きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

経済政策総点検 骨太方針と成長戦略 ⑨ 食料安全保障 農業崩壊の反省なし

2024-07-31 07:14:09 | 予算・税金・消費税・社会保障など
経済政策総点検 骨太方針と成長戦略 ⑨ 食料安全保障 農業崩壊の反省なし

骨太方針は通常国会で成立した食料・農業・農村基本法の改定を受けて初動5年間で食料安全保障強化に向けた「農業の構造転換を集中的に推し進め」ると表明し、そのために「24年度中に基本計画を改定し、施策を充実・強化する」ことなどを提起しています。
改定基本法は食料自給率の低迷、農村の崩壊の広がりなど今日の危機を招いた根本原因―農産物の際限ない輸入自由化や農業の市場まかせ、競争力のない中小経営の淘汰(とうた)など―へのまともな検証や反省もないまま、その延長線上で農政の方向を打ちだしたものです。それを受けた骨太方針に危機の根本的打開を期待することはできません。



「食料・農業・農村基本法」改定案の衆院採決強行に抗議する人たち=4月19日、衆院第2議員会館前

海外依存の宣言
骨太方針は食料安全保障の強化にむけ「食料自給率その他の新たな目標設定」を掲げますが、これまで唯一の目標としてきた自給率向上を「その他の課題」の一つに格下げした改定法にあわせた提起です。また「安定した輸入の確保」も改定法で新たに明記した項目であり、不安定化する海外に食料を今後も依存し続ける宣言にほかなりません。
骨太方針は「輸入依存度の高い食料・生産資材の国内生産力拡大等の構造転換を推進する」とうたいます。しかし輸入自由化や市場まかせの路線のままでは本格的な実現の展望は開けないでしょう。
法改定では、高騰する生産費の販売価格への「適正な転嫁」も焦点の一つになりましたが、骨太方針は「食料の合理的な価格の形成」のための「法制度について次期通常国会への提出を目指す」としています。
改正法が「需給事情及び品質評価が適切に反映されつつ、…生産から消費に至る各段階の関係者が合理的な費用を考慮しなければならない」としたことを受けたものですが、市場原理を前提に民間企業の取引に考慮せよと求めているのにすぎません。
骨太方針は「所得の向上」について「収益力の向上の実現」を通じて図るとしています。農業者などに努力を求めるだけで、欧米諸国のように政府の責任で手厚い価格保障や所得補償で農業所得を支える姿勢はありません。これでは、「農業の持続的発展」「農村の振興」は望めません。
環境負荷低減の取り組みを強調し、「(各種補助金の支給と関連させる)クロスコンプライアンスの実施や有機農業等の先進的な取組への後押し」をするとしています。環境負荷の低減は必要ですが、農業者の選別や負担の強化になってはなりません。
また「サービス事業体の育成」「食品産業と連携した農業法人の経営基盤強化」「スマート技術の開発と生産方式の転換」「人口減少に対応した…土地改良法制について次期通常国会提出」などを列記しています。これらは、担い手の減少という現実への対応という面もありますが、農外企業の農業・農村支配を拡大し、農業者のいっそうの減少、農村の崩壊を加速することになりかねません。

抜本的予算増を
中山間地域の農地保全や粗放的利用対策、農村関係人口の増加、鳥獣害対策、棚田地域の振興など農山村が直面する切実な課題にも言及しています。これらの対策は、農業者が安心して営農に励み、農村に暮らせる土台を国の責任で整えることと結びついてこそ本格的に生きます。そのためには、農業を国の基幹的生産部門に位置づけ、農林水産予算を既存の枠にとらわれず抜本的な増額が必要です。
(日本共産党国民運動委員会 橋本正一)
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月30日付掲載


