおかかたち。ある時は、警察の前での座り込みも辞さない度胸です。
「おかかたちの気持ちを伝えるにはどうしたらいいか、女優さん一人ひとりに聞きました。みんな本格的に当時のおかかになろうと、本当らしさを大切にしたい、と。どこまで作り込むか、僕からこう演じてと演出の押し付けはやらなかった。俳優から率先して意見を寄せてもらえる環境を作ったことが監督としては良かったかな、と。映画は虚構ですが、その中で伝える真実が間違っていなければいいと思います」

使命感持って
今作は、松竹を退社しフリーになって3年目に実った映画化。大手の配給会社にすべて断られ、懸命に資金繰りをし16日間で撮影を終えました。20年来の技量のたまものでしょう。
「監督になってから、ある種の使命感を持って思い続けた企画です。同県人でもある岩波ホール総支配人だった高野悦子さんに勧められたのが20年前でした。いま、格差は広がり、女性の困窮化は深まっています。この映画を機に、おかかたちが声をあげた米騒動に関心を持っていただけるとうれしいですね」

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年1月6日付掲載


「超高速!参勤交代」(ブルーリボン作品賞)、「空飛ぶタイヤ」(日本アカデミー優秀監督賞)など、話題の作品を送り出して来た本木克英監督。
今回はシベリア出兵を控えた大正時代、富山県から起こった米騒動を取り上げます。
女性が中心になって起こした市民運動の原点。おかかたちを引っ張っていく「清んさのおばば(その名を聞けば子どもも泣き出す異様な風体)」(室井滋)の配役も面白い。
兵庫県では、TOHOシネマズ西宮OSで上映中です。
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ユダヤ人の親子描く2つの映画 幼い心 耕すおとなの真実の言葉

2020-11-24 07:57:47 | 映画について
ユダヤ人の親子描く2つの映画 幼い心 耕すおとなの真実の言葉
「ヒトラーに盗られたうさぎ」
「アーニャは、きっと来る」

=柴田 三吉=

かつて、人間は世界に投げ込まれた存在である、と言った哲学者がいる。
この言葉は多くの子どもたちが置かれた状況を思うとき、強い痛みを覚えずにいられない。戦火や災害、飢餓、自由を奪われた社会の下に生まれた彼らには、そこが世界の始まりであり、すべてと見えるからだ。
苦境の中にあっても子どもは喜びを模索するものだが、そのとき彼らを支えるのは、おとなたちの生きる姿勢と愛だろう。心も世界ももっと広く、豊かなのだと伝えることによって。
そうした思いを深くさせる作品が2編公開される。



ドイツ映画 27日から東京・シネスイッチ銀座ほか順次全国で公開
©2019,Sommerhaus Filmproduktion GmbH,La Siala Entertainment GmbH,NextFilm Filproduktion GmbH&Co.KG,Warner Bros.Entertainment GmbH



イギリス・ベルギー合作 27日から東京・新宿ピカデリーほか全国で公開
©Goldfinch Family Films Limited 2019


少女の成長物語 見る者に勇気が
「ヒトラーに盗られたうさぎ」と「アーニャは、きっと来る」で、前者の原作はジュディス・カー、後者はマイケル・モーパーゴ。ともに長く読まれてきた児童文学の名作だ。
「ヒトラーに盗られたうさぎ」は1933年、ナチの政権が成立する前夜から始まる。9歳の少女アンナ(リーヴァ・クリマロフスキ)は、兄とともに愛情豊かなユダヤ人家庭に育つ。だが演劇評論家の父はナチを厳しく批判していて、彼らが選挙で勝てばすぐにも迫害の手が伸びる。
ドイツ脱出を決意した家族はいったんスイスに逃れるものの、父の仕事の事情で再度パリへ移らねばならなくなる。そのつどアンナは言葉や習慣の違い、経済的な困窮による苦難を強いられるが、持ち前の聡明さを発揮して亡命生活に耐えていく。両親の毅然とした態度が彼女を力づけ、明日への希望を失わせない。
さらにイギリスへと移住するまでの3年間を、カロリーヌ・リンク監督は少女の伸びやかな成長物語として描き、見る者に勇気を与える。

困難に屈しない姿が重ねられる
「アーニャは、きっと来る」は、第2次大戦下の南フランス、のどかな山村が舞台で、純朴な羊飼いジョー(ノア・シュナップ)が主人公だ。こちらもベン・クックソン監督が少年の成長を痛みとともに描き、深い感銘を残す。
ある日、羊の番をしていたジョーは、ナチの迫害から逃れてきたユダヤ人ベンジャミンと出会う。列車で収容所へ送られる寸前に逃亡した彼は、その際、幼い娘アーニャを手放してしまい、妻の実家に隠れて再会を待つ身だ。
ベンジャミンはそこで義母とともに、孤児となった子どもたちをスペインへ逃がす活動をしている。秘密を知ったジョーは2人を手伝い始めるが、ドイツ軍が村を占拠して計画は行き詰まる。だが祖父と両親、軍に反感を持つ村人たちが協力し、国境越えの大がかりな方法を考え出す。そのとき娘を待つベンジャミンの取った行動が胸を打つ。
2作はともに史実を背景にしていて、そこに子どもに寄り添い、困難に屈しないおとなたちの姿が重ねられる。彼らが語る真実の言葉は幼い心を耕し、たとえ世界に投げ込まれた存在であっても人は生の奥深さ、命の尊さを知ることができるのだと教える。
コロナ禍をはじめ、さまざまな災厄で世界が狭められている今、私たちの社会も、そうした豊かな関わりが必要なのだと気づかされる作品だ。
(しばた・さんきち 詩人)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年11月23日付掲載


「ヒトラーに盗られたうさぎ」は少女の、「アーニャは、きっと来る」は少年の成長の物語。
ヒトラーの弾圧のもとでも、希望を失わず生きていこうとする。
「ヒトラーに盗られたうさぎ」は、シネ・リーブル神戸で12月11日から。
「アーニャは、きっと来る」は、神戸国際松竹で11月27日から公開。
お楽しみです。
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