パラダイス文書の衝撃④ 消える境界線 著名法律事務所が関与
政治経済研究所 合田寛理事
「パラダイス文書」はスポーツ用品製造販売の多国籍企業ナイキ社の税逃れのしくみを明るみに出しています。ナイキ社の税逃れのしくみも、基本的にはアップル社と同様に、商標権などの知的財産権をタックスヘイブン(租税回避地)に移すことによって、利益を移転する方法をとってきました。
ナイキ社は、欧州本社のあるオランダ政府との取り決めで、2000年代半ばから10年間、ヨーロッパにおける販売収益をロイヤルティー(使用料)支払いの形で無税の英領バミューダ諸島に移転することを認められていました。スニーカーなど同社製品に使っている「スウッシュ」と呼ばれるロゴマークなどの商標権を、バミューダの子会社に置くことによって、利益をバミューダに移していました。
オランダ政府との間の取り決めの期限終了が近づいた14年、同社はこれまで通りの税の優遇を受ける方法について、同社のアドバイザーであった法律事務所べーカー・マッケンジーに相談を持ち掛けました。同法律事務所が提案した解決策は、「スウッシュ」などの商標権をバミューダから、新しいオランダ子会社「ナイキ・イノベート・CV」に移すことでした。

東京都渋谷区にあるナイキの店舗
課税権が及ぼず
オランダ税法では「CV(有限パートナーシップ)」によって得られた収益は、CVを所有するパートナーによって生み出されたものとみなされます。それがオランダ以外の国のパートナーであれば、オランダでは課税されません。つまりオランダCVを所有するオランダ国外の持ち株会社を設立すれば、オランダの課税権は及ばなくなります。他方で、オランダCVは他国では通常のオランダの企業とみなされることから、他国の課税権も及びません。こうして二重に非課税となります。
商標権をバミューダからオランダCVに移して以来、ナイキの税負担は下がり続け、海外利益は増え続けています。オランダCVの制度はナイキだけでなく、ウーバーなど多くの多国籍企業によって利用されています。
新枠組みを提供
アップル社にせよナイキ社にせよ、税逃れスキーム(枠組み)の再構築にあたって、新たなスキームを指南したのは、べーカー・マッケンジーという世界でもトップクラスの法律事務所であったことは注目すべきです。べーカー・マッケンジーはアメリカのシカゴ本拠を置き、世界47力国に77のオフィスを有し、4100人以上の法律家が所属しています。
べーカー・マッケンジーは経済協力開発機構(OECD)の公式諮問機関である経済産業諮問委員会(BIAC)にも所属し、これまでOECDの移転価格に関するガイドライン作成など、国際税制の構築に関しても、ロビー活動を通じて強い影響力を行使してきました。
「パラダイス文書」が明らかにしたオフショア(タックスヘイブン)世界の構造は、「オンショア」(タックスヘイブン以外)を代表する著名な法律事務所が、アップルビーなどという「オフショア」の法律事務所と共同して、多国籍企業や富裕者に対してさまざまな税逃れの仕組みを提供しているというものです。オンショア世界とオフショア世界を隔てる境界線はすでに消え、私たちの見えないところで実はつながっていたのです。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年11月29日付掲載
タックスヘイブンを利用した税逃れを指南しているのは、巨大な法律事務所。
労働問題や遺産相続などに取り組んでいる普通の法律事務所とはわけが違いますね。
表の社会に出ている法律事務所が、裏社会をサポートしている。
政治経済研究所 合田寛理事
「パラダイス文書」はスポーツ用品製造販売の多国籍企業ナイキ社の税逃れのしくみを明るみに出しています。ナイキ社の税逃れのしくみも、基本的にはアップル社と同様に、商標権などの知的財産権をタックスヘイブン(租税回避地)に移すことによって、利益を移転する方法をとってきました。
ナイキ社は、欧州本社のあるオランダ政府との取り決めで、2000年代半ばから10年間、ヨーロッパにおける販売収益をロイヤルティー(使用料)支払いの形で無税の英領バミューダ諸島に移転することを認められていました。スニーカーなど同社製品に使っている「スウッシュ」と呼ばれるロゴマークなどの商標権を、バミューダの子会社に置くことによって、利益をバミューダに移していました。
オランダ政府との間の取り決めの期限終了が近づいた14年、同社はこれまで通りの税の優遇を受ける方法について、同社のアドバイザーであった法律事務所べーカー・マッケンジーに相談を持ち掛けました。同法律事務所が提案した解決策は、「スウッシュ」などの商標権をバミューダから、新しいオランダ子会社「ナイキ・イノベート・CV」に移すことでした。

東京都渋谷区にあるナイキの店舗
課税権が及ぼず
オランダ税法では「CV(有限パートナーシップ)」によって得られた収益は、CVを所有するパートナーによって生み出されたものとみなされます。それがオランダ以外の国のパートナーであれば、オランダでは課税されません。つまりオランダCVを所有するオランダ国外の持ち株会社を設立すれば、オランダの課税権は及ばなくなります。他方で、オランダCVは他国では通常のオランダの企業とみなされることから、他国の課税権も及びません。こうして二重に非課税となります。
商標権をバミューダからオランダCVに移して以来、ナイキの税負担は下がり続け、海外利益は増え続けています。オランダCVの制度はナイキだけでなく、ウーバーなど多くの多国籍企業によって利用されています。
新枠組みを提供
アップル社にせよナイキ社にせよ、税逃れスキーム(枠組み)の再構築にあたって、新たなスキームを指南したのは、べーカー・マッケンジーという世界でもトップクラスの法律事務所であったことは注目すべきです。べーカー・マッケンジーはアメリカのシカゴ本拠を置き、世界47力国に77のオフィスを有し、4100人以上の法律家が所属しています。
べーカー・マッケンジーは経済協力開発機構(OECD)の公式諮問機関である経済産業諮問委員会(BIAC)にも所属し、これまでOECDの移転価格に関するガイドライン作成など、国際税制の構築に関しても、ロビー活動を通じて強い影響力を行使してきました。
「パラダイス文書」が明らかにしたオフショア(タックスヘイブン)世界の構造は、「オンショア」(タックスヘイブン以外)を代表する著名な法律事務所が、アップルビーなどという「オフショア」の法律事務所と共同して、多国籍企業や富裕者に対してさまざまな税逃れの仕組みを提供しているというものです。オンショア世界とオフショア世界を隔てる境界線はすでに消え、私たちの見えないところで実はつながっていたのです。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年11月29日付掲載
タックスヘイブンを利用した税逃れを指南しているのは、巨大な法律事務所。
労働問題や遺産相続などに取り組んでいる普通の法律事務所とはわけが違いますね。
表の社会に出ている法律事務所が、裏社会をサポートしている。