米国による盗聴・監視 卑劣な耳目 世界が怒る
「自由と民主主義守れ」
米国政府が世界的規模で行う盗聴・監視、通信記録の収集―。元米中央情報局(CIA)職員の告発から各国メディアが報じ、その底深さが日々明らかになっています。言論・表現の自由やプライバシーの尊重と真っ向対立する「大国の悪行」に批判と怒りの声が広がっています。(ワシントン=洞口昇幸写真も)
「イエス・ウィ・スキャン(私たちは探っています)」―。26日、首都ワシントンの米連邦議会前で行われた抗議集会で、こんな横断幕が目に飛び込んできました。
オバマ米大統領が初当選した2008年の大統領選挙で用いた、「イエス・ウィ・キャン」をもじり、オバマ政権をやゆし、強く批判するものです。
友人と集会に参加したミシガン州の女子大学生マリア・パーモンさん(19)は、「いつも政府に監視されているかもしれないなんて最悪です。自由と民主主義を守ってほしい」と語りました。
【イエス・ウィ・スキャン】
オバマ大統領が使った「イエス・ウィ・キャン」をもじり、批判を込めて「イエス・ウィ・スキャン(私たちは探っています)」との横断幕を掲げてデモ行進する米国民=10月26日、ワシントン
米政府機関、国家安全保障局(NSA)の大規模な情報収集が暴露されたのは今年の6月でした。国連本部、欧州連合(EU)のニューヨーク代表部、日本を含む38の在米大使館・代表部の通信を盗聴・傍受していたことも明らかになりました。
最近は、NSAによる情報収集、通信傍受が大規模で継続的なものであることを示す事例が次々と出てきています。
米紙ワシントン・ポスト(今月14日)は、元CIA職員スノーデン氏提供の資料を基に、NSAが米国民の電子メールアドレスなど個人の連絡先情報を、年間数億件収集していると報じました。
国外からの情報収集では、ブラジルのルセブ大統領やメキシコのカルデロン前大統領、中南米14力国もNSAの監視対象に。主要国の政治指導者約35人の電話を盗聴していたことや、世界80カ所以上の米在外公館内でNSAがCIAとともに「特別収集部」という傍受の拠点を設置したことなどが報道されています。
同盟国が抗議
「同盟国、友好国間のこのような行為は容認できない」―。オランド仏大統領は21日、オバマ大統領に電話で抗議しました。仏紙ルモンドが同日、昨年12月から今年1月までにNSAが仏国内の通話7030万件を盗聴していたと報じたことを受けてのことです。
月に5億件の電話・インターネットの通信記録がNSAに収集されていたと今夏に報じられていたドイツ。最近になってメルケル首相の携帯電話が02年から盗聴されていた疑いも浮上しました。スペインでも同国ムンド紙が、電話・インターネットの通信6000万件超がNSAに傍受されていたと28日に報じました。
この問題は、米国の外交に大きな影響を与えています。24日のEU首脳会議では懸念が噴出。欧州議会の訪米代表団は28日、米側に問題が解決されなければ米国とEUの環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)の交渉に影響が出ると伝えました。
ドイツとブラジルは米政府を非難し、プライバシー保護の対策を求める国連総会決議案を準備しています。
「基本的仕事」
オバマ米政権は「情報収集の方法の見直しを始めている」と釈明。報道によると外国指導者監視の実態をホワイトハウスは今夏に知り、やめる決定を下し、現在は行っていないとされています。しかし、オバマ政権は通信傍受活動を正当化する立場は変えていません。
29日の米下院情報特別委員会の公聴会で、クラッパー国家情報長官は「(各国)指導者の意図を収集・分析するのは、情報機関の基本的な仕事だ」と、NSAの情報収集活動を正当化しています。
米政府がいま情報収集を合法だと正当化している根拠の一つは01年の同時テロ後につくられた「愛国者法」。「テロ対策」を口実にして情報機関や米連邦捜査局(FBI)などに強力な権限を与えるというものです。
同法の下で、これまでも当局が裁判所の許可がなくても、電話やインターネットの通信記録など民間企業が管理する個人情報を押収してきました。押収された側がそれを公にすることは禁止され、秘密裏に個人情報が当局に渡されるだけでなく、行き過ぎた捜査や違反捜査も横行していました。
スノーデン氏の情報を報じたグレン・グリーンウォルド元英ガーディアン紙記者は、米テレビ番組で米政府の監視体制は、「道理や利益・コストを考えずに、あらゆる通信技術に侵入することに取りつかれている」と述べ、「米政府の力を増大させるためだけに在る」と述べています。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年10月31日付掲載
盗聴と言えば、ウォーターゲート事件が思い起こされますね。当時は古典的な盗聴器でしたが、現在の盗聴・監視は電話回線やインターネットなどの電子技術を駆使した巧妙なもので、その規模も膨大なものとなっています。
「通信の秘密」はいかなることがあろうとも守られなければなりません。アメリカのこのような行為は直ちに中止すべきです。
