BREAKING 2023年11月28日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[EU 主要スケトウダラ製品を含めロシア産水産物の自主的関税割当(ATQ)制度から除外を決定]
EU理事会は昨日2023年11月27日、改定による2024年から2026年の新たな自主関税割当(ATQ)制度から、ロシア産の主要なスケトウダラ等の白身魚を含め水産物製品を除外することを全会一致で決定した。
ベラルーシ産も同様の扱いとなる。
このことにより、2024年1月から、現在のEUの輸入免税はなくなり、13.7%の標準関税が課されることになる。
EUの食品業界は、これらを原料としてフライ等冷凍食品を生産していたため、猶予期間の設定を求めていた。
さらに、関税は原産国に応じて課されるため、この変更は、中国等、第3国加工を通じてEU市場に供給されるロシア産とベラルーシ産の水産物製品にも適用されると見込みとされている。
ロシアのスケトウダラ漁業は、洋上でH&G(ドレス)を生産し中国へ輸出、中国が陸上でフィレ加工してEUへ再輸出することで成立してきた。
また、一方、“投資クオータ”を活用して高次加工戦略により付加価値産業化を目指し、ここ数年、自ら洋上と陸上でフィレ加工を行い、直接、EU市場へ製品供給を拡大する試みを行ってきた経緯があり、双方のルートにとって関税障壁が設定されることになる。
今年2023年1月-10月、前年2022年同期比で輸出数量は11%増加しているが、金額ではわずか1%で、10%のラグが発生している。
一方で、競合他国製品価格は上昇しており、実質的にロシアの輸出価格は下落していると評価されている。
これらの主な要因は、非友好国による制裁措置の影響とされている。
2022年7月、米国はロシア産水産物製品の輸入を全面禁止した。
2022年3月以降、EUはロシアの水産物製品輸出者リストを更新していない。
2022年7月、英国ではロシア産白身魚の輸入関税を引き上げ、35%を設定した。
今回、EUの自主的関税割当(ATQ)制度改定からのロシア産水産物除外が設定され、2024年1月1日から、13.7%の標準関税が課されることになる。
2023年11月28日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[ロシア 対ドル為替変動輸出関税 2023年12月は5.5%]
ロシア政府は、2023年9月21日付決定No.1538により、水産物を含めた広範な商品の輸出関税を、ルーブルとドルの為替レートに連動させて設定、同年10月1日からこれを施行することとした。
これらは水産物製品も対象となっている。
レートは1ドルあたり95ルーブルを超える時、輸出関税は7%となり、80ルーブル未満の時ゼロとなり、この間で月ごとに変動して設定される。
当該輸出関税設定は来年2024年末まで継続される見通しとなっている。
このことにより、2023年10月、翌11月の輸出関税は7%だったが、同年12月は5.5%の設定となる。
2023年11月27日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[カムチャツカ企業と漁業庁の“投資クオータ”をめぐる審理がモスクワ仲裁裁判所で始まる]
原告をロシア漁業庁とし、被告をカムチャツカ地方最大手水産会社“ヴィチャズ・アフト”(Витязь-Авто)とする“投資クオータ”利用等をめぐる審理がモスクワ仲裁裁判所で始まった。
2018年5月、陸上水産加工場の建設と基準を満たす運営が義務付けされた“投資クオータ”第1弾の資源利用契約をロシア漁業庁と“ヴィチャズ・アフト”が締結した。
“ヴィチャズ・アフト”は、陸上水産加工場を竣工させ2020年1月に操業を開始したが、当該クオータで利用した資源の70%以上を製品にしなければならない規則を守らなかった。
2022年12月、ロシア漁業庁は、2年間、この規則を遵守しなかったとして“ヴィチャズ・アフト”に対し18億ルーブルの罰金を求め、これが訴訟に発展した。
“ヴィチャズ・アフト”はロシア国内の経済危機を理由に一部活動を停止した経緯がある。
“ヴィチャズ・アフト”は、漁労から加工、流通小売まで行う垂直統合型ビジネスを行ってきたが、加工部門の一部を停止し、小売店舗を閉鎖した。
新型コロナウイルスのパンデミック以前となる2020年初めまであった小売7店舗は、後に3店舗となり、そして、全て閉店となっていることが同年末に確認された。
しかし、2023年5月、*前農業大臣アレクサンドル・トカチョフの親族が経営するクラスノダール登記の企業がこれを買収したことが伝えられている。
“ヴィチャズ・アフト”は、サケマス、スケトウダラ等を中心に1日あたり120トンの加工処理施設を運営、小売店では、プレミアムの“Mirandel”と大衆向け“Kamvita”の2つのブランドをもって、魚卵、スモーク、フィレ等、様々な製品を販売してきた。
“ヴィチャズ・アフト”の代表者は、加工部門の一部停止と小売店舗閉鎖の最終的意思決定を導き出したものは、ウクライナの事情による一連の制裁措置だと説明し、高金利、自国通貨の変動、他国との関係により、自社ブランドに対する需要減少と生産コストの上昇、とりわけエネルギー・コストの増加を指摘した経緯がある。
2023年9月には、カムチャツカ地方仲裁裁判所が、やはり“投資クオータ”にアクセスした同地方の漁業・水産加工業大手“ソクラ”(Сокра)社に対する、債権者としてのロシア貯蓄銀行“ズベルバンク”(Сбербанк)による破産申し立てを2023年5月に受理、これらを含めた10億ルーブルを超える債権請求を正当なものと認めている。
同行が2021年に“ソクラ”社に38億ルーブルの融資を行ったと伝えられている。
破産管財人にかかる法廷審理が2023年12月4日に予定されている。
報告担当者:原口聖二:*アレクサンドル・トカチョフ
(Александр Ткачёв)
1960年12月23日生まれ クラスノダール地方ヴィセリキ出身。
1983年クバン高等技術専門学校を卒業し、地元の飼料工場に技師として就職、主任技師を経て、1986年ヴィセリキ地区党委員会第一書記になる。
1990年ヴィセリキ飼料工場支配人に選出される。
1993年同工場が民営化に伴い株式会社“アグロコンプレクス”になると同社社長に就任。
1994年クラスノダール地方議会議員を経て、翌1995年ロシア連邦議会下院国家会議代議員に選出され、この間、下院の常任委員長やクバン農業協同組合長などを歴任する。
2000年経済学博士号取得。
2001年-2015年 クラスノダール地方知事。
2015年-2018年 ロシア農業大臣。
2024年11月24日
北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[ロシア極東科学操業評議会 サケマス操業レヴューと来季オ海抱卵スケトウダラ操業プレヴュー]
ロシア極東科学操業評議会が2023年11月23日、カムチャツカ地方で開催され、今年2023年の太平洋サケマス操業のレヴューと、来年2024年明け1月1日からのオホーツク海春季抱卵スケトウダラ操業、所謂“Aシーズン”のプレヴューが行われた。
通信を利用して出席したロシア漁業庁長官シェスタコフは、今年2023年漁期の太平洋サケマス生産量が同国の歴史において2番目となる60万9,000トンに達していることを指摘、関係者の尽力を評価するとともに、全ロシア海洋漁業研究所ヴニロに対して、来年2024年の漁期の準備を早速、開始するよう指示した。
ヴニロ所長コロンチンは、今年2023年漁期の太平洋サケマス操業に関する詳細な報告を行い、地域の産官学の代表者で構成される遡河性魚種生産管理委員会が効果的に機能し、当該操業に関して迅速な意思決定を行ったことを指摘した。
このほか、今年2023年漁期の記録的な太平洋サケマスの生産について業界の代表者は、産業科学の貢献を評価する発言を行った。
またシェスタコフは、来年2024年明け1月1日からのロシア漁業にとって最も重要なオホーツク海春季抱卵スケトウダラ操業、所謂“Aシーズン”の準備の重要性について言及した。
科学的観点から資源に何が起こっているのか、そして漁業努力が十分であるかどうかをモニターする必要があり、漁船団には、さらに新たなトロール漁船が加わって、このことで資源開発率が向上するとの観測を発表、実際、その傾向は、今年2023年春の結果が指し示していると加えた。
ヴニロ太平洋支部チンロ支部長バイタリュウクは、スケトウダラばかりでなくニシンも含めた、来年2024年のオホーツク海での専門化された操業“Aシーズン”の準備状況を報告した。
科学的勧告によると、当該“Aシーズン”は、極東漁業規則に基づく幼魚混獲による漁場移動等のコストは低減され、資源水準が平均を上回り、大型魚の魚群が集約され、楽観的漁期になると見込まれている。
なお、このほか、今回の評議会では、来年2024年のTAC残枠を再配分するためのスキームとアルゴリズムが検討され、これらを極東漁業規則に反映させること等が話し合われた。
2023年11月24日
北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二
[サハリン国境警備局 コルサコフの違法ナマコ処理施設を摘発 外国人4名拘束]
ロシアFSBサハリン国境警備局は、コルサコフ地区において違法なナマコ処理施設を摘発、4名の外国人を拘束した。
この外国人4名は、処理していたナマコが合法的に採捕されたことを確認するための書類を提示することが出来なかった。
