トンネル事故なぜ? コスト削減で改修先延ばし、ずさん点検
自公推進の民営化 背景に
2日に発生した中央自動車道上り線の笹子トンネルでの天井板崩落事故は、9人が死亡する最悪の事態となりました。管理が行き届いているはずの高速道路でなぜこんな事故が?事故の背景には、自民・公明政権(当時)が推進した道路公団民営化が影を落としていることがわかってきました。
今回の事故は、厚さ8~9センチのコンクリート製の天井板と隔壁約330枚が長さ130メートルにわたって連鎖的に崩落しました。落下物の重さは約360トンにおよびます(図)。
崩落の原因は、天井板を支えるつり金具をトンネル内壁にとめるアンカーボルトの脱落によるものとみられています。
3日に会見を行った中日本高速道路の吉川良一専務執行役員は、「老朽化が原因の一つとみられる」との見方を示しています。いっぽうで、つり金具でコンクリート板を支える天井板方式そのものへの疑問や弱点を指摘する技術者も少なくありません。
保全体制機能せず
「本来なら今年9月の定期点検で笹子は、すぐに補修が必要な『AA』の判定が出ているべきだった。こんな異常を見落としたのだから、点検をしていないのに等しい」
こう語るのは、中日本高速道路の道路管理に詳しい関係者です。
事故があった笹子トンネルの点検は、2000年と05年、08年、今年9月に行われていました。
そのうち、コンクリート内部の異変やボルトのゆるみを異音で検知する「打音検査」は、00年以後、行っていません。目視でしか検査をしていませんでした。
同時期に検査した反対車線の笹子トンネル下り線では、事故後の緊急点検で、「アンカーボルト」の脱落やゆるみなど計670カ所もの不具合が見つかりました。
このことからも中日本の保全体制が機能していなかったことはあきらかです。
事故発生から間もない、緊迫した様子の笹子トンネル上り線(大月市側)=2日、小林義孝党都留市議撮影
外注化で「効率的」
高速道路の保全や維持修繕が後退したきっかけは、05年10月の道路公団民営化です。中日本高速をはじめとする高速道路会社6社が誕生しました。
ここで、中日本高速が打ち出したのは、コストの削減です。
同社は06年に発表した経営計画で「2010年度までに行う保全・サービス事業においては、05年度までに実施した02年度比3割コスト削減の水準を維持しつつ、更なる削減をめざす」と明記。
さらに保全点検や維持修繕などの業務については、アウトソーシング(外注化)などで「効率的」に行う方針を打ち出しました。
こうしたコスト削減が如実に現れたのが、トンネル改修です。
中日本管内では、笹子と同型トンネル19本で改修工事が行われ、天井板が撤去されていました。
いずれも民営化前の04年までに撤去が完了していました。
中日本管内で天井板が残っているのは、距離の長い笹子トンネル上下(約4・7キロ)と恵那山下り(8・5キロ)などの5本を残すのみでした。
なぜ、笹子の改修は行われていないのか?関係者は「改良には工事費がかかり過ぎるのと作業が大変なので、距離が長い笹子はずっと先延ばしにされていると聞いた」と証言します。
さらに関係者によると、「03年に天井板を撤去した小仏トンネルでは、しみだした水が天井板の上で水たまりをつくっていて、コンクリートの鉄筋もポロポロになっていたと聞いた。その時ですら、『笹子の方が危ない』『次は笹子だ』と現場を知る人たちは話していた」といいます。
本紙は、民営化後の中日本がどのように検査内容を変更したのか、質問したところ、中日本は「文書の保管期限が切れており、詳細がわからない」と回答。
コスト削減が強力に進められる中、高速道路の管理点検がどれほど後退したのか。事故再発防止には、徹底した検証が欠かせません。
高速道路会社~財界型の人事と経営手法持ち込み
道路公団の民営化では、新会社トップの会長人事に当時の小泉政権と日本経団連の奥田碩会長(トヨタ元会長)が強力に関与し、財界大企業型の経営手法を新会社に持ち込みました。
中日本の初代会長には、元伊藤忠商事常務で元道路公団総裁の近藤剛氏。東日本は新日鉄の元副社長、西日本は神戸製鋼の元常務、首都高速道路はトヨタ元専務、阪神高速道路は松下電器元副社長が初代会長です。
その後も中日本は、元日本経団連専務理事の矢野弘典氏や住友スリーエム元副社長の金子剛一氏(現CEO兼社長)が経営トップに続いています。
一方、日本共産党の穀田恵二衆院議員は、道路などの新規建設を抑え、維持更新に費用の重点を移すよう、3月の衆院予算委員会で求めています。こうした主張は、維持更新を後回しにする一方で道路の新規建設を推進する自公政権や財界型とは対照的です。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2012年12月23日付掲載
今回は、中日本の改修工事費のカットがクローズアップされていますが、東日本や西日本にしても実態はあまり変わらないのでしょうね。
別の件ですが、ETCの普及によるのでしょうか、人が配置されていない「一般」の料金所が増えています。僕は障害者割引を利用しているんですが、呼び出しボタンを押して、カメラで手帳を見せて対応してもらわないといけません。
