goo blog サービス終了のお知らせ 

きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

賃金の上がる国へ⑤ 政治が責任持ち実現を

2024-06-12 07:08:06 | 働く権利・賃金・雇用問題について
賃金の上がる国へ⑤ 政治が責任持ち実現を

ジャーナリスト 昆 弘見さん

政治の責任で賃上げというとき、人事院勧告と最低賃金制度がきわめて重要です。
人事院勧告は、国家公務員の労働基本権が奪われている「代償措置」として、例年8月に賃金・労働条件を政府と国会に勧告するものです。国家公務員が対象ですが、地方公務員、公営企業、さらに保育、社会保障などのケア労働にも広く連動し、約900万人に影響するといわれています。

機能しない措置
「代償措置」といいますが、これまでの勧告をみると「賃金抑制装置」という方がピッタリです。この30年来の傾向は、「民間準拠」を言い分にベアゼロとマイナス勧告が13回もあり、改善があっても多くが0%台です。
なかでも悪質だったのは、勧告を低く抑えるために、2006年に賃金を比較する民間企業の規模を100人以上から50人以上に変更したことです。企業規模100人以上というのは、1964年の池田勇人首相と太田薫総評議長の「政労トップ会談」で確認されたもので、42年ぶりの大転換です。





池田勇人元首相(1962年6月撮影)


太田薫元総評(日本労働組合総評議会)議長

きっかけになったのは、前原誠司民主党代表(当時)の05年9月の国会代表質問。小泉純一郎首相に対して、人事院勧告を「零細企業も含めた民間給与の実態をふまえたものとすべきではないか」と迫りました。調査対象の企業規模を小さくして、公務員給与を減らすべきだというものです。
この変更によって、06年の勧告は「ベアゼロ」。変えていなければ月1・12%(4252円)と特別手当のプラス勧告になるはずでした。政府の責任で元に戻すことを強く求めたいと思います。
さらに人事院勧告で重要なのは、国家公務員の高卒初任給が最低賃金以下のところがあることです。人事院は昨年、高卒初任給を1万2千円引き上げる勧告を出しましたが、いまなお8都府県で最低賃金を下回っています。公務員にも最低賃金制度を適用し、最低賃金以下をなくす大幅な引き上げをすぐに実行するべきです。

恥ずかしい水準
日本の最低賃金は昨年、時給が平均43円(4・5%)引き上げられて全国平均1004円です。これは世界から見てほんとうに恥ずかしい低さです。イギリスは4月に、物価高騰に対応して時給を9・8%引き上げて1998円にしました。アメリカでも最も高いワシントン州が2393円、カリフォルニア州が2352円など2000円を超える引き上げが相次いでいます。これが世界の動きです。
岸田首相は、「2030年代半ばに1500円台」といっていますが、あまりに遅すぎです。いま日本の各地で沸き起こっている「全国どこでも時給1500円以上」という要求に今すぐ応えるよう、運動をいっそう強化することが重要になっています。
最低賃金を時給1500円に引き上げると、2200万人以上の労働者が賃上げになる(「しんぶん赤旗」1月31日付)といわれ、国民生活改善への底上げ効果は抜群です。経営基盤の弱い中小企業への支援策をとって、実現を急ぐべきです。地域間格差をなくすために現行の地域別の最低賃金制度を世界共通の全国一律制に改めることも重要な課題です。
日本を「賃金が上がる国」にするために政治が本気で責任を果たすことが求められています。
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年6月8日付掲載


政治の責任で賃上げというとき、人事院勧告と最低賃金制度がきわめて重要。
人事院勧告で、なかでも悪質だったのは、勧告を低く抑えるために、2006年に賃金を比較する民間企業の規模を100人以上から50人以上に変更したこと。
企業規模100人以上というのは、1964年の池田勇人首相と太田薫総評議長の「政労トップ会談」で確認されたもので、42年ぶりの大転換。
この変更によって、06年の勧告は「ベアゼロ」。変えていなければ月1・12%(4252円)と特別手当のプラス勧告になるはずでした。

賃金の上がる国へ④ 賃金交渉三つの山場

2024-06-11 06:44:31 | 働く権利・賃金・雇用問題について
賃金の上がる国へ④ 賃金交渉三つの山場

ジャーナリスト 昆 弘見さん

日本は、賃金が決まる仕組みが世界の国々と違います。世界の多くは労働組合が産業別に組織され、使用者団体と法的拘束力がある労働協約で賃金を決めます。日本は、労働組合が企業単位で組織されているため、賃上げが企業の外に波及しません。
日本は賃金交渉のヤマ場が1年に3回あります。3月の春闘、8月の国家公務員の人事院勧告、10月の最低賃金の決定です。毎年このサイクルで回ります。

