コロナ後遺症 立ち上がった患者たち(下) 実態周知へ国を動かす
コロナ後遺症に苦しむ患者や家族が昨年「全国コロナ後遺症患者と家族の会」(代表・伊藤みかさん=仮名=)を立ち上げてから間もなく半年。着実にとりくみを広げています。
理解不足に直面
「社会が平常に戻るなか、コロナ後遺症の患者は置き去りにされています」。3月10日、東京都の渋谷駅前。国にコロナ後遺症への医療の拡充や経済支援などを求め、署名活動を行う伊藤さんらの姿がありました。約4千人分の署名を厚生労働省に提出しました。
伊藤さん(40代)は2022年8月、医療ソーシャルワーカーとして勤務していた病院でクラスター(感染者集団)が発生し、自身も感染しました。強いけん怠感や記憶障害、集中力の低下、頭痛など多くの症状を抱えながら「数日出勤しては1、2日休むことを繰り返した」と話します。後遺症への職場の理解が得られず、昨年8月に転職しました。しかし翌月にクラスターが発生し、再感染して後遺症が悪化。やむなく退職しました。
労災申請の過程で労災指定病院が制度にのっとらない対応をし、退職した事業所がそれを面倒だと感じて途中から必要な書類にサインしなくなるなど、関係機関の理解不足に直面。「後遺症の体をひきずりながらつらい思いをしていた」と伊藤さん。
10月、後遺症のことをSNSに書き込むと多くの声が寄せられ「境遇や症状、社会資源の情報を共有できて救われた」と話します。
政治や行政が患者の実態に沿って動くようにしていかなければと、患者や家族との交流や国会議員要請を通じて会の結成に至りました。「アメリカ、イギリス、フランス、ドイツなどでは患者団体が熱心に活動しています。日本に会がなかったことにも驚いた」といいます。
重い病状を押して国の支援拡充を訴える伊藤みかさん=3月、東京都渋谷駅前
改善へつなげる
この間、会がオンラインで実施したアンケート(157人回答)で、労災認定について約半数が申請から「4カ月以上」かかったと回答。経済的支援について66%が「制度の谷間に落ちている」と答え、うち51%が現状を「預貯金を切り崩している」としています。
会は12月、武見敬三厚労相と面会。患者の深刻な実態を訴え、同省に会に対応する窓口ができました。
伊藤さんはコロナ後遺症が重症化し、暮れに筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の診断を受けました。体調を考え、基本的にネットなどの非対面のツールを使って各方面と施策の協議などを行っています。
この間の協議では、厚労省が示した後遺症に対応する医療機関のリストに出ている所で、「まともに対応してくれない」「検査代だけ取られて他の病院に行くよういわれた」などの多くの声を伝え、複数の医師や国会議員、メディアの後押しで改善へつなげています。
また、同省の治療と仕事の両立支援のガイドラインで、「コロナ後遺症も対象とすることを明らかにしてホームページに掲載させたことは大きく、企業側や社会へも周知していきたい」と。
「後遺症外来が少なく、医療の地域間格差が大きいなど課題は多いです。患者や家族の実態を厚労省や文科省、国会、自治体と共有し、できるところから変えるよう働きかけを続けたい」と話します。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年4月30日付掲載
「社会が平常に戻るなか、コロナ後遺症の患者は置き去りにされています」。3月10日、東京都の渋谷駅前。国にコロナ後遺症への医療の拡充や経済支援などを求め、署名活動を行う伊藤さんらの姿が。
この間の協議では、厚労省が示した後遺症に対応する医療機関のリストに出ている所で、「まともに対応してくれない」「検査代だけ取られて他の病院に行くよういわれた」などの多くの声を伝え、複数の医師や国会議員、メディアの後押しで改善へ。
また、同省の治療と仕事の両立支援のガイドラインで、「コロナ後遺症も対象とすることを明らかにしてホームページに掲載させたことは大きく、企業側や社会へも周知していきたい」と。