これも民営化の影響でしょうか。困ったものです。
自公推進の民営化 背景に
2日に発生した中央自動車道上り線の笹子トンネルでの天井板崩落事故は、9人が死亡する最悪の事態となりました。管理が行き届いているはずの高速道路でなぜこんな事故が?事故の背景には、自民・公明政権(当時)が推進した道路公団民営化が影を落としていることがわかってきました。
今回の事故は、厚さ8~9センチのコンクリート製の天井板と隔壁約330枚が長さ130メートルにわたって連鎖的に崩落しました。落下物の重さは約360トンにおよびます(図)。
崩落の原因は、天井板を支えるつり金具をトンネル内壁にとめるアンカーボルトの脱落によるものとみられています。
3日に会見を行った中日本高速道路の吉川良一専務執行役員は、「老朽化が原因の一つとみられる」との見方を示しています。いっぽうで、つり金具でコンクリート板を支える天井板方式そのものへの疑問や弱点を指摘する技術者も少なくありません。
保全体制機能せず
「本来なら今年9月の定期点検で笹子は、すぐに補修が必要な『AA』の判定が出ているべきだった。こんな異常を見落としたのだから、点検をしていないのに等しい」
こう語るのは、中日本高速道路の道路管理に詳しい関係者です。
事故があった笹子トンネルの点検は、2000年と05年、08年、今年9月に行われていました。
そのうち、コンクリート内部の異変やボルトのゆるみを異音で検知する「打音検査」は、00年以後、行っていません。目視でしか検査をしていませんでした。
同時期に検査した反対車線の笹子トンネル下り線では、事故後の緊急点検で、「アンカーボルト」の脱落やゆるみなど計670カ所もの不具合が見つかりました。
このことからも中日本の保全体制が機能していなかったことはあきらかです。
事故発生から間もない、緊迫した様子の笹子トンネル上り線(大月市側)=2日、小林義孝党都留市議撮影
外注化で「効率的」
高速道路の保全や維持修繕が後退したきっかけは、05年10月の道路公団民営化です。中日本高速をはじめとする高速道路会社6社が誕生しました。
ここで、中日本高速が打ち出したのは、コストの削減です。
同社は06年に発表した経営計画で「2010年度までに行う保全・サービス事業においては、05年度までに実施した02年度比3割コスト削減の水準を維持しつつ、更なる削減をめざす」と明記。
さらに保全点検や維持修繕などの業務については、アウトソーシング(外注化)などで「効率的」に行う方針を打ち出しました。
こうしたコスト削減が如実に現れたのが、トンネル改修です。
中日本管内では、笹子と同型トンネル19本で改修工事が行われ、天井板が撤去されていました。
いずれも民営化前の04年までに撤去が完了していました。
中日本管内で天井板が残っているのは、距離の長い笹子トンネル上下(約4・7キロ)と恵那山下り(8・5キロ)などの5本を残すのみでした。
なぜ、笹子の改修は行われていないのか?関係者は「改良には工事費がかかり過ぎるのと作業が大変なので、距離が長い笹子はずっと先延ばしにされていると聞いた」と証言します。
さらに関係者によると、「03年に天井板を撤去した小仏トンネルでは、しみだした水が天井板の上で水たまりをつくっていて、コンクリートの鉄筋もポロポロになっていたと聞いた。その時ですら、『笹子の方が危ない』『次は笹子だ』と現場を知る人たちは話していた」といいます。
本紙は、民営化後の中日本がどのように検査内容を変更したのか、質問したところ、中日本は「文書の保管期限が切れており、詳細がわからない」と回答。
コスト削減が強力に進められる中、高速道路の管理点検がどれほど後退したのか。事故再発防止には、徹底した検証が欠かせません。
高速道路会社~財界型の人事と経営手法持ち込み
道路公団の民営化では、新会社トップの会長人事に当時の小泉政権と日本経団連の奥田碩会長(トヨタ元会長)が強力に関与し、財界大企業型の経営手法を新会社に持ち込みました。
中日本の初代会長には、元伊藤忠商事常務で元道路公団総裁の近藤剛氏。東日本は新日鉄の元副社長、西日本は神戸製鋼の元常務、首都高速道路はトヨタ元専務、阪神高速道路は松下電器元副社長が初代会長です。
その後も中日本は、元日本経団連専務理事の矢野弘典氏や住友スリーエム元副社長の金子剛一氏(現CEO兼社長)が経営トップに続いています。
一方、日本共産党の穀田恵二衆院議員は、道路などの新規建設を抑え、維持更新に費用の重点を移すよう、3月の衆院予算委員会で求めています。こうした主張は、維持更新を後回しにする一方で道路の新規建設を推進する自公政権や財界型とは対照的です。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2012年12月23日付掲載
今回は、中日本の改修工事費のカットがクローズアップされていますが、東日本や西日本にしても実態はあまり変わらないのでしょうね。
別の件ですが、ETCの普及によるのでしょうか、人が配置されていない「一般」の料金所が増えています。僕は障害者割引を利用しているんですが、呼び出しボタンを押して、カメラで手帳を見せて対応してもらわないといけません。
これも民営化の影響でしょうか。困ったものです。