コスト抑制方針
春闘は、民間企業の労使交渉が基本ですが、人事院の給与勧告と最低賃金額はまさに政府の判断が強く影響します。これまで自民党政権は、人事院勧告と最低賃金を抑えて財界の賃金コスト抑制方針を支えてきました。岸田政権は「コストカット型経済の転換」といっていますが、コストカットの一翼を担ってきた責任は重大です。
賃上げで、やはり重要なのは春闘です。先にのべたように日本は、労働組合が企業ごとに組織されているため、交渉がバラバラで全国的に波及しません。そこで毎年春、産業別に要求や戦術を統一し共闘して賃上げを実現しようと1955年に始まりました。1974年の春闘は「狂乱物価」(物価上昇率24・5%、帰属家賃を除く)から生活を守る「国民春闘」としてたたかわれ、32・9%の賃上げを獲得しました。ストライキ件数、賃上げ率は戦後最高です。
その後、財界の抑え込み攻勢に押され、とくに2002年以降はベースアップがゼロか上がっても千円台の低額が常態化しました。連合の大企業労組が満額回答を得ても実質賃金がマイナスという状態が続き、「賃金が上がらない国」の主要な原因となりました。全労連などが「国民春闘」を継承し、大幅賃上げを要求してストライキを構えてたたかっていることはとても重要です。



1974年の春闘は「狂乱物価」と呼ばれた急激なインフレとのたたかいに(東京都千代田区)

生活向上分なし
春闘で疑問なのは、政府も財界も連合の大企業労組も、賃上げの根拠を「定期昇給プラス物価上昇分の考慮」としていることです。労働者の願いである生活向上分がありません。これが同満額回答でも実質賃金がマイナスになり、労働者をがっかりさせる原因になっています。
岸田政権が本気で賃上げを促進するというなら、この「定期昇給プラス物価上昇分」に数%の生活向上分を加味し、労働者が生活が良くなったと実感できるベースアップを財界に働きかけるべきです。
これはむちゃな話ではありません。大企業には、それができる十分な体力があります。6月の財務省発表によると、内部留保が約537兆円に増えています。前年比24・6兆円(4・7%)増という異常な増え方です。利益が出ても賃上げには回さず、企業に滞留しているこのお金を賃上げに生かすことが、政治に求められています。
その有効な方法は、内部留保課税です。日本共産党は「経済再生プラン」で具体的な提案をしています。
内部留保の増加分に年2%で5年間の時限的課税をおこない、10兆円の財源をつくって中小企業の賃上げ支援をする。大企業が賃上げをすれば課税されない仕組みをつくることで、大企業の賃上げを促進する―という内容です。
政治の責任で賃上げを実現するもっとも実現可能な提案であり、合意が広がることが期待されます。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年6月7日付掲載


日本は賃金交渉のヤマ場が1年に3回。3月の春闘、8月の国家公務員の人事院勧告、10月の最低賃金の決定。毎年このサイクルで回ります。
全労連などが「国民春闘」を継承し、大幅賃上げを要求してストライキを構えてたたかっていることはとても重要。
岸田政権が本気で賃上げを促進するというなら、この「定期昇給プラス物価上昇分」に数%の生活向上分を加味し、労働者が生活が良くなったと実感できるベースアップを財界に働きかけるべき。
内部留保の増加分に年2%で5年間の時限的課税をおこない、10兆円の財源をつくって中小企業の賃上げ支援をする。大企業が賃上げをすれば課税されない仕組みをつくることで、大企業の賃上げを促進する。

賃金の上がる国へ③ 3者構成の原則を敵視

2024-06-09 07:14:50 | 働く権利・賃金・雇用問題について
賃金の上がる国へ③ 3者構成の原則を敵視

ジャーナリスト 昆弘見さん

政府の「三位一体の労働市場改革」は、決定過程に重要な問題があります。労働分野の政策は政府(公益)、労働者、使用者の3者対等の構成によって検討するというルールを無視してすすめられたことです。
「三位一体改革」の指針をまとめた「新しい資本主義実現会議」は、21人のメンバーのうち岸田文雄首相を含む大臣が6人、財界関係者が12人、学者が2人、連合会長が労働者代表で1人だけという構成で、過半数が財界関係者です。