骨太方針は食料安全保障の強化にむけ「食料自給率その他の新たな目標設定」を掲げますが、これまで唯一の目標としてきた自給率向上を「その他の課題」の一つに格下げした改定法にあわせた提起。また「安定した輸入の確保」も改定法で新たに明記した項目であり、不安定化する海外に食料を今後も依存し続ける宣言にほかなりません。
骨太方針は「輸入依存度の高い食料・生産資材の国内生産力拡大等の構造転換を推進する」とうたいます。しかし輸入自由化や市場まかせの路線のままでは本格的な実現の展望は開けないでしょう。
骨太方針は「所得の向上」について「収益力の向上の実現」を通じて図ると。農業者などに努力を求めるだけで、欧米諸国のように政府の責任で手厚い価格保障や所得補償で農業所得を支える姿勢はありません。これでは、「農業の持続的発展」「農村の振興」は望めません。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

経済政策総点検 骨太方針と成長戦略 ⑧ 中小企業 合併・買収促進狙う

2024-07-30 07:23:27 | 予算・税金・消費税・社会保障など
経済政策総点検 骨太方針と成長戦略 ⑧ 中小企業 合併・買収促進狙う

この30年間、日本の大企業は国内雇用を減らし、成長の源泉となるイノベーション(新技術開発)でも後退した結果、国内経済をけん引し、維持する能力をますます低下させています。
岸田文雄政権は「成長分野への労働・資本の移動・新陳代謝の促進」(「経済産業政策新機軸部会第2次中間整理」2023年6月27日)による打開を掲げています。これは中小企業などの再編・淘汰(とうた)を進め、技術や知的財産、専門人材、労働力を吸収し、大企業の競争力強化につなげる狙いです。

大企業へと再編
この具体化のため5月に成立させた改定産業競争力強化法(産競法)は、地方圏において900社程度の中堅企業(中小企業を除く従業員2000人以下の企業)を大企業へと再編。他方で都市圏を中心に新技術開発を担うスタートアップ(新興企業)を大量創出し、同時にそれらのM&A(企業の合併・買収)を促進するとしています。
当然、こうした強引なやり方は中小企業とのあつれきが不可避で、岸田政権の成長戦略(「新しい資本主義」実行計画)では随所で矛盾があらわになっています。
例えば「大企業と中小・小規模企業・スタートアップの間の協力関係の確立」を掲げていますが、日本商工会議所が「知財侵害の抑止強化が不可欠」(「知的財産政策に関する意見」24年4月18日)と訴えるほど中小企業の特許やノウハウなどの知的財産が大企業に奪われる問題が深刻化しており、実行計画も「下請代金法の執行強化」を言わざるを得ません。
M&Aの推進をめぐっても、規制業法が存在しないもとで悪質な仲介業者が跋扈(ばっこ)してトラブルが多発。事態を放置できず、実行計画で対策を示しましたが、場当たり的で部分的な内容にすぎません。
経営難に陥った企業が金融機関などの債権者と調整しながら再建をめざす「私的整理」については、迅速な事業再生のためとして債権者の多数決で進められるようにする法改定を盛り込みました。しかし、芳野友子連合会長ですら新しい資本主義実現会議(24年3月26日)で「手続きの透明性や関係者間の公平性が確保できない」と反対。岸田政権はこうした矛盾を強権的に突破しようとしています。



「新しい資本主義実現会議」で中小企業のM&Aなどについて発言する岸田文雄首相(右から2人目)=3月26日(首相官邸のホームページから)

