コロナ禍と資本主義 見えざる鎖⑦ 性暴力 背景に経済的搾取
縫製産業がバングラデシュで始まったのは、1970年代後半でした。その後、急成長し、今では、中国に次ぐ世界第2位の衣料品輸出国に発展しました。
それを支えてきたのが、極めて低い賃金で働く女性労働者たちでした。多くは農村部出身で、仕事を見つけるために都市部に移住した人たちです。彼女らは、家族や地域社会からの支援の網の目から切り離されるため、彼女らへの暴力に対し、社会的対抗力を持てない特徴があります。
闇に埋もれ
自分たちの権利を主張すると激しい報復を受けることが少なからずあります。そのため、女性労働者の被害が表面化することはまれで、闇に埋もれた事件がどれほどあるのか誰にもわからないのが現実です。
そういう中でも、バングラデシュ労働者連帯センター(BCWS)などが実施した調査(2020年、「沈黙を破る暴力をやめろ」)は、実態の一端を明らかにしています。調査では、642人の労働者をインタビューしました。76%の労働者が、工場でジェンダーに基づく暴力を経験していました。工場での生産目標が高い場合や納入期限が厳しい場合、監督者に殴打されることが常態化しています。平手打ちされる(80%)、殴られる(44%)、蹴られる(42%、複数回答)ことが多いと報告しています。さらに6%が上司からレイプされていました。
工場の監督者たちは、国際ブランドから示された生産目標が達成されない場合、ボーナスを出さないなどと脅迫することがよくあります。多国籍企業である大手ブランドによる略奪的な購買慣行が繊維工場での暴力や嫌がらせに直接影響を与えていることを裏付けています。実際、64%の労働者が、生産目標を達成するための強烈な圧力にさらされていると感じ、そのため35%が上司からの辱めや身体的脅迫を受けたとしています。
ナズマさん(22)は、村を出て、工場でヘルパーとして働くために15歳のとき、都心部に出てきました。
工場では、上司による激しい暴力を受けました。上司たちは、彼女にわいせつな言葉を人前で投げつけてきました。彼女は家族の中で唯一の稼ぎ手でした。家族を養うため、肉体的・精神的虐待にたえざるをえませんでした。

バングラデシュ労働者連帯センターなどが実施した調査報告書
抗議できず
22歳のリパさんは田舎から出てきて、縫製工場で働き家族を支えました。2人の妹と病気の母親がいました。彼女の監督者は、「あなたはとても見た目がいい女の子だね。なぜあなたはそんなに大変な仕事をしているの」などと言って近づき、彼女の仕事を教えるという口実で、彼女の体に触れてきました。でも、彼女は抗議する方法を知りません。
ある日、事務室でレイプされました。リパさんは事件を工場の経営者に報告。ところが、工場側は、「あなたは女の子です。なぜこの事件について騒いでいるのですか?それは社会でのあなたの評判を汚します。給料をもらってこの地域を離れたほうがいい」と言われました。
アスマさん(19)は監督者からお金と生産目標を低くするなどの便宜と引き換えに、性行為を求められました。彼女が応じないと、仕事量が増えました。
クリーン・クローズ・キャンペーン(CCC)は、「ジェンダーに基づく暴力は経済的搾取の原因と結果」だと告発しています。ここには、国際ブランド企業や大手小売店という巨大資本による小規模資本の収奪の構図が横たわっています。
縫製産業の女性労働者は、男性労働者よりも2割程度賃金が低いのが実態です。性的暴力をも含んだ女性労働者への差別と支配は、男性も含んだ縫製工場労働者、縫製工場、そして縫製産業全体を搾取する基盤となっています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年7月22日付掲載
農村部から都市部に出てきて縫製工場で働く女性労働者。家族の中で唯一の稼ぎ頭。
若い女性ということで、監督者から性的嫌がらせ、ひいてはレイプまでされても抗議ができない。闇に埋もれてしまう実態。
縫製産業の女性労働者は、男性労働者よりも2割程度賃金が低いのが実態。性的暴力をも含んだ女性労働者への差別と支配は、男性も含んだ縫製工場労働者、縫製工場、そして縫製産業全体を搾取する基盤。
