きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

ハンドルクライシス トラック物流危機 24年問題編① 高速制限速度90キロへ引き上げ 残業減って、給料も減る

2024-01-31 07:11:44 | 働く権利・賃金・雇用問題について
ハンドルクライシス トラック物流危機 24年問題編① 高速制限速度90キロへ引き上げ 残業減って、給料も減る

いま高速道路での最高速度が時速80キロとなっているトラック(8トン以上)について、政府は90キロに引き上げるとしています。これがトラック運転者不足が起きるとされる「物流の2024年問題」の処方箋となるのでしょうか。(矢野昌弘)

今年4月に運転者の働くルールを定めた「改善基準告示」が改定されます。
そこでは1カ月の拘束時間が原則284時間(現行293時間)に。1年間の拘束が原則3300時間(同3516時間)と、わずかに短くなります。
4月を前に経済界は「人手不足」「荷物が届かない」と、危機を叫んでいます。その影で頭を抱えるのは運転者たちです。

それでは労働強化
関東地方で、中距離のトレーラーを運転する男性(47)は自動車などの材料となる鋼材を運びます。千葉県内の運送会社に午前3時すぎに出社。倉庫で鋼材をクレーンで積み、午前4時半に、群馬・栃木方面に向かいます。
届け先で鋼材を降ろし、千葉県内の倉庫で再び鋼材を積み、千葉県内の工場へ。勤務が終わるのは、午後3時から4時ごろ。毎日2、3時間の残業をしています。
「90キロに引き上げて、早く運べることを前提に、運転者のスケジュールを決められたら困る。それでは労働強化だ。給料がどうなるのか、会社からまだ説明がないのが不安だ」
賃金への影響も懸念されています。この男性は、「今の基本給は14万円に届かない。月に60時間の残業をやって、ようやく手取り30万円に届く。残業代でなんとか生活できる給料なのに、4月から残業が減ったら、どうなるのか」と心配します。



名神高速道路の関ケ原IC付近で立ち往生した車両=1月24日、岐阜県(NEXCO中日本名古屋支社提供)

国は対策何もなし
北関東地方の運送会社社員で長距離の10トントラックを運転する男性(50)は、週1回のペースで大阪方面を往復しています。男性の基本給も13万円。毎月140時間にのぼる残業で、給料はようやく月35万円になります。しかし、関東一円の短・中距離輸送だけだと、給料は22万円ほどといいます。
男性は「4月からの改定で収入増になるならいい。この業界がホワイトになってほしい。改定まで時間があったのに、国は給料について何も対策していない」と憤ります。
自身も長距離トラックを運転していた全日本建設交運一般労働組合(建交労)の鈴木正明書記次長は、こう指摘します。
「死ぬほど残業しないと人並みに暮らせない、長時間残業を前提とした今の賃金体系に切り込むことなしに、労働改善はあり得ない」
4月に始まる改定「改善基準告示」について、鈴木さんは「例外規定が多く、説明会に参加しても『1回でわからない』という声をよく聞く。荷主や経営書にとっては“焼け太り”とも思える改悪部分もあり、現場からは『結局は一緒なんや』という声もあります」。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年1月29日付掲載


「8トン以上のトラックの高速道路の制限速度を90キロに引き上げて、早く運べることを前提に、運転者のスケジュールを決められたら困る。それでは労働強化だ」
賃金への影響も懸念。この男性は、「今の基本給は14万円に届かない。月に60時間の残業をやって、ようやく手取り30万円に届く。残業代でなんとか生活できる給料なのに、4月から残業が減ったら、どうなるのか」と心配。
自身も長距離トラックを運転していた全日本建設交運一般労働組合(建交労)の鈴木正明書記次長は、こう指摘。
「死ぬほど残業しないと人並みに暮らせない、長時間残業を前提とした今の賃金体系に切り込むことなしに、労働改善はあり得ない」
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熊本・川辺川ダム計画復活に怒り② ダム前提 治水軽視

