2025年02月02日
北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二
[洋上風力発電と漁業 日本の経験#96 スケトウダラ(日本海北部系群)漁場産卵場周辺に磁場ケーブル]
①洋上風力発電が本当にCO2削減に貢献するのか、②洋上風力発電事業自体が再エネ賦課金だのみの不採算事業であり漁業分野を含め満足な補償等に対応がなされるのか、③政府が責任をもったMSP(海洋空間計画)を設定すべきではないのか、④政府がベースラインをしっかり作るような漁業影響調査を指導すべきではないのか。
日本での先行する欧米の洋上風力発電の漁業分野との共栄、相乗効果等の成功体験は、ほとんどが開発事業者による切り抜き発信で、実際に漁業分野の情報にアクセスしていくと様々な問題が報告されている。
世界中の漁業者は共通に、漁業当局に十分なヒアリングを行うことなく、他の部局が主導する地方自治体の前傾姿勢による拙速な取り組みが行われ、事業開発者から漁業分野の科学的知見を理解しようとしない姿勢を感じていると指摘している。スケトウダラ(日本海北部系群)の漁場、重要な資源再生産のための産卵場にもかかわらず檜山沖で計画されている洋上風力発電プロジェクトにおいて、再エネ海域利用法の「有望区域」から外れている乙部沖を南北の海域をつなぐ形で海底直流ケーブルを敷く可能性があると、2025年1月30日付北海道新聞(神田幸様)が伝えている。
洋上風力発電プロジェクトが先行している欧米の漁業界は、風力発電所の建設中の杭打ちの現場近くで魚類が打撲で死んだり、発生する衝撃音で建設が完了した後もしばらくの間、当該地域を資源が避け続けること、杭打ち衝撃音、稼働中のタービンの騒音が、タラ等の産卵行動中のコミュニケーションなど生物学的に重要な手がかりをかき消す可能性があること、さらには、商業的に価値の高い様々な魚種が、送電施設によって形成される電磁場にさらされ、通常の行動能力を失い捕食される機会が増大することが危惧されること等を指摘している。
スケトウダラ(日本海北部系群)の成魚の利用者は、当該沿岸沖合漁業者ばかりでなく、少なくとも北海道の日本海側全体に及び、広域の多くの漁業者となっており、納得のいくプロセスが求められることになる。
現在、スケトウダラ日本海北部系群は、低位な資源評価から、世界中のスケトウダラ漁場において資源開発率(漁獲割合)が10%-20%に設定されているにもかかわらず、この漁場のみ5%を切る極めて低い総許容漁獲量設定で資源回復に取り組んでいる最中となっている。
次は当該記事の転載となる。
2025年01月30日 北海道新聞(神田幸様)【乙部】から転載
洋上風力「有望区域」外の乙部沖 南北つなぐケーブル設置も 道、漁業者らに説明
北海道は2025年1月29日、檜山沖で計画される洋上風力発電用の海底直流ケーブルについて、関係者向け説明会を町内で開いた。乙部沖は再エネ海域利用法の「有望区域」から外れているが、南北の海域をつなぐ形で海底直流ケーブルを敷く可能性があり、これまでの経緯や海底ケーブルの概要などについて説明した。
漁業関係者や各町内会長など町民30人が参加し、非公開で開催。資源エネルギー庁の担当者は、檜山沖で洋上風力発電事業を検討中の事業者にアンケートを行ったところ、檜山沖南北の海域からそれぞれ陸地に送電するよりも、海底直流ケーブルで南北をつなぐ方が、効率がよく、コスト削減につながるとの回答を複数から得たと語った。
敷設が想定される海底ケーブルは直径10~20センチで、なだらかな砂地を掘って複数本設置する可能性がある。着床式風車は水深50メートル程度までの海域に建設できるが、ケーブルは水深数百メートルまで敷設可能という。
道と同庁によると、参加者からは安全性や設置場所の調査などについて質問があり、「電磁波は家庭用磁気治療器程度。ボーリング調査などはしないが、魚礁などを考慮して調査したい」と回答したという。
説明会後の取材に、地元のひやま漁協の幹部は「水揚げ量が落ち、漁業者が高齢化する中で将来のことを考えて涙をのんで洋上風力事業の推進事業に協力している。次のステップに早く進めてほしい」と強調した。
乙部沖を除く檜山沖での洋上風力発電事業を巡っては、同法に基づく法定協議会が設置され、地元自治体などが協議を進めている。協議が整えば同法の「促進区域」に指定され、発電事業者の公募が始まる見通しだ。