これでわかる 安倍「働き方改革」⑤ 最低賃金 1000円遠く 地域差拡大
安倍政権の働き方改革実行計画では、「年率3%程度を目途」に最低賃金を引き上げ、「全国加重平均が1000円になることを目指す」ことを掲げました。これを受けて改定された2017年度の最低賃金の改定額が出そろい、全国加重平均(時給)で昨年より25円引き上げられ、848円となります。
最高額が東京都の958円、最低額が高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄の8県の737円。東京都では、月収に換算(月の労働時間を173・8時間で計算)すれば、16万6000円、年収でようやく200万円程度の水準です。8県では月収で13万円に達せず、年収で154万円に届かない水準です。
全労連の加盟労組が全国各地で実施した最低生計費調査では、時給1400~1500円が必要です。
いま年収200万円に満たないワーキングプアは1130万人(国税庁「民間給与実態統計調査」)に達しています。この実態を改善するには、早急に全国で時給1000円を実現するとともに、1500円を目指すことが求められています。
しかし、実行計画通り年率3%で引き上げたとしても、1000円に到達するのは2023年。10年に民主党政権下で閣議決定された「20年までに全国平均1000円を目指す」とした目標からも後退しています。
人口流出の一因
今回の改定で、最高額と最低額の地域間格差が218円から221円に拡大しました。月収で3万6000円、年収で45万円程度の格差になる水準です。
全労連の最低生計費調査では、1カ月の生活に必要な生計費は、全国各地で大きな格差がありません。最低賃金の地域間格差が、地方から都市部に人口が流出し、地方の人口減少と疲弊を招く一つの原因になっています。
ところが、実行計画には地域間格差縮小は=言もふれていません。実行計画は「同一労働同一賃金の導入」を掲げました。しかし、例えばコンビニ店員の時給をみても、東京と地方では200円もの格差があります。同じ商品を売って同じ時間働いても、これだけの格差が出るのは、同一労働同一賃金の看板に逆行しています。
景気回復に必要
安倍政権が最低賃金の抜本的引き上げに背を向けているのは、大企業の収益はそのままにして、企業の生産性向上を前提としているからです。実行計画では、「中小企業、小規模事業者の生産性向上等のための支援や取引条件の改善を図る」としています。こうした立場から中小企業への支援は生産性向上のための設備導入への一部補助にとどまります。フランスなどが、保険料負担の軽減など直接的補助によって最賃を大幅に引き上げているのとは大違いです。
最低賃金の目的は、低賃金労働者の労働条件の改善を図り、労働者の生活の安定を実現することと、労働力の質的向上と事業の公正競争の確保という二つの役割があります。(最低賃金法1条)
最低賃金の大幅引き上げは、低迷する日本経済のもとで、内需を拡大し、景気を回復するうえでも必要不可欠となっています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年8月30日付掲載
最低賃金。改定されてアップすることは良い事ですが…。額があまりにも低すぎる。最低でも時給1000円以上に。
安倍政権の働き方改革実行計画では、「年率3%程度を目途」に最低賃金を引き上げ、「全国加重平均が1000円になることを目指す」ことを掲げました。これを受けて改定された2017年度の最低賃金の改定額が出そろい、全国加重平均(時給)で昨年より25円引き上げられ、848円となります。
最高額が東京都の958円、最低額が高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄の8県の737円。東京都では、月収に換算(月の労働時間を173・8時間で計算)すれば、16万6000円、年収でようやく200万円程度の水準です。8県では月収で13万円に達せず、年収で154万円に届かない水準です。
全労連の加盟労組が全国各地で実施した最低生計費調査では、時給1400~1500円が必要です。
いま年収200万円に満たないワーキングプアは1130万人(国税庁「民間給与実態統計調査」)に達しています。この実態を改善するには、早急に全国で時給1000円を実現するとともに、1500円を目指すことが求められています。
しかし、実行計画通り年率3%で引き上げたとしても、1000円に到達するのは2023年。10年に民主党政権下で閣議決定された「20年までに全国平均1000円を目指す」とした目標からも後退しています。
人口流出の一因
今回の改定で、最高額と最低額の地域間格差が218円から221円に拡大しました。月収で3万6000円、年収で45万円程度の格差になる水準です。
全労連の最低生計費調査では、1カ月の生活に必要な生計費は、全国各地で大きな格差がありません。最低賃金の地域間格差が、地方から都市部に人口が流出し、地方の人口減少と疲弊を招く一つの原因になっています。
ところが、実行計画には地域間格差縮小は=言もふれていません。実行計画は「同一労働同一賃金の導入」を掲げました。しかし、例えばコンビニ店員の時給をみても、東京と地方では200円もの格差があります。同じ商品を売って同じ時間働いても、これだけの格差が出るのは、同一労働同一賃金の看板に逆行しています。
景気回復に必要
安倍政権が最低賃金の抜本的引き上げに背を向けているのは、大企業の収益はそのままにして、企業の生産性向上を前提としているからです。実行計画では、「中小企業、小規模事業者の生産性向上等のための支援や取引条件の改善を図る」としています。こうした立場から中小企業への支援は生産性向上のための設備導入への一部補助にとどまります。フランスなどが、保険料負担の軽減など直接的補助によって最賃を大幅に引き上げているのとは大違いです。
最低賃金の目的は、低賃金労働者の労働条件の改善を図り、労働者の生活の安定を実現することと、労働力の質的向上と事業の公正競争の確保という二つの役割があります。(最低賃金法1条)
最低賃金の大幅引き上げは、低迷する日本経済のもとで、内需を拡大し、景気を回復するうえでも必要不可欠となっています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年8月30日付掲載
最低賃金。改定されてアップすることは良い事ですが…。額があまりにも低すぎる。最低でも時給1000円以上に。