TPP「大筋合意」急ぐ日米 多国籍大企業優先に固執
日本や米国など12力国による環太平洋連携協定(TPP)交渉の閣僚会合が30日から米国のアトランタで開かれます。安倍晋三首相は25日の関係閣僚会議で、今回を「最後の閣僚会合としたい」
と述べ、「大筋合意」を急ぐ姿勢を改めて示しました。各国国民の反対にもかかわらず、日米合作で多国籍大企業最優先のTPPをあくまで推進する構えです。(北川俊文)
反対運動 各国国民粘り強く
交渉国なお相違
閣僚会合に先立ち、首席交渉官会合が26日から開かれています。これまでに伝えられるところによると、協定文31章のうち25章については、交渉が実質的に終結したか、実務レベルで決着するとされます。しかし、知的財産権など、意見の椙違が顕著な分野も少なからず残っています。
特に隔たりが大きいのは、知的財産権分野の新薬データ保護期間です。製薬大企業の利益を擁護する米国は12年間への延長を要求。安価な後発医薬品(ジェネリック)の輸入に依存するオーストラリアなどは5年を主張しています。
国有企業を民間企業と同じ扱いにするルールでは、経済の中で国有企業の役割が大きいマレーシアが、厳格な規制に難色を示し、例外扱いの拡大を求めているとされます。
生産国を確定するルールである原産地規則では、関税撤廃・削減の対象になる自動車本体・部品について、TPP域内での部品調達率をめぐり、日米とメキシコ、カナダの間で対立が表面化しています。
乳製品の輸出大国であるニュージーランドは、特に日本、米国、カナダに対し、乳製品の大幅な市場開放を求めています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0d/fa/ec9c888650f11c739f9c1a370e54e4c6.jpg)
議員会館の前でTPP反対の声を上げる市民ら=6月23日、ワシントン(洞口昇幸撮影)
反TPP広がる
7月末、米ハワイで開かれた前回の閣僚会合も、「最後としたい」(甘利明TPP担当相)と意気込みながら、各国の対立が解消されず、「大筋合意」に至りませんでした。その背景には、TPP交渉の異常な秘密主義への批判が根強い上に、多国籍大企業の利益を極度に優先するTPPそのものに反対する日米を含む各国国民の運動が広がっていることがあります。
前回の閣僚会合終了直後、ニュージーランド・オークランド大学のジェーン・ケルシー教授は、「(交渉の)こう着の根源は、ほとんど全交渉参加国における国内の反対だ」と指摘しました。
米国では、有力な労働組合や市民団体が、TPPは雇用と賃金、食の安全、主権などを脅かすとして反対運動を展開しています。ニューヨーク市など15の地方議会が反対決議を上げています。
日本でも、農業生産者、消費者をはじめ多くの団体、個人が反対運動を粘り強く津図けています。
人権問題を担当する国連の特別報告者や専門家10人が声明を発表し、TPPを含む自由貿易協定や投資協力について、貧困問題を深刻化させるなど人権への否定的影響があるとする懸念を表明しています。
TPP交渉の主なポイント
不透明感に焦り
日米政府が「大筋合意」を焦るのは、先へ行けば行くほど、TPP交渉の環境が不透明になっていくと考えているからです。
米国では、来年は大統領選挙の年で、TPP交渉に専心できません。しかも、米消費者団体、パブリック・シティズンのまとめによると、大統領候補に名乗りを上げている人々のうち、有力とされるクリントン元国務長官を含む10人がTPPを批判しています。
カナダでは、10月19日に総選挙の投票が行われます。世論調査によると、親米路線をとる現政権の保守党が苦戦していると伝えられます。マレーシアでは、首相自身の資金疑惑で、政権が揺れています。オーストラリアでは15日、首相が交代しました。新首相は前首相より庶民派色が強いとみられており、新薬のデータ保護期間への対応が注目されています。
米国追随で突出
こうした中で、米国に追随し、TPP交渉の早期妥結へ猛進する安倍政権の前のめり姿勢が突出しています。
日米同盟を最優先して、米国とともにTPP交渉を主導すると豪語する安倍政権は、米国の要求のままに、農産物重要5品目を含む関税削減、輸入拡大をはじめ、農業生産、地域経済、国民生活を害する悪質な亡国の譲歩を重ねてきました。
「戦争法」の強行で国民の厳しい批判を浴びている安倍政権は24日、「新3本の矢」(強い経済、子育て、社会保障)を打ち出し、国民の目を経済問題へそらせることで、批判をかわそうとしています。そこでも、「TPPを含め大きな経済圏を世界に広げ」るとして、TPP早期妥結を目指す意図を語っています。
しかし、この道は、日本の経済を土台から破壊します。TPPの亡国交渉からは、一日も早く撤退すべきです。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年9月29日付掲載
「自由貿易」と言うと、何かバラ色、いいことづくめの様に見えますが、結局「強気を助ける」ことになるのです。
日本の場合は、自動車などの産業を優遇、農林水産業は衰退。
アフリカ諸国でのコーヒー栽培で単一産業しかなくなる問題がありますが、極端に言えばモノカルチャ―に…
輸出国にとっても、本当はいいことではないのです。
日本や米国など12力国による環太平洋連携協定(TPP)交渉の閣僚会合が30日から米国のアトランタで開かれます。安倍晋三首相は25日の関係閣僚会議で、今回を「最後の閣僚会合としたい」
と述べ、「大筋合意」を急ぐ姿勢を改めて示しました。各国国民の反対にもかかわらず、日米合作で多国籍大企業最優先のTPPをあくまで推進する構えです。(北川俊文)
反対運動 各国国民粘り強く
交渉国なお相違