「新しい資本主義実現会議」に出席する岸田首相ら=5月9日(官邸ホームページから)

◆新しい資本主義実現会議の財界系構成員
翁 百合日本総合研究所理事長
川邊健太郎LINEヤフー代表取締役会長
小林 健日本商工会議所会頭
澤田 拓子塩野義製薬副会長
渋澤 健シブサワ・アンド・カンパニー代表取締役
諏訪 貴子ダイヤ精機社長
十倉 雅和経団連会長
冨山 和彦経営共創基盤グループ会長
新浪 剛史経済同友会代表幹事
平野 未来シナモン共同最高経営責任者
村上由美子MPower Partnersゼネラルパートナー
米良はるかREADYFOR最高経営責任者
◆同会議の労働組合代表の構成員
芳野 友子連合会長


国際基準を逸脱
委員の1人、冨山和彦氏(経営共創基盤グループ会長)が「日本型ホワイトカラーは市場価値がない」と会議で暴言を吐いたことを前回紹介しましたが、彼はもっとひどい発言もしています。
「三位一体改革」を労政審(厚生労働相の諮問機関、労働政策審議会)にもっていったら「5年~10年大きな変化はないと思ったほうがいい」「(なぜなら)3者構成の中身の問題」とのべています。労働者代表を対等に扱う労政審では、財界の思う通りに事が運ばないという意見です。
首相を議長とする政府の会議で、本来の審議ルールを攻撃するのは言語道断というべきです。3者構成の労政審を毛嫌いし、排除をとなえるこういう議論が財界や一部学者から相次いでいますが、軽視せずに批判していくことが大事だと思います。
日本では、労働政策の重要事項の審議は、労政審で行うと定められています(厚労省設置法第9条)。その委員は「労働者を代表する者、使用者を代表する者及び公益を代表する者のうちから、厚生労働大臣が各同数を任命する」(労働政策審議会令第3条)とされ、明確に3者同数と定められています。こういう原則をとっているのが政府内の他の審議会と大きく異なる点です。
3者構成原則はILO(国際労働機関)が定めている国際労働基準(第144号条約)です。日本は2002年に批准しています。なぜこういう原則があるかといえば、労働問題は労働者と使用者の利害が対立するので、使用者から一方的に不利な条件が労働者に押し付けられることがないようにするためです。

財界主導へ変質
ところがいまこれが形骸化され、財界主導へと変質しているのが実態です。転機になったのは、01年の省庁再編で官邸主導の政治にするという目的で内閣府が新設され、そのもとに経済財政諮問会議と規制改革会議(何度も名称変更)がつくられたことです。小泉純一郎政権は、財界主導で労働者代表がいないこの二つの組織で労働法制の改悪や規制緩和をすすめ、閣議決定で固めたあとに労政審の形式的な追認を求める方式をとりました。
安倍晋三政権では、所管の厚労省があるのにわざわざ働き方担当相を任命し、そのもとに財界中心の「働き方改革実現会議」を設置するという露骨な“労政審外し”のやり方をとりました。そこでの一方的な結論を経済財政諮問会議で確認して閣議決定にする手法です。今回の岸田政権の「三位一体改革」はそのやり方をまねたものといえます。
利害の一方の当事者である労働者の声を無視し、財界いいなりで事を運ぶ労働市場改革に批判の声をあげることが重要です。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年6月6日付掲載


「三位一体改革」の指針をまとめた「新しい資本主義実現会議」は、21人のメンバーのうち岸田文雄首相を含む大臣が6人、財界関係者が12人、学者が2人、連合会長が労働者代表で1人だけという構成で、過半数が財界関係者。
日本では、労働政策の重要事項の審議は、労政審で行うと定められています(厚労省設置法第9条)。その委員は「労働者を代表する者、使用者を代表する者及び公益を代表する者のうちから、厚生労働大臣が各同数を任命する」(労働政策審議会令第3条)とされ、明確に3者同数と定められています。こういう原則をとっているのが政府内の他の審議会と大きく異なる点。
安倍晋三政権では、所管の厚労省があるのにわざわざ働き方担当相を任命し、そのもとに財界中心の「働き方改革実現会議」を設置するという露骨な“労政審外し”のやり方を。今回の岸田政権の「三位一体改革」はそのやり方をまねたもの。

