消費税増税と自民党型政治⑤ 財務省も認めた穴埋め
「これまでの税制改革で、直間比率自体を具体的にこういうふうに設定して、それに向かって税制改革をやったということはあまりないわけでありまして、所得税や法人税を中心に減税をして、その代わりに消費税を入れさせていただいたということであろうかと思います」
財務省の古谷一之主税局長(現国税庁長官)は、2009年10月27日に開かれた政府税制調査会でこう発言しました。これまでの法人税減税の財源の穴埋めを消費税増税で行ってきたことを財務官僚自身が認めたのです。消費税は89年4月に税率3%で導入され、97年4月に5%へ引き上げられました。
一方、法人税(国税のみ)は89年に42%から40%へ引き下げ。翌90年には37・5%へ引き下げられました。そして98年に34・5%へ下げられ、翌99年には30%となりました。

萬歳章JA全中会長との懇談に臨む米倉弘昌日本経団連会長(中央)=2011年11月9日、東京都千代田区
民主党の公約
この法人税について民主党は、09年の総選挙で見直しを公約しました。マニフェストでは、「租税特別措置の抜本的な見直しを行いますが、これを進めて課税ベースが拡大した際には、企業の国際的な競争力の維持・向上などを勘案しつつ、法人税率を見直していきます」としていました。
租税特別措置とは、特定の企業に減税の恩恵がある税制上の措置のことです。代表的なものに研究開発減税があります。
総選挙で民主党が公約した租税特別措置の抜本的見直しを実施した後に、法人税減税を行うとした手順は、実際には守られることはありませんでした。
菅直人首相(当時)は10年10月1日の国会で、法人税について「年内に見直し案を取りまとめます」と所信表明を行いました。これを受け、政府税制調査会で議論が開始されました。税調では、法人税を5%引き下げた場合の減収(1・4兆~2・1兆円の見込み)の穴埋め財源として、「研究開発税制の大幅縮減」などの案が出されていました。
これに対し、経団連が猛烈に反発。米倉弘昌経団連会長は、早くも10月8日の記者会見でかみつきました。
「そもそも法人税の減税というのは、経済成長を促すために必要だというふうにわれわれは言っている。それを財源がないから課税ベースを拡大して、名目だけの法人税減税だと言われると、これはどういうことなのか」
経団連「困る」
民主党政権は、法人税減税の「目的」として「雇用拡大効果」を強調していました。政府税制調査会の12月16日の会合でも、菅首相は、「単に法人税を下げるというのではなくて、その法人の皆さんには、そのお金で雇用を拡大する、給料を上げる、あるいは国内投資を増やしていく」と希望を語っていました。
同調査会には、法人実効税率(国、地方)を5%引き下げた場合、最大で121万人の雇用維持効果がある、特に製造業では69万人の雇用維持効果がある、という試算すら示されていました。
「雇用拡大」についても米倉会長は、「資本主義でない考え方を導入されては困る」(12月13日)と反発。14日に官邸で行われた菅首相との会談でも、米倉会長は「(雇用拡大を)お約束するわけにはいかない」と拒否しました。
そして今…。パナソニック、ソニー、シャープ、NEC、日本IBMなど大手電機・情報産業を中心として、大リストラの嵐が吹き荒れています。その数は13万人に上ります。
雇用の維持どころか、首切りの横行です。
11年11月30日に成立した11年度税制「改正」法は、「税制抜本改革」の先取りとして、法人実効税率の5%引き下げを盛り込みました。しかし、代替財源として確保できたのは結局、減収見込みの半分以下の5800億円程度にすぎませんでした。減収の穴は、消費税で埋め合わされることになりかねません。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2012年11月30日付掲載
民主党は、法人税減税の穴埋めとして、研究開発税制を削減してあてるってことはできなかったのですね。財界にとっては、税金を減らしてもらった分を別のところから取られるってことは許されないのでしょう。
財界は、減税してもらった分を雇用拡大にまわすってことも拒否します。
結局、民主党も公約を反故にして、財界も民主党の要求をのまない。雁首並べて、国民を裏切る行為。許せませんね。