2024-01-30 07:12:43 | 政治・社会問題について
熊本・川辺川ダム計画復活に怒り② ダム前提 治水軽視
水害をきっかけに復活した川辺川ダム計画。住民らは水害で被害が広がった一因に、同ダム建設を前提にした計画高水流量(堤防などにより洪水時安全に流せるとされる水量)などの治水対策を指摘します。
球磨村大坂間(おおさかま)地点では、国土交通省の資料(2001年)で計画高水流量から1メートルから2・5メートルの堤防かさ上げが必要とされていました。川辺川ダムの白紙撤回以降、国、県、自治体による「ダムによらない治水」の議論が行われていましたが、同地区の堤防は現行の計画高水流量を基準に整備(12年)され、20年7月の水害では5人の死者がでました。



球磨川と人吉市街=2023年12月5日、熊本県人吉市

対策わずか
流域住民には「治水をダム建設の人質にして国の言うことを聞かないと進めないのか」と憤る人も。
水害後も国のこの態度は変わらず、被害に対し著しく低い基準での緊急治水対策が行われています。最大3・8メートルの浸水被害があった球磨村神瀬(こうのせ)地区の住宅かさ上げはわずか80センチメートル。安全の根拠など住民の求める説明は示されず、住民からは「住宅の移転にせよ、再建にせよ、デメリットばかり。その中で苦渋の選択を迫られている」と抗議の声が上がっています。
八代市坂本地区で被災した光永了円さん(70)は自宅などが1・5メートル浸水しました。災害対策として提示されたかさ上げの高さは50センチから80センチ。かさ上げは今回で4度目、そのたびに水害被害に遭ってきました。「これではまた水が上がる。川辺川ダムを造るからと低くかさ上げすることになる。せめて今回の水害で漬かったところまでは上げてほしい」と要望します。
くまもと地域自治体研究所理事長の中島煕八郎(きはちろう)熊本県立大学名誉教授(76)は、「川辺川や球磨川の流域社会は全国を見渡しても貴重な存在だ。住民が川をこよなく愛し、川とともに生きており、だからこそ60年ちかく運動を続けてこられた」と強調します。

制御が不能
「今造られようとしている『流水型ダム』は無責任なダムの最終形態。ほどほどの水量なら制御するけれどもそれを超えれば緊急放流(堤体上部から水が溢れるに任せる状態)で制御不能になる。治水の責任放棄です」と、川辺川ダム建設に固執する国を批判。被害が拡大した原因に住民らが指摘する、中・下流域、人吉市街地などでの支流の氾濫や、流木で球磨川第4橋梁(きょうりょう)が「ダム化」した問題について国交省は隠蔽(いんぺい)をやめ検証すべきだと訴えます。
一方で堤防建設や遊水池を検討する官僚もおり、国交省も一枚岩ではないと指摘。市民運動や住民討論集会の重要性を強調します。「住民がどういう暮らしを望んでいるのかを軸に、国や自治体ができることもできないことも議論を尽くさなければ本当の『流域治水』にはならない」
球磨川流域の住民団体は、23年1月、川辺川ダム建設の中止や具体的な治水対策、瀬戸石ダム撤去などに加え、森の保水力川を保つ森林政策の見直しなど「ダムによらない流阿域の治水と復興を求める~十力条」を採択し住民決甲定のもとでの公共事業を求めています。(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年1月21日付掲載


水害後も国の態度は変わらず、被害に対し著しく低い基準での緊急治水対策が行われています。最大3・8メートルの浸水被害があった球磨村神瀬(こうのせ)地区の住宅かさ上げはわずか80センチメートル。安全の根拠など住民の求める説明は示されず、住民からは「住宅の移転にせよ、再建にせよ、デメリットばかり。その中で苦渋の選択を迫られている」と抗議の声が。
「今造られようとしている『流水型ダム』は無責任なダムの最終形態。ほどほどの水量なら制御するけれどもそれを超えれば緊急放流(堤体上部から水が溢れるに任せる状態)で制御不能になる。治水の責任放棄」
ダムではなく、堤防のかさ上げ、川の浚渫、遊水池などで治水を。
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熊本・川辺川ダム計画復活に怒り① 水害拡大「清流守れ」

