変貌する経済 財界の策動⑩ 「靖国参拝」で深刻な矛盾
安倍晋三首相は現内閣発足から1年が経過した2013年12月26日、靖国神社を参拝しました。中国、韓国政府が抗議したのをはじめ、米政府も批判。参拝から数時間後に在日米国大使館は、「日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動をとったことに、米国政府は失望している」と厳しい表現で異例の声明を発表しました。
「悪影響及ぼす」
靖国神社は、日本軍国主義による侵略戦争を「自存自衛の正義のたたかい」「アジア解放の戦争」と美化し、宣伝することを存在意義とする特殊な施設です。
第2次世界大戦後の国際秩序は、日独伊の3国が行った侵略戦争は不正不義のものとすることを共通の土台としています。安倍首相の靖国参拝は、第2次世界大戦後の国際秩序に対する正面からの挑戦です。
年が明けた財界・業界団体の新年会の会場。首相の靖国参拝についてトヨタ自動車の豊田章一郎名誉会長は「突然でびっくりした」と率直に語っていました。財界3団体(経団連、経済同友会、日本商工会議所)の1月7日の共同会見では、日商の三村明夫会頭が「長期的に見れば、政治の関係が悪いということは、われわれの関係にも悪影響を及ぼす」とコメントしました。
しかし財界からは、靖国参拝について表立った直接的な批判の声は上がっていません。それは、「首相の靖国参拝を批判すれば、財界が右翼からの攻撃にさらされる」(財界事務局幹部)ことを恐れてのことです。
4月3日午後7時。官邸から程近い紀尾井町の日本料理店「福田家」で財界人との会食会が開かれました。出席者は経団連の今井敬、奥田碩(ひろし)、御手洗冨士夫各名誉会長らでした。
1時間半以上にわたる会食の席上、財界側から安倍首相に対し、「(外交問題で)こちらからいいたいことは言った」といいます。
はたして財界側の「言いたいこと」とは、なんだったのでしょうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/5a/f5aed4d9dc13e3e3675bae026edb240b.jpg)
靖国神社を参拝した安倍首相が乗り込んだ公用車と見送る人たち=2013年12月26日、東京都内
対米従属のもと
謎解きのカギとなる提言があります。2003年1月に発表された「活力と魅力溢(あふ)れる日本をめざして」です。
東アジア自由経済圏構想を打ち出した提言は、「日本が東アジアにおいて本格的なリーダーシップを発揮すること」が必要だと強調しています。その上で次のように指摘します。
「日本は、第2次世界大戦において大東亜共栄圏の建設を掲げて戦い、東アジアの国々に多大な損害を与えた。そのことへの深い反省と、東アジアがアメリカの安全保障の傘のもとにあるという実態」があり、「(東アジア自由経済圏)構想の実現に日本が建設的な貢献をしていくことは、過去の不幸な歴史を乗り越えていく大きなチャンスでもある」。
日米軍事同盟を外交の基盤に据える財界は、過去の戦争に対する「深い反省」の下に「過去の不幸な歴史を乗り越え」なければ、東アジア自由経済圏は構築できない、という認識を持っているのです。
安倍政権による歴史逆行・復古的な政治姿勢は、一部大手メディアからの後押しもあり、「時流」を形成しているかのように見えます。しかし、この姿勢こそ、同政権のアキレス腱であり、対米従属のもとでアジア地域での経済支配構造を確立したいという財界の思惑とも深刻な対立が、そこにはあります。
そのことを日本共産党第26回大会は次のように指摘しています。
「安倍自公政権は、衆参両院で多数を握っているが、政治的には決して盤石ではない。この内閣の基盤はきわめてもろく、深刻な矛盾をはらんでいる」
(この項おわり)(金子豊弘が担当しました)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年6月26日付掲載
東アジアで商売をやっていこうとする財界は、過去の戦争の反省の上にたたないと、うまくいかないと考えている。
財界の「東アジア自由経済圏」、共産党の「北東アジア平和協力構想」。中身は全然違いますが、過去の戦争を反省するという点では一致。