規制骨抜き恐れ
他方、多くの中小企業が望む価格転嫁対策や賃上げ支援については「労務費等の価格転嫁の推進」に向けて下請代金法の改正検討の記述があるものの、5月28日の自民党政務調査会の提言が「下請け」の定義そのものの撤廃を迫るなど、下請けいじめ根絶の責任を放棄し、規制を骨抜きにする恐れがあります。
また税や社会保険料の負担増による滞納増加の対策として中小企業庁などが6月から開始した「事業再生情報ネットワーク」はごくわずかな「再生可能性の高い中小企業」だけを支援するもので、中小企業全体の負担軽減は眼中にありません。
一握りの成長企業への支援政策は既に破たんしています。1999年の中小企業基本法改定で市場原理主義的理念に基づいて中堅企業やベンチャー企業への重点支援に転換した結果、企業数が2021年までに150万社も減少し、社会に貧困と格差をもたらしました。4月24日の衆院経済産業委員会で笠井亮議員にこの認識を問われた斎藤健経産相は「いろいろなケースがあり得る」などと言い放ちました。
「失われた30年」への反省もなく大企業・財界や政権与党の都合で中小企業を利用し、淘汰に誘導するのが岸田政権の「新しい資本主義」です。
(日本共産党国会議員団事務局 中平智之)^(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月28日付掲載


この具体化のため5月に成立させた改定産業競争力強化法(産競法)は、地方圏において900社程度の中堅企業(中小企業を除く従業員2000人以下の企業)を大企業へと再編。他方で都市圏を中心に新技術開発を担うスタートアップ(新興企業)を大量創出し、同時にそれらのM&A(企業の合併・買収)を促進すると。
当然、こうした強引なやり方は中小企業とのあつれきが不可避で、岸田政権の成長戦略(「新しい資本主義」実行計画)では随所で矛盾があらわに。
税や社会保険料の負担増による滞納増加の対策として中小企業庁などが6月から開始した「事業再生情報ネットワーク」はごくわずかな「再生可能性の高い中小企業」だけを支援するもので、中小企業全体の負担軽減は眼中にありません。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

経済政策総点検 骨太方針と成長戦略 ⑦ 資産運用立国 高リスク投資に誘導

2024-07-29 07:19:14 | 予算・税金・消費税・社会保障など
経済政策総点検 骨太方針と成長戦略 ⑦ 資産運用立国 高リスク投資に誘導

岸田文雄政権の成長戦略は、家計の預貯金を株式や投資信託に誘導する「貯蓄から投資」を推し進めるため、「NISA(少額投資非課税制度)の活用」を打ち出しています。
大幅に拡充された新NISAが今年1月から始まり、口座数が3月までで187万増え、総口座数は2300万を超えました。2027年末までに3400万口座まで引き上げるのが目標です。長期・積立・分散投資の重要性を普及・啓発する方針を掲げ、「金融経済教育推進機構(J―FLEC)」を8月に本格稼働させるとしています。
これらは岸田政権が22年11月に公表した「資産所得倍増プラン」に沿ったものですが、その内容は22年7月に日本証券業協会が公表した「資産所得倍増プランへの提言」を強く反映しています。同「提言」は「1億総投資家」の実現を掲げ、投資を勧める教育を国民的規模で推進する公的機関の設立を政府に求めました。これを受けて23年秋、臨時国会での金融関連法改定で設立されたのがJ―FLECです。所管するのは、金融業の振興を掲げる金融庁です。



東京証券取引所=東京都中央区

多様化を掲げる
機構設立に対しては、「投資のプラス面ばかり強調」され、「身の丈に合わない投資や投資被害」が増大することへの懸念を、消費者教育の専門家や弁護士が表明しました。改定法には、日本共産党、立憲民主党などが反対しています。
成長戦略は、投資家への「多様な投資商品の提供」を強調し、23年12月公表の「『資産運用立国実現プラン』に盛り込まれた施策等を実施する」としています。「実現プラン」は「オルタナティブ投資」を含めた「運用対象の多様化」を掲げています。成長戦略は特に公的年金について、「運用対象資産の多様化」、オルタナティブ投資の「運用目標の検討」を進める方針を示しています。
オルタナティブ投資は、債券や上場株式といった伝統的な投資以外の取引を指します。未公開株、不動産、ヘッジファンドなどがあり、総じてリスクが高いのが特徴です。これも日証協の「提言」に沿った施策で、金融業界のビジネスチャンス拡大につながります。