「自由と民主主義守れ」
米国政府が世界的規模で行う盗聴・監視、通信記録の収集―。元米中央情報局(CIA)職員の告発から各国メディアが報じ、その底深さが日々明らかになっています。言論・表現の自由やプライバシーの尊重と真っ向対立する「大国の悪行」に批判と怒りの声が広がっています。(ワシントン=洞口昇幸写真も)
「イエス・ウィ・スキャン(私たちは探っています)」―。26日、首都ワシントンの米連邦議会前で行われた抗議集会で、こんな横断幕が目に飛び込んできました。
オバマ米大統領が初当選した2008年の大統領選挙で用いた、「イエス・ウィ・キャン」をもじり、オバマ政権をやゆし、強く批判するものです。
友人と集会に参加したミシガン州の女子大学生マリア・パーモンさん(19)は、「いつも政府に監視されているかもしれないなんて最悪です。自由と民主主義を守ってほしい」と語りました。
【イエス・ウィ・スキャン】
オバマ大統領が使った「イエス・ウィ・キャン」をもじり、批判を込めて「イエス・ウィ・スキャン(私たちは探っています)」との横断幕を掲げてデモ行進する米国民=10月26日、ワシントン
米政府機関、国家安全保障局(NSA)の大規模な情報収集が暴露されたのは今年の6月でした。国連本部、欧州連合(EU)のニューヨーク代表部、日本を含む38の在米大使館・代表部の通信を盗聴・傍受していたことも明らかになりました。
最近は、NSAによる情報収集、通信傍受が大規模で継続的なものであることを示す事例が次々と出てきています。
米紙ワシントン・ポスト(今月14日)は、元CIA職員スノーデン氏提供の資料を基に、NSAが米国民の電子メールアドレスなど個人の連絡先情報を、年間数億件収集していると報じました。
国外からの情報収集では、ブラジルのルセブ大統領やメキシコのカルデロン前大統領、中南米14力国もNSAの監視対象に。主要国の政治指導者約35人の電話を盗聴していたことや、世界80カ所以上の米在外公館内でNSAがCIAとともに「特別収集部」という傍受の拠点を設置したことなどが報道されています。
同盟国が抗議
「同盟国、友好国間のこのような行為は容認できない」―。オランド仏大統領は21日、オバマ大統領に電話で抗議しました。仏紙ルモンドが同日、昨年12月から今年1月までにNSAが仏国内の通話7030万件を盗聴していたと報じたことを受けてのことです。
月に5億件の電話・インターネットの通信記録がNSAに収集されていたと今夏に報じられていたドイツ。最近になってメルケル首相の携帯電話が02年から盗聴されていた疑いも浮上しました。スペインでも同国ムンド紙が、電話・インターネットの通信6000万件超がNSAに傍受されていたと28日に報じました。
この問題は、米国の外交に大きな影響を与えています。24日のEU首脳会議では懸念が噴出。欧州議会の訪米代表団は28日、米側に問題が解決されなければ米国とEUの環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)の交渉に影響が出ると伝えました。
ドイツとブラジルは米政府を非難し、プライバシー保護の対策を求める国連総会決議案を準備しています。
「基本的仕事」
オバマ米政権は「情報収集の方法の見直しを始めている」と釈明。報道によると外国指導者監視の実態をホワイトハウスは今夏に知り、やめる決定を下し、現在は行っていないとされています。しかし、オバマ政権は通信傍受活動を正当化する立場は変えていません。
29日の米下院情報特別委員会の公聴会で、クラッパー国家情報長官は「(各国)指導者の意図を収集・分析するのは、情報機関の基本的な仕事だ」と、NSAの情報収集活動を正当化しています。
米政府がいま情報収集を合法だと正当化している根拠の一つは01年の同時テロ後につくられた「愛国者法」。「テロ対策」を口実にして情報機関や米連邦捜査局(FBI)などに強力な権限を与えるというものです。
同法の下で、これまでも当局が裁判所の許可がなくても、電話やインターネットの通信記録など民間企業が管理する個人情報を押収してきました。押収された側がそれを公にすることは禁止され、秘密裏に個人情報が当局に渡されるだけでなく、行き過ぎた捜査や違反捜査も横行していました。
スノーデン氏の情報を報じたグレン・グリーンウォルド元英ガーディアン紙記者は、米テレビ番組で米政府の監視体制は、「道理や利益・コストを考えずに、あらゆる通信技術に侵入することに取りつかれている」と述べ、「米政府の力を増大させるためだけに在る」と述べています。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年10月31日付掲載
盗聴と言えば、ウォーターゲート事件が思い起こされますね。当時は古典的な盗聴器でしたが、現在の盗聴・監視は電話回線やインターネットなどの電子技術を駆使した巧妙なもので、その規模も膨大なものとなっています。
「通信の秘密」はいかなることがあろうとも守られなければなりません。アメリカのこのような行為は直ちに中止すべきです。