縫製産業がバングラデシュで始まったのは、1970年代後半でした。その後、急成長し、今では、中国に次ぐ世界第2位の衣料品輸出国に発展しました。
それを支えてきたのが、極めて低い賃金で働く女性労働者たちでした。多くは農村部出身で、仕事を見つけるために都市部に移住した人たちです。彼女らは、家族や地域社会からの支援の網の目から切り離されるため、彼女らへの暴力に対し、社会的対抗力を持てない特徴があります。
闇に埋もれ
自分たちの権利を主張すると激しい報復を受けることが少なからずあります。そのため、女性労働者の被害が表面化することはまれで、闇に埋もれた事件がどれほどあるのか誰にもわからないのが現実です。
そういう中でも、バングラデシュ労働者連帯センター(BCWS)などが実施した調査(2020年、「沈黙を破る暴力をやめろ」)は、実態の一端を明らかにしています。調査では、642人の労働者をインタビューしました。76%の労働者が、工場でジェンダーに基づく暴力を経験していました。工場での生産目標が高い場合や納入期限が厳しい場合、監督者に殴打されることが常態化しています。平手打ちされる(80%)、殴られる(44%)、蹴られる(42%、複数回答)ことが多いと報告しています。さらに6%が上司からレイプされていました。
工場の監督者たちは、国際ブランドから示された生産目標が達成されない場合、ボーナスを出さないなどと脅迫することがよくあります。多国籍企業である大手ブランドによる略奪的な購買慣行が繊維工場での暴力や嫌がらせに直接影響を与えていることを裏付けています。実際、64%の労働者が、生産目標を達成するための強烈な圧力にさらされていると感じ、そのため35%が上司からの辱めや身体的脅迫を受けたとしています。
ナズマさん(22)は、村を出て、工場でヘルパーとして働くために15歳のとき、都心部に出てきました。
工場では、上司による激しい暴力を受けました。上司たちは、彼女にわいせつな言葉を人前で投げつけてきました。彼女は家族の中で唯一の稼ぎ手でした。家族を養うため、肉体的・精神的虐待にたえざるをえませんでした。

バングラデシュ労働者連帯センターなどが実施した調査報告書
抗議できず
22歳のリパさんは田舎から出てきて、縫製工場で働き家族を支えました。2人の妹と病気の母親がいました。彼女の監督者は、「あなたはとても見た目がいい女の子だね。なぜあなたはそんなに大変な仕事をしているの」などと言って近づき、彼女の仕事を教えるという口実で、彼女の体に触れてきました。でも、彼女は抗議する方法を知りません。
ある日、事務室でレイプされました。リパさんは事件を工場の経営者に報告。ところが、工場側は、「あなたは女の子です。なぜこの事件について騒いでいるのですか?それは社会でのあなたの評判を汚します。給料をもらってこの地域を離れたほうがいい」と言われました。
アスマさん(19)は監督者からお金と生産目標を低くするなどの便宜と引き換えに、性行為を求められました。彼女が応じないと、仕事量が増えました。
クリーン・クローズ・キャンペーン(CCC)は、「ジェンダーに基づく暴力は経済的搾取の原因と結果」だと告発しています。ここには、国際ブランド企業や大手小売店という巨大資本による小規模資本の収奪の構図が横たわっています。
縫製産業の女性労働者は、男性労働者よりも2割程度賃金が低いのが実態です。性的暴力をも含んだ女性労働者への差別と支配は、男性も含んだ縫製工場労働者、縫製工場、そして縫製産業全体を搾取する基盤となっています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年7月22日付掲載
農村部から都市部に出てきて縫製工場で働く女性労働者。家族の中で唯一の稼ぎ頭。
若い女性ということで、監督者から性的嫌がらせ、ひいてはレイプまでされても抗議ができない。闇に埋もれてしまう実態。
縫製産業の女性労働者は、男性労働者よりも2割程度賃金が低いのが実態。性的暴力をも含んだ女性労働者への差別と支配は、男性も含んだ縫製工場労働者、縫製工場、そして縫製産業全体を搾取する基盤。