投機規制が急務
成長戦略には「実現プラン」で掲げた「非上場株式(未公開株)の流通促進」をさらに進める方針も盛り込まれています。取引所に上場されていない未公開株は価値評価が難しく、証券会社は一般の投資家への勧誘を禁じられています。しかし、投資信託協会は23年12月に業界ルールを変更し、一定の要件を課した上で、未公開株を一般の投資家でも購入できる投資信託に組み込めるようにしました(実施は2月から)。未公開株が組み込まれた投資信託をNISAの対象とすることも可能です。
岸田政権の下で、一般投資家への勧誘が禁止されるリスクの高い金融商品が一気に誰でも購入できる身近な投資先となりました。
岸田政権は家計資産をリスクの高い投資に誘導することに前のめりです。しかし、金融市場の発展には安定的な投資環境が不可欠であり、金融市場の乱高下を招く投機への規制や、投資詐欺を防ぐ投資家保護が急務です。投資の推奨ではなく、真に金融リテラシー(判断力)を向上させる金融経済教育が求められています。(日本共産党国会議員団事務局 丸井龍平)(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月26日付掲載


22年7月に日本証券業協会が公表した「資産所得倍増プランへの提言」を強く反映。同「提言」は「1億総投資家」の実現を掲げ、投資を勧める教育を国民的規模で推進する公的機関の設立を政府に求めました。
機構設立に対しては、「投資のプラス面ばかり強調」され、「身の丈に合わない投資や投資被害」が増大することへの懸念を、消費者教育の専門家や弁護士が表明。
岸田政権は家計資産をリスクの高い投資に誘導することに前のめり。しかし、金融市場の発展には安定的な投資環境が不可欠であり、金融市場の乱高下を招く投機への規制や、投資詐欺を防ぐ投資家保護が急務。投資の推奨ではなく、真に金融リテラシー(判断力)を向上させる金融経済教育が求められます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

経済政策総点検 骨太方針と成長戦略 ⑥ ジェンダー平等 「女性活躍」言うが

2024-07-27 07:12:07 | 予算・税金・消費税・社会保障など
経済政策総点検 骨太方針と成長戦略 ⑥ ジェンダー平等 「女性活躍」言うが

2024年の日本人の出生数が70万人を切るとの予測がでるなど急速な少子化が社会問題化しています。岸田文雄政権は、少子化・人口減少をくい止めるため「我が国の持てる力を総動員」するとし、骨太方針でも「政府一丸」となって取り組むと明記しました。
子どもを産むか産まないか、いつ産むか、何人持つかは、それぞれの女性やカップルが決めることです。国連人口基金は、人口が多すぎる、少なすぎるという問題設定を「有害」だと批判。問うべきは「一人ひとりが性と生殖に関する自己決定権を含め、基本的人権を行使する術を持っているかどうか」だと強調します。(23年版「世界人口白書」)
岸田政権も露骨な出産奨励は言葉にせず、骨太方針でも▽仕事と子育ての両立支援▽女性活躍▽男女賃金格差是正▽ジェンダー格差解消―などを進め、「結果として出生率が向上する社会を構築する」といいます。

ゆがんだ刺激策
問題はスローガンと骨太方針に盛り込まれた政策の落差です。骨太方針には、医療や介護など公的サービスの縮小が女性の「性と生殖に関する権利」を阻害するという視点がなく、むしろ社会保障の給付抑制や利用者負担増を経済成長の柱と位置づけています。社会保障給付の抑制などによって社会保険料を低く抑えれば、現役世代の消費が活性化し経済の好循環が生まれるという理屈です。
典型が、介護の利用者負担割合の引き上げです。骨太方針は、原則1割の利用者負担が2割になる所得要件を引き下げ、2割負担の対象者を拡大する方向性を示しています。利用者負担の引き上げは経済的理由による利用控えを生み、家族介護を増やします。厚生労働省の「国民生活基礎調査」(22年)によれば、家族介護の「主な介護者」の7割を女性が占めます。