2024-01-29 07:10:09 | 政治・社会問題について
熊本・川辺川ダム計画復活に怒り① 水害拡大「清流守れ」
「ダムによらない治水を」―。熊本県を流れる球磨川(くまがわ)水系川辺川でかつて中止に追い込まれた川辺川ダム計画を国と県が復活させました。
2020年7月の球磨川の水害を口実にしたものですが、県民からは怒りの声が湧き上がっています。
(田中正一郎)

川辺川ダムは半世紀以上前の1966年に計画が発表され、地域住民の大多数が反対するなか利水訴訟や漁業権の収用問題などで国が敗北。治水問題でも地元首長が次々と反対を表明しました。2008年、蒲島郁夫知事が白紙撤回を発表し民主党政権下で中止(実際には中断)されました。復活したダム計画はこれを災害専用にダム下部に穴の開いた「流水型」ダムとして再開するものです。



川辺川の流れにさおをさす釣り人=2023年8月27日、熊本県相良村

急激な増水
2020年の水害で被災した同県人吉市の林通親さん(74)は「ダムに2700億円使うお金があれば、もっと別の抜本的な治水ができるのではないか」と疑問を投げかけます。河川の氾濫を防ぐにはダム以外に川底の掘削や堤防建設など河川の流量を増やす方法がありますが、川辺川ダムに固執する国は岩盤の露出などを理由に人吉地点の流量見直しを拒否。1947年から毎秒4000トンに据え置かれたままです。
地域住民がダムに反対するのは、治水にダムが全く役に立たなかったばかりか被害を拡大したという経験からです。球磨川中・下流には1950年代、荒瀬ダム、瀬戸石ダムとダムが次々造られました。上流には59年、市房ダムがつくられましたが、その5年後の65年7月の水害以降、経験したことがないような急激な増水がたびたび地域を襲いました。
当時、川中流域の実家に住んでいた緒方雅子さん(75)は「それまでも水害にあってきたが、市房ダムができてから2階まで水がくるような洪水が起きるようになった。川の水がうねって盛り上がり、タンスなどが流れていた」と話します。
沿岸の住民らは、急激な増水の原因にダムの緊急放流を指摘します。「今も緊急放流におびえているのに、川辺川ダムもできれば流域は人が住めなくなるのでは」とし、ダム計画の中止や既存ダムの撤去を訴えます。

漁獲高減少
環境への影響も深刻です。「川はわれわれの命の母だ。ダムで川を壊されるのは嫌でしょうがない」。川漁師の吉村勝徳さん(75)はこう語ります。今も「清流」と言われる球磨川ですが、かつてはさらに透明度が高かったと振り返り、「(大型砂防ダムも含む)ダムができたことで雨の後の濁り水が長期化した」と証言します。濁りがアユの餌となる藻の生育に悪影響を及ぼすほか、ダム本体でも魚の遡上(そじょう)が断ち切られ、球磨川の漁獲高は年々減少しています。
「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」の中島康代表(83)は、「川辺川ダムをつくったら元の川ではなくなってしまう。『清流・球磨川』と言えなくなったとき、観光に来る人などいるのか」と指摘します。
川辺川ダム計画が進む過程で村中心部の立ち退きを余儀なくされた五木村では村の人口が激減。県がダム推進に転じた後も村としての賛否を示していません。中島氏は杢目で話せば「ダムはいかん」という住民が多数いるのではとし、「犠牲に見合う効果はない。絶対に造らせてはならない」
と言い切ります。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年1月20日付掲載