閣僚会合に先立ち、首席交渉官会合が26日から開かれています。これまでに伝えられるところによると、協定文31章のうち25章については、交渉が実質的に終結したか、実務レベルで決着するとされます。しかし、知的財産権など、意見の椙違が顕著な分野も少なからず残っています。
特に隔たりが大きいのは、知的財産権分野の新薬データ保護期間です。製薬大企業の利益を擁護する米国は12年間への延長を要求。安価な後発医薬品(ジェネリック)の輸入に依存するオーストラリアなどは5年を主張しています。
国有企業を民間企業と同じ扱いにするルールでは、経済の中で国有企業の役割が大きいマレーシアが、厳格な規制に難色を示し、例外扱いの拡大を求めているとされます。
生産国を確定するルールである原産地規則では、関税撤廃・削減の対象になる自動車本体・部品について、TPP域内での部品調達率をめぐり、日米とメキシコ、カナダの間で対立が表面化しています。
乳製品の輸出大国であるニュージーランドは、特に日本、米国、カナダに対し、乳製品の大幅な市場開放を求めています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0d/fa/ec9c888650f11c739f9c1a370e54e4c6.jpg)
議員会館の前でTPP反対の声を上げる市民ら=6月23日、ワシントン(洞口昇幸撮影)
反TPP広がる
7月末、米ハワイで開かれた前回の閣僚会合も、「最後としたい」(甘利明TPP担当相)と意気込みながら、各国の対立が解消されず、「大筋合意」に至りませんでした。その背景には、TPP交渉の異常な秘密主義への批判が根強い上に、多国籍大企業の利益を極度に優先するTPPそのものに反対する日米を含む各国国民の運動が広がっていることがあります。
前回の閣僚会合終了直後、ニュージーランド・オークランド大学のジェーン・ケルシー教授は、「(交渉の)こう着の根源は、ほとんど全交渉参加国における国内の反対だ」と指摘しました。
米国では、有力な労働組合や市民団体が、TPPは雇用と賃金、食の安全、主権などを脅かすとして反対運動を展開しています。ニューヨーク市など15の地方議会が反対決議を上げています。
日本でも、農業生産者、消費者をはじめ多くの団体、個人が反対運動を粘り強く津図けています。
人権問題を担当する国連の特別報告者や専門家10人が声明を発表し、TPPを含む自由貿易協定や投資協力について、貧困問題を深刻化させるなど人権への否定的影響があるとする懸念を表明しています。
TPP交渉の主なポイント
残る難題 | |
医薬品のデータ保護期間 | 最先端バイオ医薬品の開発データ保護期間。12年を求める米国と5年以下を主張する豪州・新興国が対立 |
自動車本体・部品の市場開放 | TPP域内で作られた部品をどれくらい使えば関税撤廃・削減が適用されるか。日本、米国、カナダ、メキシコが協議 |
乳製品の市場開放 | 酪農大国ニュージーランドは大幅な市場開放を目指し強硬姿勢。日本、米国、カナダなどの利害も複雑に絡み難航 | 日本の市場開放 |
コメ | 米国、豪州に無税の輸入枠新設。米国向けは年7万トンで最終調整 |
小麦 | 事実上の関税の輸入差益(現行1キロ約17円)を段階的にほぼ半減で調整 |
牛肉※ | 現在38.5%の関税を15年間で9%に削減 |
豚肉※ | 関税の体系を10年間で見直し、低価格帯は1キロ482円から50円程度に下げ。高価格帯は4.3%から段階的に撤廃 |
(※は輸入急増時に関税を引き上げるセーフガードも導入) |
不透明感に焦り
日米政府が「大筋合意」を焦るのは、先へ行けば行くほど、TPP交渉の環境が不透明になっていくと考えているからです。
米国では、来年は大統領選挙の年で、TPP交渉に専心できません。しかも、米消費者団体、パブリック・シティズンのまとめによると、大統領候補に名乗りを上げている人々のうち、有力とされるクリントン元国務長官を含む10人がTPPを批判しています。
カナダでは、10月19日に総選挙の投票が行われます。世論調査によると、親米路線をとる現政権の保守党が苦戦していると伝えられます。マレーシアでは、首相自身の資金疑惑で、政権が揺れています。オーストラリアでは15日、首相が交代しました。新首相は前首相より庶民派色が強いとみられており、新薬のデータ保護期間への対応が注目されています。
米国追随で突出
こうした中で、米国に追随し、TPP交渉の早期妥結へ猛進する安倍政権の前のめり姿勢が突出しています。
日米同盟を最優先して、米国とともにTPP交渉を主導すると豪語する安倍政権は、米国の要求のままに、農産物重要5品目を含む関税削減、輸入拡大をはじめ、農業生産、地域経済、国民生活を害する悪質な亡国の譲歩を重ねてきました。
「戦争法」の強行で国民の厳しい批判を浴びている安倍政権は24日、「新3本の矢」(強い経済、子育て、社会保障)を打ち出し、国民の目を経済問題へそらせることで、批判をかわそうとしています。そこでも、「TPPを含め大きな経済圏を世界に広げ」るとして、TPP早期妥結を目指す意図を語っています。
しかし、この道は、日本の経済を土台から破壊します。TPPの亡国交渉からは、一日も早く撤退すべきです。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年9月29日付掲載
「自由貿易」と言うと、何かバラ色、いいことづくめの様に見えますが、結局「強気を助ける」ことになるのです。
日本の場合は、自動車などの産業を優遇、農林水産業は衰退。
アフリカ諸国でのコーヒー栽培で単一産業しかなくなる問題がありますが、極端に言えばモノカルチャ―に…
輸出国にとっても、本当はいいことではないのです。