■介護の利用者負担が2割になったときの負担額
―単身世帯が居宅サービスを利用限度額まで利用した場合―

 いったん払う
利用者負担額
最終的な利用者負担額
(償還払い後)
1割2割2割(1割からの負担増)
要支援15032円1万64円1万64円(5032円)
要支援21万531円2万1062円2万1062円(1万531円)
要介護11万6765円3万3530円3万3530円(1万6765円)
要介護21万9705円3万9410円3万9410円(1万9705円)
要介護32万7048円5万4096円4万4400円(1万7352円)
要介護43万938円6万1876円4万4400円(1万3462円)
要介護53万6217円7万2434円4万4400円(8183円)
※介護保険給付の利用料には所得に応じて上限額(高額介護サービス費)が決まっているものの、上限を超えた分も含めていったん払ったうえで、数カ月後に償還される仕組みです。負担の上限額が4万4400円となるのは前年所得が市町村民税課税世帯~課税所得380万円(年収770万円)来満の場合

格差解消に逆行
公的介護の縮小は女性の家族介護をさらに増やすことになり、「女性活躍」や「ジェンダレ格差解消」に反します。
岸田政権は、女性が多く働くケア労働の公的価格(人件費)を低く抑える歴代自公政権の方針を踏襲しています。4月には訪問介護の基本報酬を大幅に引き下げました。これも政府に言わせれば保険料負担抑制による景気刺激策です。一方、介護事業所にとっては減収になるため、労働者の賃金を抑制する要因になります。
介護職員の7割、特に訪問介護職員の8割を女性が占めます。看護師や保育士の女性比率は9割超です。介護報酬の引き下げをはじめ、ケア労働の公的価格抑制は「男女賃金格差是正」に逆行しています。
骨太方針は、非正規労働者の正規転換を掲げますが、政治の責任で直ちに実施できる非正規公務員の正規化には背を向けています。約9万人いる国家公務員の非常勤職員の3分の2、74万人いる自治体の非正規公務員の4分の3を女性が占めます。日本共産党の田村智子参院議員事務所の調査では、国の機関の男性正規職員を100とした場合、女性非正規職員の賃金は37・1です。
骨太方針に盛り込まれた政策が実行されれば、ジェンダー格差や、子どもを産みづらく育てにくい状況はいっそう強まる危険性があります。
(佐久間亮)(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月25日付掲載


子どもを産むか産まないか、いつ産むか、何人持つかは、それぞれの女性やカップルが決めること。国連人口基金は、人口が多すぎる、少なすぎるという問題設定を「有害」だと批判。問うべきは「一人ひとりが性と生殖に関する自己決定権を含め、基本的人権を行使する術を持っているかどうか」だと強調します。(23年版「世界人口白書」)
骨太方針は、原則1割の利用者負担が2割になる所得要件を引き下げ、2割負担の対象者を拡大する方向性を示しています。利用者負担の引き上げは経済的理由による利用控えを生み、家族介護を増やします。
約9万人いる国家公務員の非常勤職員の3分の2、74万人いる自治体の非正規公務員の4分の3を女性が占めます。日本共産党の田村智子参院議員事務所の調査では、国の機関の男性正規職員を100とした場合、女性非正規職員の賃金は37・1。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