安倍さんの進める方向の異常さが際立っています。
安倍晋三首相は現内閣発足から1年が経過した2013年12月26日、靖国神社を参拝しました。中国、韓国政府が抗議したのをはじめ、米政府も批判。参拝から数時間後に在日米国大使館は、「日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動をとったことに、米国政府は失望している」と厳しい表現で異例の声明を発表しました。
「悪影響及ぼす」
靖国神社は、日本軍国主義による侵略戦争を「自存自衛の正義のたたかい」「アジア解放の戦争」と美化し、宣伝することを存在意義とする特殊な施設です。
第2次世界大戦後の国際秩序は、日独伊の3国が行った侵略戦争は不正不義のものとすることを共通の土台としています。安倍首相の靖国参拝は、第2次世界大戦後の国際秩序に対する正面からの挑戦です。
年が明けた財界・業界団体の新年会の会場。首相の靖国参拝についてトヨタ自動車の豊田章一郎名誉会長は「突然でびっくりした」と率直に語っていました。財界3団体(経団連、経済同友会、日本商工会議所)の1月7日の共同会見では、日商の三村明夫会頭が「長期的に見れば、政治の関係が悪いということは、われわれの関係にも悪影響を及ぼす」とコメントしました。
しかし財界からは、靖国参拝について表立った直接的な批判の声は上がっていません。それは、「首相の靖国参拝を批判すれば、財界が右翼からの攻撃にさらされる」(財界事務局幹部)ことを恐れてのことです。
4月3日午後7時。官邸から程近い紀尾井町の日本料理店「福田家」で財界人との会食会が開かれました。出席者は経団連の今井敬、奥田碩(ひろし)、御手洗冨士夫各名誉会長らでした。
1時間半以上にわたる会食の席上、財界側から安倍首相に対し、「(外交問題で)こちらからいいたいことは言った」といいます。
はたして財界側の「言いたいこと」とは、なんだったのでしょうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/5a/f5aed4d9dc13e3e3675bae026edb240b.jpg)
靖国神社を参拝した安倍首相が乗り込んだ公用車と見送る人たち=2013年12月26日、東京都内
対米従属のもと
謎解きのカギとなる提言があります。2003年1月に発表された「活力と魅力溢(あふ)れる日本をめざして」です。
東アジア自由経済圏構想を打ち出した提言は、「日本が東アジアにおいて本格的なリーダーシップを発揮すること」が必要だと強調しています。その上で次のように指摘します。
「日本は、第2次世界大戦において大東亜共栄圏の建設を掲げて戦い、東アジアの国々に多大な損害を与えた。そのことへの深い反省と、東アジアがアメリカの安全保障の傘のもとにあるという実態」があり、「(東アジア自由経済圏)構想の実現に日本が建設的な貢献をしていくことは、過去の不幸な歴史を乗り越えていく大きなチャンスでもある」。
日米軍事同盟を外交の基盤に据える財界は、過去の戦争に対する「深い反省」の下に「過去の不幸な歴史を乗り越え」なければ、東アジア自由経済圏は構築できない、という認識を持っているのです。
安倍政権による歴史逆行・復古的な政治姿勢は、一部大手メディアからの後押しもあり、「時流」を形成しているかのように見えます。しかし、この姿勢こそ、同政権のアキレス腱であり、対米従属のもとでアジア地域での経済支配構造を確立したいという財界の思惑とも深刻な対立が、そこにはあります。
そのことを日本共産党第26回大会は次のように指摘しています。
「安倍自公政権は、衆参両院で多数を握っているが、政治的には決して盤石ではない。この内閣の基盤はきわめてもろく、深刻な矛盾をはらんでいる」
(この項おわり)(金子豊弘が担当しました)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年6月26日付掲載
東アジアで商売をやっていこうとする財界は、過去の戦争の反省の上にたたないと、うまくいかないと考えている。
財界の「東アジア自由経済圏」、共産党の「北東アジア平和協力構想」。中身は全然違いますが、過去の戦争を反省するという点では一致。
安倍さんの進める方向の異常さが際立っています。