賃金の上がる国へ② 「労働市場改革」誰のため

2024-06-08 13:04:25 | 働く権利・賃金・雇用問題について
賃金の上がる国へ② 「労働市場改革」誰のため

ジャーナリスト 昆弘見さん

岸田文雄政権は、「三位一体の労働市場改革」で「構造的賃上げ」をめざすとしています。岸田首相の肝いりで発足した「新しい資本主義実現会議」が昨年5月に「三位一体の労働市場改革の指針」をまとめ、それを政府が「骨太方針」の目玉に据え、6月に閣議決定しました。
「リスキリング(学び直し)による能力向上支援」「個々の企業に応じた職務給の導入」「成長分野への労働移動の円滑化」というのが改革の内容ですが、これは誰のための改革なのでしょうか。構造的に賃金が上がる改革といえば労働者のためのようですが、実際は違います。




“移動を円滑に”
AI(人工知能)デジタル革命などといわれる新しい時代に役立つ人材を育成する投資と、もうかる事業とつぶす事業の間で労働者の移動を円滑にすすめるシステムをつくること。これが財界・大企業が近年強く求めている利益拡大戦略の柱です。それがそのまま政府の方針になったものです。
労働者がリスキリングで能力を磨き、新しい会社で成果を認められ、勤続年数や年齢に関係なく高い賃金の「職務」につく、そしてもっと待遇の良い成長分野に自由に移動していく。こうして構造的に賃金が上がるようになる―。
とてもいい話にみえます。しかし、こういうチャンスに恵まれ、もうかる産業に移動し、上昇気流に乗れる労働者ははたしてどれだけいるでしょうか。「成績トップ」のごく一部で、財界が必要としている人材は労働者全体の1割もいるかどうかでしょう。その「ごく一部」の枠に入るために労働者は過酷な競争に追い込まれることになります。
「三位一体の労働市場改革」は、端的に言うと正社員の雇用形態の破壊、流動化が本当のねらいだと思います。
財界はいま新しい時代に遅れないように既存の産業構造の破壊・転換、もうかる産業の育成に躍起になっています。「新しい資本主義実現会議」の議論で、委員の冨山和彦氏(経営共創基盤グループ会長)がストレートに語っています。
「産業と企業の新陳代謝を進めなければならない」「三位一体改革は、本当に急がなければ駄目だ」「例えば日本型ホワイトカラーという職種は本当に市場価値がない」
要するに、日本のいまの労働者は、伝統的な年功賃金・終身雇用制度のもとで現状に安住し、無価値で役に立たないということです。強烈な悪罵でびっくりです。

退職強要の口実
「市場価値がない」労働者をどうするか。企業の仕組みを「職務型」に変えて、「職務」の能力がない労働者は低評価・リストラ対象になる。「リスキリング」支援が退職強要の口実になると思います。「リスキリング」のための自己都合退職の場合、失業給付を会社都合退職と同じ扱いにする「優遇措置」をとるといいます。経団連は「解雇の金銭解決制度」の創設を急ぐよう要求しています。
岸田政権がかかげる労働市場改革の重点は、企業が必要とする人材育成をめざしながらも、むしろ企業が不要と判断する余剰労働者を容易に抵抗なく放り出す仕組みをつくることにあるというべきです。
労働市場改革でめざすのは「構造的賃上げ」ではなく、雇用不安と賃金低下にほかなりません。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年6月5日付掲載


「三位一体の労働市場改革」は、端的に言うと正社員の雇用形態の破壊、流動化が本当のねらいだと思います。
財界はいま新しい時代に遅れないように既存の産業構造の破壊・転換、もうかる産業の育成に躍起になっています。「新しい資本主義実現会議」の議論で、委員の冨山和彦氏(経営共創基盤グループ会長)がストレートに語っています。
岸田政権がかかげる労働市場改革の重点は、企業が必要とする人材育成をめざしながらも、むしろ企業が不要と判断する余剰労働者を容易に抵抗なく放り出す仕組みをつくることにあるというべき。

賃金の上がる国へ① 「明るい兆し」どこの話? 問われる政治の責任

2024-06-07 07:13:43 | 働く権利・賃金・雇用問題について
賃金の上がる国へ① 「明るい兆し」どこの話? 問われる政治の責任

ジャーナリスト 昆 弘見さん

歴史的な物価上昇が国民生活を直撃するなか、岸田文雄政権は「三位一体の労働市場改革」によって「構造的賃上げ」を実現するといいます。岸田政権の労働改革の問題点と真の賃上げに向けた打開の方向を、労働問題に詳しいジャーナリストの昆弘見さんに寄稿してもらいました。

