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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

日韓の歴史をたどる㉖ 朝鮮人学徒兵 玉砂利投げて抵抗、脱走も

2020-07-30 08:19:46 | 日韓の歴史をたどる
日韓の歴史をたどる㉖ 朝鮮人学徒兵 玉砂利投げて抵抗、脱走も
秋岡 あや
あきおか・あや 1983年生まれ。一橋大学大学院博士課程単位取得退学(朝鮮近現代史)。韓国水原市の水原外国語高校教師。韓国で聞き書きを重ねる

1937年の日中戦争から45年の敗戦まで、朝鮮では皇民化政策のもと戦時動員が行われました。戦時動員は労働動員と軍事動員に分けられます。労働動員は39年の「募集」、42年の「官斡旋」、44年の「徴用」の3段階があり、次第に強制性が強まり動員数も増えました。

志願という名で徴兵された学徒
軍事動員も、38年には「志願兵」でしたが、44年からは「徴兵」になります。この間、女子勤労挺身隊、軍慰安婦、軍属、軍夫の動員も行われました。学徒兵は形式的には志
願兵でしたが、学徒以外の若者が志願兵制から徴兵制へ移行する時期に動員されたため、強制性が強く、抵抗も大きかったのが特徴です。
朝鮮人学徒兵の動員過程に関する研究としては、姜徳相(カンドクサン)『朝鮮人学徒出陣』(岩波書店、1997年)があります。新聞資料と回顧録を丹念に分析することで、強制動員と抵抗の実態の詳細を明らかにしています。
朝鮮人学徒兵は、1943年10月、日本人学生の徴兵猶予の停止措置が植民地の学生にも適用される形で動員されました。形の上では志願兵だったため、受付開始直後は大部分の学生が忌避。しかし朝鮮総督府の志願勧誘政策により、多くの学生が志願を強いられることになりました。
勧誘政策の第一は、志願手続きの簡素化です。手続きを学校長のもとで一元化し、修学地以外での志願・電報志願・代理志願を許可。既卒者も適格化し、締め切り後の受け付けも許可するなど、さまざまな改変を行いました。第二は、地縁・血縁関係の利用です。翼賛委員会、国民総力朝鮮連盟、各大学・高専、マスメディア、朝鮮奨学会、協和会などを総動員しました。そして第三に、警察力の動員です。
その結果、43年11月、学徒兵は朝鮮内では96%、帰省者(日本で学徒動員を知り忌避のため朝鮮に戻ったものの志願させられた人)は93%の高い志願率を出しました。同年12月に徴兵検査が行われ、翌年1月20日に入営。志願しない者は徴用され労働現場に動員されました。
入隊後は、朝鮮、日本、中国などの各部隊に分散配置されますが、朝鮮内の部隊では軍隊内の反乱や脱走が相次ぎました。中国戦線では脱営して独立軍に参加する者も多くいました。
学徒兵といえば、戦没学生の手記『きけわだつみのこえ』が有名ですが、ここに朝鮮人学徒兵の手記は含まれていません。当時、朝鮮人が本心を書き残すことは困難でした。彼らが語り出すのは解放(日本の敗戦)後で、韓国で出版された文学作品や回顧録にその一端が垣間見られます。



軍事動員された朝鮮人日本兵の入営記念写真。この中の一人・印金寿さんはその後ニューギニアで死亡(「対日抗戦期動員被害調査および国外強制動員犠牲者等支援委員会」作成の資料集から)