2020年の水害で被災した同県人吉市の林通親さん(74)は「ダムに2700億円使うお金があれば、もっと別の抜本的な治水ができるのではないか」と疑問を。
沿岸の住民らは、急激な増水の原因にダムの緊急放流を指摘します。「今も緊急放流におびえているのに、川辺川ダムもできれば流域は人が住めなくなるのでは」と。
「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」の中島康代表(83)は、「川辺川ダムをつくったら元の川ではなくなってしまう。『清流・球磨川』と言えなくなったとき、観光に来る人などいるのか」と指摘。
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ビキニ被災70年 核禁条約発効後の世界の変化 核保有国 声を無視できず

2024-01-28 06:39:22 | 平和・憲法・歴史問題について
ビキニ被災70年 核禁条約発効後の世界の変化 核保有国 声を無視できず

ビキニ事件を機に広がった原水爆禁止運動は、被爆者を先頭とした市民のたゆまぬ努力により核兵器禁止条約を2017年に採択し、21年に発効。以来、署名国は93カ国、批准した国は70カ国に広がり、国際条約としての規範力を発揮し、核保有国にまで影響を及ぼしています。

より深く定着
核兵器禁止条約の第2回締約国会議で発言した国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」のメリッサ・パーク事務局長は「禁止条約の規範はより深く定着しつつある。一部の国で言われる核兵器の合法性なるものを少しずつ掘り崩している」と述べました。核保有国や「核の傘」のもとにある国にも変化を起こしつつあるという認識です。



米ニューヨークの国連本部で開第2回締約国会議=2023年11月

米民主党のジェームズ・マクガバン下院議員は昨年2月、核兵器禁止条約の目標と条項の支持をバイデン政権に求める法案を提出しました。同法案の賛同議員は昨年末の時点で連邦下院(定数435)の約1割にあたる42人に上っています。
マクガバン氏は昨年12月の下院本会議で、禁止条約には90カ国以上が署名し、締約国会議で具体化を議論していることを指摘。「核兵器は脅迫や強制の手段として使われている。戦争を防がない」と核抑止力論を批判し、米政権に禁止条約への参加を求めました。
米下院には、禁止条約に参加し、核兵器に費やされている巨額の予算を国民向けに使うよう求める別の法案も提出されています。
フランスでは昨年11月、上下両院議員と欧州議会議員ら約70人がマクロン大統領に宛てた連名の声明で締約国会議へのオブザーバー参加を要請しました。
声明は米国の同盟国であってもオブザーバー参加している国があることを強調しました。「彼らは禁止条約の存在を認め、世界の圧倒的大多数の国々の声を無視することはできないことを理解している」と指摘しました。
声明は「この動きに不参加を続ければ、フランスの外交的窮地はさらに深まる」と懸念を表明しました。「フランスをこれ以上孤立させるな。信頼を得るためにオブザーバー参加を」と訴えました。

軍事同盟国も
これまで2回開かれた締約国会議にはドイツ、ノルウェー、ベルギー、オランダ、オーストラリアがオブザーバー参加しました。米国主導の軍事同盟、北大西洋条約機構(NATO)の核共有政策に参加する5カ国のうちイタリアとトルコ以外は参加しています。各国は「相互の努力でどう前進をつくれるか考える準備がある」(ベルギー)など対話の姿勢を示しています。
ドイツは昨年6月に閣議決定した初の国家安全保障戦略で、核抑止力論の維持を強調する一方で、核兵器のない世界へ進むために「核兵器禁止条約の署名国との対話」にも取り組む姿勢を表明しています。(ワシントン=島田峰隆)(おわり)
このシリーズは大野博美、加來恵子が担当しました。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年1月27日付掲載


核兵器禁止条約の第2回締約国会議で発言した国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」のメリッサ・パーク事務局長は「禁止条約の規範はより深く定着しつつある。一部の国で言われる核兵器の合法性なるものを少しずつ掘り崩している」と。
米民主党のマクガバン氏は昨年12月の下院本会議で、禁止条約には90カ国以上が署名し、締約国会議で具体化を議論していることを指摘。「核兵器は脅迫や強制の手段として使われている。戦争を防がない」と核抑止力論を批判し、米政権に禁止条約への参加を求める。
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ビキニ被災70年 核兵器をめぐる世界情勢の変化② 「人類の安全保障」問う