コロナ後遺症に苦しむ患者や家族が昨年「全国コロナ後遺症患者と家族の会」(代表・伊藤みかさん=仮名=)を立ち上げてから間もなく半年。着実にとりくみを広げています。
理解不足に直面
「社会が平常に戻るなか、コロナ後遺症の患者は置き去りにされています」。3月10日、東京都の渋谷駅前。国にコロナ後遺症への医療の拡充や経済支援などを求め、署名活動を行う伊藤さんらの姿がありました。約4千人分の署名を厚生労働省に提出しました。
伊藤さん(40代)は2022年8月、医療ソーシャルワーカーとして勤務していた病院でクラスター(感染者集団)が発生し、自身も感染しました。強いけん怠感や記憶障害、集中力の低下、頭痛など多くの症状を抱えながら「数日出勤しては1、2日休むことを繰り返した」と話します。後遺症への職場の理解が得られず、昨年8月に転職しました。しかし翌月にクラスターが発生し、再感染して後遺症が悪化。やむなく退職しました。
労災申請の過程で労災指定病院が制度にのっとらない対応をし、退職した事業所がそれを面倒だと感じて途中から必要な書類にサインしなくなるなど、関係機関の理解不足に直面。「後遺症の体をひきずりながらつらい思いをしていた」と伊藤さん。
10月、後遺症のことをSNSに書き込むと多くの声が寄せられ「境遇や症状、社会資源の情報を共有できて救われた」と話します。
政治や行政が患者の実態に沿って動くようにしていかなければと、患者や家族との交流や国会議員要請を通じて会の結成に至りました。「アメリカ、イギリス、フランス、ドイツなどでは患者団体が熱心に活動しています。日本に会がなかったことにも驚いた」といいます。
重い病状を押して国の支援拡充を訴える伊藤みかさん=3月、東京都渋谷駅前
改善へつなげる
この間、会がオンラインで実施したアンケート(157人回答)で、労災認定について約半数が申請から「4カ月以上」かかったと回答。経済的支援について66%が「制度の谷間に落ちている」と答え、うち51%が現状を「預貯金を切り崩している」としています。
会は12月、武見敬三厚労相と面会。患者の深刻な実態を訴え、同省に会に対応する窓口ができました。
伊藤さんはコロナ後遺症が重症化し、暮れに筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の診断を受けました。体調を考え、基本的にネットなどの非対面のツールを使って各方面と施策の協議などを行っています。
この間の協議では、厚労省が示した後遺症に対応する医療機関のリストに出ている所で、「まともに対応してくれない」「検査代だけ取られて他の病院に行くよういわれた」などの多くの声を伝え、複数の医師や国会議員、メディアの後押しで改善へつなげています。
また、同省の治療と仕事の両立支援のガイドラインで、「コロナ後遺症も対象とすることを明らかにしてホームページに掲載させたことは大きく、企業側や社会へも周知していきたい」と。
「後遺症外来が少なく、医療の地域間格差が大きいなど課題は多いです。患者や家族の実態を厚労省や文科省、国会、自治体と共有し、できるところから変えるよう働きかけを続けたい」と話します。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年4月30日付掲載
「社会が平常に戻るなか、コロナ後遺症の患者は置き去りにされています」。3月10日、東京都の渋谷駅前。国にコロナ後遺症への医療の拡充や経済支援などを求め、署名活動を行う伊藤さんらの姿が。
この間の協議では、厚労省が示した後遺症に対応する医療機関のリストに出ている所で、「まともに対応してくれない」「検査代だけ取られて他の病院に行くよういわれた」などの多くの声を伝え、複数の医師や国会議員、メディアの後押しで改善へ。
また、同省の治療と仕事の両立支援のガイドラインで、「コロナ後遺症も対象とすることを明らかにしてホームページに掲載させたことは大きく、企業側や社会へも周知していきたい」と。