韓国在住の元学徒兵の団体「一・二〇同志会」がまとめた学徒兵の回顧録

狂ったふりをし 戦死をのがれる
以下は、回顧録をもとに、私が証言を聞き取ったものです。学徒兵の視点からもう一度この時代を見てみましょう。
許相燾(ホサンド)氏は、1923年、慶尚北道慶山郡に生まれ、独立運動家の祖父の下で育ちました。日本に留学した43年10月、中央大学法科1年次に学徒動員となります。朝鮮へ帰省して伯父の家に隠れますが、警察が祖父を拷問したため出頭し、願書から「志願」の2字を消すことを条件に母印を押しました。
選考の結果は甲種合格(第一級の順位)。壮行会では神社の玉砂利を投げて抵抗しました。44年1月20日、第20師団歩兵第80連隊(朝鮮第24部隊)に入営。歩兵で階級は2等兵。朝鮮人学徒兵は28人いました。初年兵訓練では何をしても殴られ、朝鮮人は露骨にいじめられました。
入営から3カ月後の一期検閲で1等兵となり、勧誘を受け幹部候補生試験を受けますが、わざと間違え落第。初年兵訓練後は、炊事場や物干し場に集まり脱出計画を企てました。44年7月に1人、8月に6人が脱出しますが、許氏自身は当日は寝ずの番となり皆が逃げるのを見送ります。捕まった者は小倉刑務所に収容されました。
44年11月、許氏ら2人に転属命令がありますが、気が狂ったふりをして医務室に運ばれ、数カ月間営倉(懲罰房)に入りました。もう一人は「南方」へ送られ輸送船の撃沈で戦死します。45年2月、本土決戦準備のため第96師団歩兵第293連隊に編成され、45年3月、済州島へ移動。そこで解放を迎えました。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年7月27日付掲載


日本人も学徒徴兵されましたが、朝鮮の学徒も同様に徴兵されたのですね。
逃亡を試みるものや、狂った振りをして戦地に行くのを免れるとか。
なかなか、したたかだったのですね。
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安保改定60年 第3部② 駐留経費めぐる「どう喝の論理」 「撤退」かざし「4.5倍払え」

2020-07-28 08:54:26 | 平和・憲法・歴史問題について
安保改定60年 第3部② 駐留経費めぐる「どう喝の論理」 「撤退」かざし「4.5倍払え」
「(日本からの)80億ドル(約8500億円)と(韓国からの)50億ドルを得る方法はすべての米軍を撤退させると脅すことだ」。ボルトン前大統領補佐官(国家安全保障担当)が6月に刊行した「回顧録」で、トランプ米大統領の発言が暴露され、衝撃を与えました。

「世界の支配者」
トランプ氏の念頭にあるのは、来年3月に期限が切れる在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)特別協定。「応じなければ米軍を撤退させる」と脅して、現在の年約2000億円を、一気に4・5倍の8500億円まで引き上げようという荒唐無稽な要求ですが、その深淵には、戦後、「世界の支配者」としてふるまってきた米国の同盟国に対する「どう喝の論理」が貫かれています。
第2次世界大戦の勝者となった米国は戦後、地球規模で基地・同盟ネットワークを広げ、侵略と干渉のテコにしてきました。同時に、「西側世界を守るため」であるという大義名分を掲げ、同盟国に集団的自衛権の行使や兵たん支援、軍事費の引き上げといった、「負担分担」を要求してきました。
これに拍車がかかったのが1970年代です。ベトナム戦争敗北、石油ショックなどで米国の地位が相対的に低下すると、米議会を中心に「安保ただのり」論が噴出。やり玉にあがったのが日本でした。「対日貿易赤字」を背景に、78年度の「思いやり予算」導入、87年度の「思いやり予算特別協定」と、米側の要求を次々にのまされました。
米国は韓国にも経費負担を要求。91年、「米韓防衛費分担特別協定」(SMA)が導入され、基地従業員の労務費や施設建設費などを韓国側が負担。さらに95年以降、米国防総省は「共同防衛に対する同盟国の貢献度」報告を公表し、同盟国に「貢献度」を竸わせてきました。



米在外基地で最も資産価値が高い基地の一つ、米空軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)

分担原則を転換
これを新たな段階に引き上げようと狙っているのがトランプ氏です。「回顧録」によれば、同盟国が米軍駐留経費の全額を支払い、さらに上乗せしようという「コストプラスX%」という方式を長年温めていたといいます。米国と同盟国が米軍駐留経費を「負担分担」する従来の原則から、同盟国が全額負担し、さらに課金するー。驚くべき強欲ぶりです。
最初は「プラス25%」だったのが、最終的に「プラス50%」となり、その結果、韓国は従来の5倍、日本は4・5倍という数字になったといいます。そこには、「核の傘」提供費も含まれているとの報道もあります。日本に先立ち、この「コストプラス50%」方式に最初に直面したのが韓国でした。


米軍「思いやり予算」韓国に「5倍増」要求 「次は日本だ」米大統領前補佐官警告
トランプ氏 支払い求める

韓国版「米軍思いやり予算」である「米韓防衛費分担特別協定」(SMA)の期限は2018年12月でした。しかし、交渉はまとまらず、期限が1年延期されました。
ボルトン前大統領補佐官の回顧録によれば、19年4月、トランプ米大統領は訪米した文在寅大統領との昼食会で、「(韓国への)米軍駐留経費は50億ドルかかり、韓国からのテレビ輸入で、われわれは毎年40億ドル失っている」と述べ、従来の5倍となる「年50億ドル」の負担を正式に要求しました。
さらにトランプ氏は同年6月30日、G20大阪サミットを経て訪韓し、板門店の軍事境界線上で北朝鮮の金正恩国務委員長と電撃会談した際も、文氏に「50億ドル」をゴリ押ししたといいます。
トランプ氏は、「われわれは韓国を守るために40億ドルを失っている。北朝鮮は核開発を進めており、もし米国が朝鮮半島にいなければ深刻な結果になっただろう」「私は金正恩と会うことができ、韓国を救った」と述べ、「支払い」を要求しました。
トランプ氏の姿勢は傲慢そのものです。しかし、「守ってやっている」という思いあがった発想は、戦後、米国が一貫して持ち続けてきたものです。



米在外基地で最も資産価値の高い基地の一つ、米海軍横須賀基地(米海軍ウェブサイトから)

激しい米韓交渉
米韓の駐留経費負担をめぐっては、文氏は、すでに韓国は相応の負担に応じているとして、5倍増を強く拒否。結局、19年末になっても交渉はまとまらず、協定の期限が切れたため、在韓米軍基地の従業員が無給状態に追い込まれます。やむなく、韓国政府は20年末まで、従業員の給与全額を支払うため、約2億ドルを追加負担することで合意しました。
さらに7月に入り、米メディアなどで「在韓米軍撤退」論が浮上。「駐留経費50億ドル」をめぐり、米韓の激しい攻防が続いていることがうかがえます。
韓国に加え、日本での駐留経費の大幅増の実現を命じられたボルトン氏は19年7月下旬、日本を訪問。谷内正太郎国家安全保障局長(当時)に、現行の約4・5倍となる「思いやり予算」年80億ドル(約8500億円)を、伝達しました。
新たな「思いやり予算」特別協定の交渉の開始時期をめぐり、河野太郎防衛相は「秋口」との見通しを示しています。しかし、ボルトン氏は谷内氏に「80億ドル」を伝達した時点が、「交渉の始まり」との認識です。米政府はすでに、「4・5倍増」要求を固めているとみられ、厳しい交渉になることは避けられません。
ボルトン氏は、こう警告しています。「韓国の次は日本だ」



G20大阪サミットで米中首脳会談に臨むトランプ大統領(左端)とボルトン前大統領補佐官(左から3人目)=米ホワイトハウス撮影

駐留を乞う日本
米国は海外に米軍を駐留させる「前方展開戦略」を維持しつつ、1991年のソ連崩壊以降、海外基地を段階的に削減しています。
しかし、日本は削減どころか、沖縄県名護市辺野古の新基地建設など、自らの負担で基地を増強しており、むしろ米軍を引き留めているのが現状です。
こうした姿勢をあらためない限り、誰が米大統領になろうと、「負担増に応じなければ米軍を撤退させる」とのどう喝が、繰り返し用いられることは目に見えています。


日本は協議の場で主導権の行使を
元在沖縄米海兵隊政務外交部次長 ロバート・エルドリッヂ氏
ボルトン氏の回顧録で明らかになった、トランプ米大統領の日本に対する在日米軍駐留経費の負担増額の要求は、トランプ氏が大統領選挙の候補者だった2015年当時から繰り返し主張してきたものです。当初はあまり注目されていませんでしたが、予備選・党員集会が多くの州で行われる「スーパi・チューズデー」でトランプ氏が共和党の候補者として優勢になったことで、彼の発言は現実味をおびました。
直後に行われた米紙ニューヨーク・タイムズのインタビュー(16年3月)で、トランプ氏は日米同盟について「非常に不公平だ」とし、日本と韓国が駐留費の増額負担をしないのであれば、米軍を撤退させる意向を示しました。米国が「世界の警察」になるには限界があるとして、日本と韓国が核兵器を持ち自衛することを促したことも重大です。私は、このままでは日本が大変なことになると直感しました。

威圧交渉の背景
トランプ氏は当選後、駐留費に関して何も触れませんでしたが、19年にG20で来日した際の記者会見(6月29日)で、再び日米同盟は不公平だと指摘。日米同盟60周年の今年、日本の同盟に対するさらなる貢献を期待する趣旨の声明を発表しました。駐留経費特別協定が更新される来年3月に交渉をまとめなければならないことが背景にあります。
トランプ氏は同盟国との交渉において、安全保障よりも通商的・経済的レンズで物事を見ています。彼がビジネス業界に入った1970年代、日本は電化製品や車などの輸出産業が栄え、80年代には米国のビルやゴルフ場を買い上げ、米国を抜いて経済のトップになるのではないかと、トランプ氏をはじめ、多くの米国民が恐れていました。その上、当時、日本は同盟への貢献が少ないことから“ただ乗り者”とみなされ、批判を受けていました。
彼が大統領になる前に、最後に日本を訪れたのはその時期の90年2月でした。同年に起こったイラクのクウェート侵攻で、日本は多国籍軍に自衛隊を参加させず、経済的支援のみをおこなったため、一層の批判をあびました。それをきっかけに、トランプ氏にとって日本がお金をだす“ATM”のような印象が濃くなり、それが後の日米交渉に影響したと考えられます。

“トランプ氏流”
トランプ氏は、同盟国が十分な貢献をせず、米国の経済が壊滅状態にあると、一貫して主張しています。今はそれほどの根拠があるとは思えませんが、彼はファクトを気にしない人物です。
トランプ氏は大統領になって約4年がたち、日本が貢献をしていることはもうわかっているはずですが、交渉をするために、回顧録にあるような発言をしています。80億バという金額にも具体的な理由はなく、なんでも大胆、大げさにやるのがトランプ氏独自のやり方です。
日本政府は、協議の場で主導権をしっかり行使すべきです。私の経験上、在日米軍のお金の使い方は下手で無駄が多い。外務省、財務省などの省庁だけでなく、与野党議員も協議に参加させ、無駄遣いを解消しなければ払わない、削減すると主張すべきです。(一部、近刊の『基地と税金』〈新潮新書〉から引用)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年7月27日付掲載


韓国版の思いやり予算の増額要求。
板門店の軍事境界線上で北朝鮮の金正恩国務委員長と電撃会談。韓国側に借りを作った形での要求。
それでも韓国はすんなりとOKを出しません。
日本がどういう態度で応じるかが問われています。
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安保改定60年 第3部① 「思いやり」開始43年 米軍に税金24兆円

2020-07-27 12:53:45 | 平和・憲法・歴史問題について
安保改定60年 第3部① 「思いやり」開始43年 米軍に税金24兆円
この国はいったい、誰を思いやっているのか―。在日米軍の活動経費のうち、日本側負担分(在日米軍関係経費)が、米軍「思いやり予算」の計上が始まった1978年度から2020年度までの累計で、約23兆9500億円に達することが分かりました。外務省・防衛省の資料に基づいて本紙が計算しました。世界に例のない異常な経費負担の構造をシリーズで検証していきます。

基地の地代や補償などを除き、「日本に米軍を維持するためのすべての経費は、日本に負担をかけないで米国が負担する」―。日米地位協定24条には、こう明記されています。

1.4兆円に
これを素直に解釈すれば、日本が負担するのは基地の地代や地主への補償、周辺自治体への交付金などに限られるはずです。しかし、日本政府は米側の理不尽な要求に屈し続け、①「思いやり予算」(在日米軍駐留経費負担、78年度~)②「SACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)経費」(96年度~)③「在日米軍再編経費」(名護市辺野古の新基地建設など、2006年度~)という協定上も義務のない費目をなし崩し的に拡大。在日米軍関係経費は年8000億円規模まで膨張しました。
とりわけ、ここ数年は辺野古新基地建設費が大幅に増えており、経費負担を引き上げる最大の要因になっています。これまでに4236億円が計上されていますが、沖縄県は2兆5500億円かかると試算しています。
ボルトン前米大統領補佐官(国家安全保障担当)が6月に発売した回顧録で、トランプ米大統領が日本に「米軍経費年80億ドル」を要求していると暴露し、衝撃を与えました。
トランプ氏が念頭に置いているのは、来年3月に期限を迎える現行の「思いやり予算」特別協定です。同協定では、年間おおむね2000億円、5年で1兆円の支払いを定めていますが、これを4・5倍に拡大しようというものです。
仮にこの要求が通れば、年間約2000億円の「思いやり予算」が8500億円になり、在日米軍関係経費は総額1兆4000億円という、途方もない金額になります。




国民こそ
米軍「思いやり予算」拡大の一方、政府は1981年、「臨調行革」路線を持ち込み、医療・福祉・教育切り捨てに乗り出しました。新型コロナウイルスの感染拡大で苦難に直面する医療や国民生活を支援するため、かつてない財政出動が求められています。辺野古新基地建設も米軍「思いやり予算」も増額ではなく停止すべきです。思いやるべきは国民です。


米軍ぬきの安全保障戦略描けず
「思考停止」に陥り負担膨張


米軍への経費負担は日米安保体制の発足と同時に始まりました。
1952年4月28日に発効した旧日米安保条約に基づく日米行政協定25条に、米軍の輸送や役務・物資調達のため年1億5500万ドル相当の負担が明記されました。「防衛分担金」と呼ばれ、政府は53年度に620億円を計上。56年度までに2655億円を計上しています。
ただ、米軍への過剰な経費負担に国民の批判が集中。60年1月の安保改定に伴って締結された日米地位協定では、「防衛分担金」制度は廃止され、地代や補償、自治体への交付金などに限定しました。


在日米軍関係経費の構造
在日米軍再編経費米軍基地『移設』(辺野古新基地など)、自衛隊司令部移転、米軍再編交付金など
SACO関係経費軍基地『移設』(高江ヘリパッドなど)、訓練移転など
思いやり予算(在日米軍駐留経費負担)(特別協定分)・労務費(福利費)、提供施設整備(FIP)
・労務費(基本給)、光熱水費、訓練移転
提供普通財産借り上げ資産国有地の賃料
その他(総務省、厚生労働省)基地交付金、調整交付金など
在日米軍駐留経費周辺対策(防音など)、民公有地の賃料、移転、その他(漁業補償など)


7回延長
しかし、沖縄返還協定の交渉に関する71年6月9日の日米外相会談で、米側は表向きの返還費用3億2000万ドルとは別に、基地改修費6500万ドルなどを日本側に負担させるため、地位協定24条の「リベラルな解釈」を要求。国会で問題になった際、大平正芳外相(当時)は、地位協定の「リベラルな解釈」を「理解できる」と述べました(73年3月13日、衆院外務委員会)。これが、地位協定の解釈拡大による「思いやり予算」の源流といえるものです。
米側は77年、「円高・ドル安」を口実に、基地従業員の労務費分担を要求。福利費62億円の負担を合意し、78年度予算に計上されました。「思いやり予算」の出発点です。
ところが米側はそのわずか18日後、次の要求に踏み出しました。
在日米大使が本国に送った78年1月9日付公電は、「『大平解釈』が日本側で支配的になっている」とした上で、「われわれは追加的な計画、とくに住宅を日本側に提案するよう薦める。日本側がさらなる支援に対価を払うことは可能だ」と述べています(米研究機関ナショナル・セキュリティー・アーカイブ)。米側の狙い通り、日本は79年度から施設整備に着手。住宅や学校、娯楽施設、さらに滑走路や埠頭など戦闘関連施設まで着手しました。



在日米軍再編経費でつくられた米軍住宅地区「アタゴヒルズ」=山口県岩国市


「思いやり予算」で建設された沖縄・嘉手納基地のシェルター


土砂投入が強行される辺野古沿岸=2019年12月13日、沖縄県名護市(小型無人機で撮影)

やがて、「リベラルな解釈」さえ限界に達し、87年度からは「思いやり予算」特別協足を締結。①基地従業員の基本給②光熱水費③訓練移転費―と拡大しました。特別協定について、政府は「特例的、限定的、暫定的」としていますが、現在まで7回、延長を繰り返しています。
米国は95年、日本を含む同盟国による経費負担を「共同防衛」のための「責任分担」だとして正当化。同年から2004年まで「共同防衛に対する同盟国の貢献度」報告を公表し、「貢献度」を競わせてきました。
その中にあって、日本は労務費、施設建設費、光熱水費などの「直接支援」が3228億謎で、2番目に多い韓国(486億が)の約6・6倍と突出しています。(04年版)
「貢献度報告」は現在、刊行されていませんが、韓国政府の12年資料によれば、日本は4053億円。2番目に多い韓国(770億円)の5・3倍で傾向は変わっていません。
96年度から計上されたSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)経費は、米軍経費負担を新段階に引き上げました。沖縄の少女暴行事件を逆手に取り、「基地負担軽減」の口実で最新鋭の基地を建設するというものです。これが辺野古新基地問題の発端であり、2006年度から始まった在日米軍再編経費に引き継がれます。
米軍再編では岩国基地の滑走路沖合移設、国際的にも例のない、米領内(グアム)での基地建設など、「総額3兆円」とも言われる巨大な事業が盛り込まれ、米軍への経費負担が質量ともに飛躍しました。
こうして、地位協定にさえ規定されていない経費負担は、出発点の62億円から、今日では年間4000億円、累計で10兆円近くまで膨れ上がったのです。

抑止力?
日本はなぜ、これだけ米国言いなりに経費負担を拡大してきたのか。防衛省は、日本に対する武力攻撃が発生したとき、日米安保条約5条に基づいて共同対処を迅速に行うために米軍の駐留が不可欠だとしています。
しかし、在日米軍の大半は空母遠征打撃群や海兵遠征軍など、「日本防衛」とは無縁の遠征部隊で構成されています。朝鮮半島、インドシナ、中東への派兵を繰り返し、現在の最大の戦略目標は南シナ海での「中国抑止」です。日本政府はその足場を提供しているにすぎません。
それでも、政府は、在日米軍は「抑止力」であり、駐留米軍ぬきの安全保障戦略を描けないという「思考停止」に陥っています。とりわけ安倍晋三首相の日米同盟依存は歴代首相の中でも突出しています。そこにつけこみ、「日本からの米軍撤退」でどう喝し、駐留経費の大幅増を勝ち取ろう―。そう考えたのが、ドナルド・トランプ氏でした。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年7月20日付掲載


日米安保条約でも地位協定でも義務付けられていない「思いやり予算」
1978年に始まって43年間で24兆円。
住宅や学校、娯楽施設、さらに滑走路や埠頭など戦闘関連施設なども含まれます。
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危機の経済 識者は語る③ 世界かく乱する米政権

2020-07-25 08:23:55 | 経済・産業・中小企業対策など
危機の経済 識者は語る③ 世界かく乱する米政権
龍谷大学名誉教授 夏目啓二さん

5Gで世界をリードする中国のファーウェイの技術開発力と世界的な影響力に対してトランプ政権は、2018年8月、政府機関がファーウェイ製品などを使用することを禁じる国防権限法を制定しました。さらに、同盟国に対してもファーウェイの5Gの不使用を呼び掛けました。5Gの次世代通信技術の重要性と安全保障上の理由から、米国のファーウェイに対する排除網は、「新しい経済冷戦」の始まりといわれました。
しかし、19年3月の段階では、欧州の同盟国に対する米国の対ファーウェイ排除網の構築は、成功していません。米国に追従したのは、オーストラリアと日本だけでした。
しかし、20年6月、英国政府内でも、次世代通信規格の5Gからファーウェイを排除すべきだとの声が高まりました。新型コロナウイルスの感染拡大で、中国への不信感を急速に増しているからです。さらに中国が香港への統制を強める「香港国家安全法」の制定を決めたこともあり、香港の旧宗主国である英国は中国に対して寛容な態度を取りづらくなったからです。



北京のファーウェイ店内=7月14日(ロイター)

米が輸出禁止
ファーウェイは従来、半導体を外部から調達していましたが、04年に半導体の設計・開発を手掛ける海思半導体(ハイシリコン)を設立し、内製化を進めてきました。
ハイシリコンは現在、スマホの中央演算処理装置(CPU)や5G用基地局で使う半導体などの開発で世界トップクラスの技術を持ちます。ファーウェイがスマホ事業で使うCPUの自社設計比率は16年の45%から、19年には75%まで上昇しました。(「日経」5月23日付)
ただ、生産については外部委託に頼り、ハイシリコンが設計・開発した半導体は主に台湾積体電路製造(TSMC)に生産を委託する体制を続けてきました。特にファーウェイの旗艦スマホのCPUや5G用基地局に使うCPUはTSMC製です。
ところが、米国政府は20年5月15日、米国製の製造装置を使った半導体についてファーウェイ向けの輸出を事実上禁じると発表しました。TSMCは米国政府の規制に応じ、すでに受注済みの半導体はファーウェイに出荷するが、新規受注は止めました。
このためファーウェイは、台湾の聯発科技(メディアテック)と中国国有の紫光展鋭(UNISOC)との連携を深め、半導体を確保する方針です。ファーウェイはすでに、中国の半導体受託生産大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)にも半導体チップの生産を一部委託しています。

日本にも影響
19年末までは、英国政府は米国からファーウェイ完全排除の圧力があっても応じませんでした。しかし、英国政府が、コロナ禍を期にファーウェイ排除に転ずれば、自動運転など次世代技術の基盤となる5G整備が遅れる可能性もあります。さらに、ファーウェイを採用する欧州各国の判断にも影響しかねません。
また、ファーウェイから半導体を製造受託してきた世界最大の台湾のTSMCの受注停止は、その受注規模の大きさから考えてTSMCの雇用問題を生じる可能性があります。
最後に、米国のファーウェイ排除は、日本の半導体装置メーカーに影響を及ぼします。日本の半導体製造装置の中国向け輸出はここ数年急増しています。米国からの禁輸で窮地に立つ中国が半導体を国産化するカギを握るのは日本企業であるからです。
また、米国のファーウェイ排除は、日本のスマホ部品メーカーにも影響を及ぼします。米国商務省によるファーウェイ向け部品の禁輸により、ファーウェイのスマホから米国製部品が減少し(約1%)、中国製部品(約42%)、日本製部品(約35%)への依存度(約77%)が高まっているからです。
米中対立に突き進むトランプ政権は、世界経済をかく乱します。米国民の選択が問われる20年11月の大統領選挙。世界は、注視しています。日本企業と政府もまた、自主的な判断を求められています。
(この項おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年7月23日付掲載


アメリカが中国のスマホメーカー・ファーウェイを排除をする。一方のファーウェイは、部品の内需化を進める。
日本の部品メーカーも密接に関わっている。自主性が求められます。
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危機の経済 識者は語る② ファーウェイの猛追

2020-07-24 10:27:32 | 経済・産業・中小企業対策など
危機の経済 識者は語る② ファーウェイの猛追
龍谷大学名誉教授 夏目啓二さん

中国企業ファーウェイ(華為技術)が2020年3月に発表した19年12月期決算は、純利益が626億元(約9600億円)、売上高は8588億元(約12兆8820億円)で、ともに過去最高を更新しました。一方、ライバル企業の米国最大のスマホメーカー、アップルの19年9月期の経営業績は、純利益552億ドル(約5兆9000億円)、売上高2601億ドル(約27兆8300億円)でした。ファーウェイは、売上高規模でアップルに猛追しています。
ファーウェイは19年6月に米国政府から制裁を科せられ、米国企業などからソフトウエアや部品を調達することを制限されています。このため米国製ソフトを採用している海外向けスマホの販売が伸び悩みました。同社によると、19年にスマホなど消費者向け事業の海外売上高は少なくとも100億ドル(1兆円超)減の影響を受けた、といいます。

世界第2位に
ファーウェイの19年の事業別売上高は、スマホなどが4673億元(約7兆円)、基地局などが2966億元(約4兆4400億円)でした。
売上高構成でみると、スマホが54%、基地局が35%で、ファーウェイの主力事業はスマホであるといえます。しかし、5年前の14年、売上高構成では同社の主力事業は、スマホが747億元の26%、基地局が1914億元の66%の通信機器事業だったのです。
ファーウェイは、この最近5年間に4Gの通信機器メーカーから、スマホメーカーへと事業転換を果たしたといえます。スマホの事業規模は、5年前の747億元(14年)の6・3倍、4673億元(19年)へと急成長したのです。スマホの世界出荷台数は2億4千万台で、米国のアップルを抜いて世界第1位のサムスン(韓国)に次ぎ世界第2位となりました。




GAFA排除
中国国内のスマホ市場シェア(占有率)を見ると、12年に第1位の座にあったのはアップルでした。しかし、アップルは、5年後の17年には上位4社からその姿を消し、5位に転落しました。第1位はファーウェイで、同社に続いて、オッポ、ビポ、シャオミなど低価格の中国スマホメーカーが占めました。
アップルが中国市場で競争力を失ったのは、中国製スマホの安い価格競争力と自撮りカメラの機能だけが原因ではありません。インターネット普及期には、中国でも外国のデジタル企業が歓迎されましたが、08年の北京五輪を機に中国の指導者が言論統制を強めました。
フェイスブックとツイッター、ユーチューブは09年にブロックされ、グーグルは翌10年、検索結果の検閲に否定的態度を表明した後にブロックされました。その結果、中国の検索市場はバイドゥが独占しました。アリババが米国の競売大手のイーベイを打ち負かしました。
米国のGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの頭文字)の検索サービス、スマホ、SNS(交流サイト)、ネット通販を利用できないアップルのスマホに市場価値、競争力はありませんでした。かわって、中国のBATH(バイドゥ〈百度〉、アリババ集団、テンセント、ファーウェイの頭文字)の検索サービス、ネット通販、SNS、スマホの利用が普及しました。
ついに、19年にアップルの中国市場での売上不振が起きました。アップル・ショックといわれます。同時に、トランプ政権による中国の通信機器企業ZTE、ファーウェイたたきが先鋭化しました。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年7月22日付掲載


世界を席巻するGAFAですが、中国市場からは追い出されているんですね。
一方の中国のファーウェイもアメリカ市場には食い込めていない。
お互いに住み分けってところでしょうか。
ところで、一時期はバイドゥ(百度)のフリーソフトが良く出ていましたが、最近はあまりみかけませんね。

コメント
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