2021年総選挙 目で見る経済⑫ 賃上げ 中小企業支援がカギ
自民党は総選挙の公約に「『労働分配率の向上』に向けて、賃上げに積極的な企業への税制支援を行います」と掲げています。どのような税制支援をするのか具体策は明らかではありませんが、賃上げ企業への法人税減税を指すとみられます。しかし、この政策では多くの労働者にとって賃上げの恩恵が受けられないどころか、労働者間の格差を広げ、分断を引き起こしかねません。
生活の底上げ
国税庁「民間給与実態統計調査」から資本金規模別に平均賃金をみると、資本金10億円未満の企業の労働者は資本金10億円以上の企業の労働者にくらべ7割~8割程度の賃金です。とりわけ資本金2000万円未満の企業は72%、1億円未満の企業も74%という水準です(グラフ①)。
企業で働く雇用者数の7割を占める中小企業での賃上げが国民生活の底上げや「労働分配率の向上」にとっても重要となります。そのために有効なのは中小企業に手厚く支援しながら最低賃金を大幅に引き上げることです。
政府はすでに税制や補助金の形で賃上げ支援策を行っています。たとえば中小企業の最賃引き上げのために「業務改善等助成金」があります。2021年度の予算は12億円。20年度の利用は626件にとどまりました。安倍晋三政権が打ち出した「賃上げ減税」は19年度実績で2269億円。そのうち中小企業への適用は6割ですが数でいえば中小企業全体の4%程度です。設備投資への助成や減税では7割が赤字となっている中小企業には届かないのです。
負担分の軽減
「中小企業が賃上げのための支援策として政府に要望しているのは「社会保険料の使用者負担分の軽減」です。大阪商工会議所が会員の中小企業から集めたアンケート(「賃金調達及び最低賃金引き上げの影響に関する調査」)によると、「最低賃金引き上げの悪影響緩和のため政府に望む政策」でもっとも多かったのは「社会保険料の使用者負担分の軽減」で54・1%でした(グラフ②)。
しかもこの政策を求めているのはより小さな企業ほど高い割合となっており、資本金1000万円以下の企業では58・7%と、資本金5000万円超3億円以下の企業の36・1%を20ポイント以上、上回りました。
企業規模が小さいほど社会保険料の使用者負担は重くのしかかっています。中小企業庁の試算では、売り上げ総利益に占める社会保険料負担の割合(17年)は大企業が9・5%、中堅企業が13・3%、中小企業が13・6%という結果になりました。
米国では、連邦最低賃金を41%引き上げるために約8800億円の減税を実施しました。フランスは、全国一律最賃制にするために、約2兆2800億円の使用者負担を軽減。韓国でも約3000億円の支援を実施しました。直接支援は今や世界の潮流です。
日本共産党は、海外での取り組みにも学びながら、予算規模を抜本的に拡充し、労働者を雇用すれば赤字でも負担する社会保険料の事業主負担分を、賃上げ実績に応じて減免する中小企業賃上げ支援制度をつくることを公約に掲げています。
同時に適正な単価や納入価格の保障、過度な競争の規制、「公契約法」「公契約条例」の実現とあわせ、中小企業が最低賃金を引き上げられる環境をつくることも掲げています。(清水渡)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年10月29日付掲載
企業で働く雇用者数の7割を占める中小企業での賃上げが国民生活の底上げや「労働分配率の向上」にとっても重要となります。そのために有効なのは中小企業に手厚く支援しながら最低賃金を大幅に引き上げること。
「賃上げ減税」というと、いかにもやっている感がありますが、中小企業の大半は赤字経営のためメリットはありません。
社会保険料の半額の使用者負担を軽減することが一番効果があります。賃金を上げると、それに伴って社会保険料もあがりますからね。
自民党は総選挙の公約に「『労働分配率の向上』に向けて、賃上げに積極的な企業への税制支援を行います」と掲げています。どのような税制支援をするのか具体策は明らかではありませんが、賃上げ企業への法人税減税を指すとみられます。しかし、この政策では多くの労働者にとって賃上げの恩恵が受けられないどころか、労働者間の格差を広げ、分断を引き起こしかねません。
生活の底上げ
国税庁「民間給与実態統計調査」から資本金規模別に平均賃金をみると、資本金10億円未満の企業の労働者は資本金10億円以上の企業の労働者にくらべ7割~8割程度の賃金です。とりわけ資本金2000万円未満の企業は72%、1億円未満の企業も74%という水準です(グラフ①)。
企業で働く雇用者数の7割を占める中小企業での賃上げが国民生活の底上げや「労働分配率の向上」にとっても重要となります。そのために有効なのは中小企業に手厚く支援しながら最低賃金を大幅に引き上げることです。
政府はすでに税制や補助金の形で賃上げ支援策を行っています。たとえば中小企業の最賃引き上げのために「業務改善等助成金」があります。2021年度の予算は12億円。20年度の利用は626件にとどまりました。安倍晋三政権が打ち出した「賃上げ減税」は19年度実績で2269億円。そのうち中小企業への適用は6割ですが数でいえば中小企業全体の4%程度です。設備投資への助成や減税では7割が赤字となっている中小企業には届かないのです。
負担分の軽減
「中小企業が賃上げのための支援策として政府に要望しているのは「社会保険料の使用者負担分の軽減」です。大阪商工会議所が会員の中小企業から集めたアンケート(「賃金調達及び最低賃金引き上げの影響に関する調査」)によると、「最低賃金引き上げの悪影響緩和のため政府に望む政策」でもっとも多かったのは「社会保険料の使用者負担分の軽減」で54・1%でした(グラフ②)。
しかもこの政策を求めているのはより小さな企業ほど高い割合となっており、資本金1000万円以下の企業では58・7%と、資本金5000万円超3億円以下の企業の36・1%を20ポイント以上、上回りました。
企業規模が小さいほど社会保険料の使用者負担は重くのしかかっています。中小企業庁の試算では、売り上げ総利益に占める社会保険料負担の割合(17年)は大企業が9・5%、中堅企業が13・3%、中小企業が13・6%という結果になりました。
米国では、連邦最低賃金を41%引き上げるために約8800億円の減税を実施しました。フランスは、全国一律最賃制にするために、約2兆2800億円の使用者負担を軽減。韓国でも約3000億円の支援を実施しました。直接支援は今や世界の潮流です。
日本共産党は、海外での取り組みにも学びながら、予算規模を抜本的に拡充し、労働者を雇用すれば赤字でも負担する社会保険料の事業主負担分を、賃上げ実績に応じて減免する中小企業賃上げ支援制度をつくることを公約に掲げています。
同時に適正な単価や納入価格の保障、過度な競争の規制、「公契約法」「公契約条例」の実現とあわせ、中小企業が最低賃金を引き上げられる環境をつくることも掲げています。(清水渡)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年10月29日付掲載
企業で働く雇用者数の7割を占める中小企業での賃上げが国民生活の底上げや「労働分配率の向上」にとっても重要となります。そのために有効なのは中小企業に手厚く支援しながら最低賃金を大幅に引き上げること。
「賃上げ減税」というと、いかにもやっている感がありますが、中小企業の大半は赤字経営のためメリットはありません。
社会保険料の半額の使用者負担を軽減することが一番効果があります。賃金を上げると、それに伴って社会保険料もあがりますからね。