日本はいま、政治の責任で労働者の賃金を上げることが急務となっています。岸田首相は「経済の再生が岸田政権の最大の使命」だといい、そのために「物価の上昇を上回る賃上げ」に力を入れると強調しています。30年間、賃金が上がらず経済が停滞し、国民の暮らしが悪化するなかで「言は良し」です。しかし、本当に上がるでしょうか。

国民に実感なし
岸田首相は昨年の春闘のとき、「30年ぶりの高水準」(3・6%)だったと宣伝し、夏ごろには実質賃金がプラスに転じるだろうとの予測をふりまきました。しかし、一度もプラスになりませんでした。
賃上げが3・6%だといっても、勤続年数で毎年自動的に上がる定期昇給(約2%)を含んでいるので、実際のべースアップ(増額)は1・6%。物価上昇(3・1%)にとても追いつきませんでした。結局、実質賃金は2022年4月以降、今年3月まで24カ月連続でマイナス。ついに過去最長となりました。
今年の春闘はどうか。大手の5%超え回答に岸田首相はまたもや「明るい兆しが見えてきた」と上機嫌です。しかし労働者の7割が働く中小企業は、3割の企業が賃上げできるかどうか危ぶまれています。雇用者の4割に増えた非正規雇用の労働者の多くは春闘とは無縁です。実質賃金がプラスになるかどうかは物価の動向しだいという心細さです。
岸田首相の発言にたいして、国民からX(旧ツイッター)で「明るい兆し?どこの話?」「明るいどころかお先真っ暗」などの批判が噴出しました。国民の多くは賃上げ実感がありません。これが現実です。
財界とのお手盛り「官製春闘」では、国民が実感できる賃上げは期待できません。日本が、賃金が上がらない国になったのは、財界・大企業が徹底した賃金抑制政策をとり、自民党政府が全面的な応援政治をとってきたことにあります。



奥田碩経団連会長(当時)。トヨタ自動車会長として賃金抑制を先導=2004年11月15日、東京・帝国ホテル

内部留保は更新
象徴的な例をあげます。
2002年に当時の経団連と日経連が統合して日本経団連が発足し、トヨタ自動車の奥田碩(おくだ・ひろし)会長が初代会長に就任しました。この新組織が真っ先に唱えたのが、国際競争力の強化のために「ベースアップは論外」「定期昇給の凍結・見直しも」という賃金抑え込み方針でした(「03年版経営労働政策委員会報告」)。
年明けすぐに衝撃が走りました。トヨタ自動車の労働組合がベースアップ要求の見送りを表明したのです。トヨタ自動車は、02年に日本企業で初めて1兆円を超える経常利益を記録したばかりでした。史上最高の大もうけを達成した世界のトップ企業がベアゼロに。これで春闘が一気に冷え込みました。
どれほど利益がふえても賃金には回さない。利益は内部留保にという「賃金が上がらない国日本」の構図がここでつくられたといえます。ちなみにトヨタ自動車は、5月8日に発表した3月期決算で営業利益が5兆円、内部留保(利益剰余金)が32兆円超と最高益を更新し続けています。
自民党政府は、財界の要求に応えて、派遣労働の自由化、有期雇用拡大など労働法制の規制緩和政策を次々に強行しました。こうして日本は賃金が上がらない国になってしまいました。(つづく)(5回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年6月4日付掲載


岸田首相の発言にたいして、国民からX(旧ツイッター)で「明るい兆し?どこの話?」「明るいどころかお先真っ暗」などの批判が噴出。国民の多くは賃上げ実感がありません。これが現実。
2002年に当時の経団連と日経連が統合して日本経団連が発足し、トヨタ自動車の奥田碩(おくだ・ひろし)会長が初代会長に就任。この新組織が真っ先に唱えたのが、国際競争力の強化のために「ベースアップは論外」「定期昇給の凍結・見直しも」という賃金抑え込み方針。
トヨタ自動車は、02年に日本企業で初めて1兆円を超える経常利益を記録したばかり。史上最高の大もうけを達成した世界のトップ企業がベアゼロに。これで春闘が一気に冷え込みました。
どれほど利益がふえても賃金には回さない。利益は内部留保にという「賃金が上がらない国日本」の構図がここでつくられたと。