経済政策総点検 骨太方針と成長戦略 ⑤ 労働市場 財界のための「改革」

2024-07-26 07:07:35 | 予算・税金・消費税・社会保障など
経済政策総点検 骨太方針と成長戦略 ⑤ 労働市場 財界のための「改革」

骨太方針は労働分野について、「三位一体の労働市場改革」を掲げています。①リスキリング(学び直し)による能力向上支援②個々の企業の実態に応じたジョブ型人事(職務給)の導入③雇用維持から成長分野への労働移動の円滑化への雇用政策の転換―を進めるものです。
「持続的・構造的な賃上げ」を実現するためだといいますが、まやかしです。
リスキリングの推進によって、労働者は、企業が求める能力を絶えず個人の責任で開発することを求められるようになります。これと一体で「労働移動の円滑化」が進められると、企業の求める能力がないと判断された労働者は、労働移動(転職)を可能にする能力を自助努力で身につけることを迫られます。こうした手法で労働者を退職に追い込むことを容易にするのが「三位一体改革」の本当の狙いです。
コストを削減しながら必要な労働力の確保を求める財界は、リスキリングの推進と労働移動の円滑化を政府に要請しています。



最低賃金の全国一律1500円以上を求めてデモ行進する人たち=7月20日、東京都新宿区

賃下げと流動化
「三位一体改革」のもう一つの柱は、「ジョブ型人事(職務給)」の導入です。「ジョブ型人事指針」を今夏に公表し、各企業が導入方法を検討できるようにするとしています。
経団連や政府が提唱する「ジョブ型人事(職務給)」は、職務内容が明確に規定されている欧米の職務給とはまったく異なるものです。
日本の場合は、職務内容が特定されておらず、賃金は職務とは無関係に能力・業績考課と情意考課(性格・人格・意欲)によって査定され、個別に決められています。職務を横断する配置転換も行われています。
政府・財界の言う「ジョブ型人事(職務給)」は、職務を口実に中高年の賃金を引き下げたうえに、本来の職務給ではありえない役割・成果による査定でさらに労働者全体の賃金を引き下げ、格差を拡大し、「能力なし」と判断した労働者をリスキリングの強要と退職に追い込もうとするものです。
電機大企業は、目標未達の労働者を降格・解雇することまで制度化しています。こんな制度を政府は支援しようというのです。

国際基準踏まえ
リスキリングは、労働者本位に実施することが必要です。国際労働機関(ILO)は「人的資源開発勧告」(第195号)で「教育および訓練は、すべての者の権利である」と位置づけるとともに、「有給教育休暇条約」(第140号)で教育・訓練に参加する労働者に有給の教育休暇を保障することを定めています。EU(欧州連合)も教育・訓練・生涯学習を社会権として位置づけ保障しています。
また、骨太方針が掲げるデジタル化が「生産性の向上」を目的としているのに対し、EUでは「人間中心の透明性のあるデジタル社会を築く。デジタル化に際しては、事前に労働者に情報を提供し協議する」ことが確認されています。
日本経済再生のためには、労働者に賃下げや格差拡大、不安定雇用をもたらす「三位一体改革」ではなく、国際的な基準と経験を踏まえて、労働者の人権を保護する国の義務と企業の責任を明確にした労働政策こそが必要です。
(日本共産党国民運動委員会 筒井晴彦)
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月24日付掲載


リスキリングの推進によって、労働者は、企業が求める能力を絶えず個人の責任で開発することを求められるように。これと一体で「労働移動の円滑化」が進められると、企業の求める能力がないと判断された労働者は、労働移動(転職)を可能にする能力を自助努力で身につけることを迫られます。こうした手法で労働者を退職に追い込むことを容易にするのが「三位一体改革」の本当の狙い。
政府・財界の言う「ジョブ型人事(職務給)」は、職務を口実に中高年の賃金を引き下げたうえに、本来の職務給ではありえない役割・成果による査定でさらに労働者全体の賃金を引き下げ、格差を拡大し、「能力なし」と判断した労働者をリスキリングの強要と退職に追い込もうとするもの。
リスキリングは、労働者本位に実施することが必要。
国際労働機関(ILO)は「人的資源開発勧告」(第195号)で「教育および訓練は、すべての者の権利である」と位置づけるとともに、「有給教育休暇条約」(第140号)で教育・訓練に参加する労働者に有給の教育休暇を保障することを定めています。EU(欧州連合)も教育・訓練・生涯学習を社会権として位置づけ保障。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする