安全求め続けて JR福知山線事故10年③ 原因究明へ共同検証
「安全管理体制を構築しておくことは鉄道事業者の責務と考えられるが、JR西日本はその責務を十分に果たしていなかった」―。昨年、事故の遺族とJR西日本が共同で事故検証の報告書をまとめました。報告書は事故を起こしたJR西の組織的要因を分析し、事故の核心に迫っています。遺族と加害企業による共同の事故検証は、わが国初の画期的な取り組みです。
「なぜ家族は死んだのか」「なぜ運転士はあんな暴走をしたのか」。遺族らにとって、事故の真相解明と再発防止は最大の願いです。
しかし、JR西は、長らく事故と真剣に向き合ってきませんでした。国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会(現運輸安全委員会)の事故調査報告書などでも、真相解明には至りませんでした。
事故現場のカーブを通過する列車=4月25日、兵庫県尼崎市
遺族の呼びかけ
そうした中、事故で妻と妹を失った淺野弥三一(やさかず)さん(37)=兵庫県宝塚市=が同社に呼びかけ、真相解明のために責任追及を横に置いて、事故を遺族と共同で検証する議論が始まりました。
「福知山線列車脱線事故の課題検討会」(09~11年)で、JR西は依然「運転士による大幅な速度超過は想定できなかった」とのべました。同時に「運転士のミスは原因ではなく結果であり、その後ろに組織的要因がある」という認識に変化していきました。
さらに有識者の第三者を加えた「安全フォローアップ会議」(12~14年)が昨年4月にまとめた報告書は、かつてなくJR西の組織問題に踏み込みました。
報告書は、JR西が進めたスピードアップによってダイヤが極端に余裕のないものとなった上、ATS―P(自動列車停止装置)を整備しないままだったこと、懲罰的な労務管理が行われていたことなどが関連し合って事故の背景要因となったと分析しました
管理体制に不備
これまでJR西がATS―P未整備の言い訳としてきた「運転士の大幅な速度超過は想定できなかった」という見解や、ミスを報告しにくい懲罰的な労務管理について、「人はミスをするものであるという安全科学の基本認識から外れている」と厳しく批判。
スピードアップをするなら同時に安全対策を強化する、ダイヤ改定など事業を実行したあとも監視、評価、修正するといった安全管理体制に不備があったと指摘しました。
安全確立へ向けてJR西に対し、▽安全最優先の経営を進めているか社外検査を受ける▽原因究明と再発防止を優先し、ヒューマンエラーで社員を処罰しない▽上意下達から対話型のコミュニケーションに転換する―ことなどを提言しました。
JR西がこれらを真写剣に受け止め、信頼される鉄道事業者として再生していけるかどうか、社会的な目を注ぐことが求められます。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年4月26日付掲載
JR西日本の言い分の、「運転士の大幅な速度超過は想定できなかった」。東日本大震災での原発事故。東京電力の言い分の「想定外」と共通する面もあります。
ですが、「運転士のミスは原因ではなく結果であり、その後ろに組織的要因がある」という認識に変化に一筋の光が見えます。
「安全管理体制を構築しておくことは鉄道事業者の責務と考えられるが、JR西日本はその責務を十分に果たしていなかった」―。昨年、事故の遺族とJR西日本が共同で事故検証の報告書をまとめました。報告書は事故を起こしたJR西の組織的要因を分析し、事故の核心に迫っています。遺族と加害企業による共同の事故検証は、わが国初の画期的な取り組みです。
「なぜ家族は死んだのか」「なぜ運転士はあんな暴走をしたのか」。遺族らにとって、事故の真相解明と再発防止は最大の願いです。
しかし、JR西は、長らく事故と真剣に向き合ってきませんでした。国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会(現運輸安全委員会)の事故調査報告書などでも、真相解明には至りませんでした。
事故現場のカーブを通過する列車=4月25日、兵庫県尼崎市
遺族の呼びかけ
そうした中、事故で妻と妹を失った淺野弥三一(やさかず)さん(37)=兵庫県宝塚市=が同社に呼びかけ、真相解明のために責任追及を横に置いて、事故を遺族と共同で検証する議論が始まりました。
「福知山線列車脱線事故の課題検討会」(09~11年)で、JR西は依然「運転士による大幅な速度超過は想定できなかった」とのべました。同時に「運転士のミスは原因ではなく結果であり、その後ろに組織的要因がある」という認識に変化していきました。
さらに有識者の第三者を加えた「安全フォローアップ会議」(12~14年)が昨年4月にまとめた報告書は、かつてなくJR西の組織問題に踏み込みました。
報告書は、JR西が進めたスピードアップによってダイヤが極端に余裕のないものとなった上、ATS―P(自動列車停止装置)を整備しないままだったこと、懲罰的な労務管理が行われていたことなどが関連し合って事故の背景要因となったと分析しました
管理体制に不備
これまでJR西がATS―P未整備の言い訳としてきた「運転士の大幅な速度超過は想定できなかった」という見解や、ミスを報告しにくい懲罰的な労務管理について、「人はミスをするものであるという安全科学の基本認識から外れている」と厳しく批判。
スピードアップをするなら同時に安全対策を強化する、ダイヤ改定など事業を実行したあとも監視、評価、修正するといった安全管理体制に不備があったと指摘しました。
安全確立へ向けてJR西に対し、▽安全最優先の経営を進めているか社外検査を受ける▽原因究明と再発防止を優先し、ヒューマンエラーで社員を処罰しない▽上意下達から対話型のコミュニケーションに転換する―ことなどを提言しました。
JR西がこれらを真写剣に受け止め、信頼される鉄道事業者として再生していけるかどうか、社会的な目を注ぐことが求められます。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年4月26日付掲載
JR西日本の言い分の、「運転士の大幅な速度超過は想定できなかった」。東日本大震災での原発事故。東京電力の言い分の「想定外」と共通する面もあります。
ですが、「運転士のミスは原因ではなく結果であり、その後ろに組織的要因がある」という認識に変化に一筋の光が見えます。