「これまでの税制改革で、直間比率自体を具体的にこういうふうに設定して、それに向かって税制改革をやったということはあまりないわけでありまして、所得税や法人税を中心に減税をして、その代わりに消費税を入れさせていただいたということであろうかと思います」
財務省の古谷一之主税局長(現国税庁長官)は、2009年10月27日に開かれた政府税制調査会でこう発言しました。これまでの法人税減税の財源の穴埋めを消費税増税で行ってきたことを財務官僚自身が認めたのです。消費税は89年4月に税率3%で導入され、97年4月に5%へ引き上げられました。
一方、法人税(国税のみ)は89年に42%から40%へ引き下げ。翌90年には37・5%へ引き下げられました。そして98年に34・5%へ下げられ、翌99年には30%となりました。

萬歳章JA全中会長との懇談に臨む米倉弘昌日本経団連会長(中央)=2011年11月9日、東京都千代田区
民主党の公約
この法人税について民主党は、09年の総選挙で見直しを公約しました。マニフェストでは、「租税特別措置の抜本的な見直しを行いますが、これを進めて課税ベースが拡大した際には、企業の国際的な競争力の維持・向上などを勘案しつつ、法人税率を見直していきます」としていました。
租税特別措置とは、特定の企業に減税の恩恵がある税制上の措置のことです。代表的なものに研究開発減税があります。
総選挙で民主党が公約した租税特別措置の抜本的見直しを実施した後に、法人税減税を行うとした手順は、実際には守られることはありませんでした。
菅直人首相(当時)は10年10月1日の国会で、法人税について「年内に見直し案を取りまとめます」と所信表明を行いました。これを受け、政府税制調査会で議論が開始されました。税調では、法人税を5%引き下げた場合の減収(1・4兆~2・1兆円の見込み)の穴埋め財源として、「研究開発税制の大幅縮減」などの案が出されていました。
これに対し、経団連が猛烈に反発。米倉弘昌経団連会長は、早くも10月8日の記者会見でかみつきました。
「そもそも法人税の減税というのは、経済成長を促すために必要だというふうにわれわれは言っている。それを財源がないから課税ベースを拡大して、名目だけの法人税減税だと言われると、これはどういうことなのか」
経団連「困る」
民主党政権は、法人税減税の「目的」として「雇用拡大効果」を強調していました。政府税制調査会の12月16日の会合でも、菅首相は、「単に法人税を下げるというのではなくて、その法人の皆さんには、そのお金で雇用を拡大する、給料を上げる、あるいは国内投資を増やしていく」と希望を語っていました。
同調査会には、法人実効税率(国、地方)を5%引き下げた場合、最大で121万人の雇用維持効果がある、特に製造業では69万人の雇用維持効果がある、という試算すら示されていました。
「雇用拡大」についても米倉会長は、「資本主義でない考え方を導入されては困る」(12月13日)と反発。14日に官邸で行われた菅首相との会談でも、米倉会長は「(雇用拡大を)お約束するわけにはいかない」と拒否しました。
そして今…。パナソニック、ソニー、シャープ、NEC、日本IBMなど大手電機・情報産業を中心として、大リストラの嵐が吹き荒れています。その数は13万人に上ります。
雇用の維持どころか、首切りの横行です。
11年11月30日に成立した11年度税制「改正」法は、「税制抜本改革」の先取りとして、法人実効税率の5%引き下げを盛り込みました。しかし、代替財源として確保できたのは結局、減収見込みの半分以下の5800億円程度にすぎませんでした。減収の穴は、消費税で埋め合わされることになりかねません。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2012年11月30日付掲載
民主党は、法人税減税の穴埋めとして、研究開発税制を削減してあてるってことはできなかったのですね。財界にとっては、税金を減らしてもらった分を別のところから取られるってことは許されないのでしょう。
財界は、減税してもらった分を雇用拡大にまわすってことも拒否します。
結局、民主党も公約を反故にして、財界も民主党の要求をのまない。雁首並べて、国民を裏切る行為。許せませんね。