2024-01-27 07:06:08 | 平和・憲法・歴史問題について
ビキニ被災70年 核兵器をめぐる世界情勢の変化② 「人類の安全保障」問う

日本原水協代表理事 高草木博さん

2007年初頭には、米国の大統領補佐官や国防長官、国務長官などの経験者の「核兵器のない世界」と題する論評が新聞に掲載され、高まる世論の中で大統領選挙では、イラク反戦と「核兵器のない世界」を掲げたオバマ大統領が登場しました。

NYで大行進
10年5月の核不拡散条約(NPT)再検討会議は、核兵器廃絶の高まる期待の中で開かれました。開会前日にはニューヨークで、米国と世界の市民が「核兵器廃絶条約の交渉を、ただちに」の横幕を掲げて大行進を行い、署名の提出を行いました。この行動は、原水協が被爆者と共に提唱して実現したものです。
会議では、核保有国からの強い抵抗がありました。しかし、圧倒的多数の国の政府と世論、市民社会の行動の前に、重要な前進もありました。
核兵器禁止条約へと動いた国々は、最終文書に核兵器禁止条約または、廃絶条約の課題を文言として入れることを提案しました。一部の核保有国が反対し、最後の最後に妥協案として、パン・ギムン国連事務総長(当時)の5項目提案の一つとして「核兵器禁止条約」に言及しました。
最終日、合意された文書は、行動計画の冒頭に、「核兵器のない世界の平和と安全を達成する」ことを掲げ、その具体的ステップとして、それを「創り、維持する枠組を確立する特別の努力」を約束しました。
「核兵器のいかなる使用も壊滅的な人道的結果を引き起こす」として、すべての国が国際人道法を含む国際法の順守を約束し、また、「核兵器条約の交渉」や「相互に強化しあう個別の枠組」についての「合意」を促したのもこの文書です。



核兵器禁止条約の採択が決まった歓喜の中で握手を交わす被爆者=2017年7月7日、ニューヨーク(池田晋撮影)

二つの動きが
17年7月、核兵器禁止条約が採択されるまでには、なお二つの重要な国際政治の動きがありました。一つは、スイスの発案で開始された「核兵器の人道上の影響に関する声明」です。
国際政治は核兵器の問題をこれまで「国家の安全保障」の問題として扱ってきたが、それは市民社会の運動がいうように、「人類と世界の安全保障」の問題なのではないかと問いかけ、人類の生存のために核兵器を禁止することをNPTや国連総会の会議のたびに共同声明にし、核兵器禁止・廃絶のコンセンサスを築き上げてきました。
もう一つは、オーストリア、メキシコ、ノルウェーの3カ国が始めた「多国間核軍縮交渉を前進させる」という表題の国連決議です。2012年以降毎年提案され、賛成を増やしていきました。それは、核兵器禁止の問題を、一国でも反対があれば合意が阻まれるNPT再検討会議やジュネーブ軍縮会議の場から、多数決をルールとする国連総会の場に移し、総会のルールで決定する斬新な発議でした。
15年春、NPT再検討会議で、わずかに米英カナダの3カ国の反対で、合意が阻まれると、これらの国は秋、国連総会で「核兵器禁止の法的拘束刀を持つ文書を交渉する国連会議」の開催を提案。投票参加国の3分の2を大きく超える123カ国の賛成で17年開催が決定されました。
米国は決議に驚愕(きょうがく)し、交渉会議をボイコットするよう露骨な圧力を加えましたが、賛成した国々には、こうした圧力に屈することなく、17年7月7日、核兵器禁止条約を採択したのです。
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年1月26日付掲載


17年7月、核兵器禁止条約が採択されるまでには、なお二つの重要な国際政治の動きがありました。一つは、スイスの発案で開始された「核兵器の人道上の影響に関する声明」。
もう一つは、オーストリア、メキシコ、ノルウェーの3カ国が始めた「多国間核軍縮交渉を前進させる」という表題の国連決議。
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