違法採捕されたナマコを購入し、処理、加工、そして輸送、販売のための梱包作業まで行っていたものと見られている。
当局職員は、違法な処理施設から1万6,400個体の乾燥ナマコと、加工のための用具等を発見、これらを押収した。
当該資源の損害額は1,120万ルーブルと見積もられている。
当局は、さらに調査活動を進捗させるとしている。
これらの4名の行動は、ロシア連邦刑法第256条第3項“水棲生物資源の違法採捕(漁獲)」、同法第 171 条”事前共謀による集団または組織によって特に大規模に行われた表示のない物品および製品の生産、取得、保管、輸送または販売“、同法第175 条”犯罪的手段によって得たことを知っている財産の取得または売却“等に抵触する可能性がある。
2023年11月20日 秋サケ 科学研究機関予想対実績 サハリン州95%:北海道62% 大規模ラグ
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二
“秋サケ 対科学機関予想実績 サハリン州94%:北海道61% 大規模ラグ
[2023年漁期 40°N以北-180°E以西沿岸 ロシア・北海道 シロザケ漁獲量比較(11月15日)]
近年、北海道に隣接するサハリン州では太平洋サケマス増殖事業において10億尾内外の稚魚放流を実施しており、昨年2022年、初めてシロザケのみで10億粒を超える採卵が行われていて、その内容を問わなければ、数量的に、双方は、ほぼ、同等の増殖事業を展開していることになる。
一般社団法人北洋開発協会(北海道機船漁業協同組合連合会内 担当 原口聖二)は、一昨年2021年漁期から、シロザケの生産において増殖事業に依存度が高い北海道とサハリン州、そして野生の割合が高いその他のロシア極東地方の各沿岸の当該資源漁獲量等の比較を行っている。
今年2023年漁期、40°N以北、180°E以西のロシア極東地方沿岸でのシロザケの生産量は報告日の同年11月15日までに13万1,910トンとなった。
北海道より操業開始が早いサハリン州沿岸のシロザケ漁獲量は、報告日までに3万4,990トン、報告対象日ロ全沿岸の生産の26.5%相当で、これに対し北海道沿岸は、5万2,870トン、40.1%となり、資源の北偏傾向が続いている中、サハリン州と比較し、北海道の資源来遊率が高かく、事業成功度が優位な漁期となっている。
シロザケの漁獲予想に対する実績比較については、サハリン州沿岸は3万7,000トンに対し、開発率が95%で、ほぼ完璧な勧告となった。
一方、北海道の科学研究機関は、今漁期のシロザケの来遊予想について、前年より4%増の3,483万尾と発表している。
昨年2022年の北海道沿岸での漁獲量(2023年1月24日付みなと新聞 道調べ/水産研究・教育機構とりまとめ)が8万3,310トンであったので、当該予想によると、今漁期は約8万5,000トンの生産が見込まれることになるが、報告日現在の漁獲実績は対予想比62%で大規模なラグが発生している。
2023年11月16日
北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二
[#69洋上風力発電と漁業 海外の経験 丁抹オーステッド 更に越プロジェクトからも撤退]
日本での先行する欧米の洋上風力発電の漁業分野との共栄、相乗効果等の成功体験は、ほとんどが開発事業者による切り抜き発信で、実際に漁業分野の情報にアクセスしていくと様々な問題が報告されている。
世界中の漁業者は共通に、洋上風力発電プロジェクトについて、自らが知らない間に選定地が決まって唐突に説明会が始まり、漁業当局に十分なヒアリングを行うことなく、他の部局が主導する地方自治体の前傾姿勢による拙速な取り組みが行われ、事業開発者から漁業分野の科学的知見を理解しようとしない姿勢を感じていると指摘している。
一方、新型コロナウイルスのパンデミックを発端とするサプライチェーンの混乱は、ウクライナ紛争で一段と深刻化しており、輸送コストや原材料費の高騰、金利の上昇、そして、インフレにより、風力発電事業者の利益が圧迫され、内容が悪化しており、このような環境で、漁業分野を含め満足な補償等に対応がなされるのか、はなはだ疑問な状況が伝えられている。
地元にこれらの情報が伝わっているのか理解に苦しみ、日本の洋上風力発電プロジェクトのプロモーションは一周遅れ、いや二周遅れ、或いは確信的背景を想像させるものとなってきている。
洋上風力発電開発事業者として世界最大クラスのデンマークの”オーステッド”(Ørsted)社は、米国、ノルウエーに続き、ヴェトナムのプロジェクトから撤退する。
デンマーク政府が主導するオーステッド・リニューアブル・エナジー・グループは、ヴェトナムにおけるすべての洋上風力発電投資計画を中止することを決定した。
ヴェトナム金融ネットワークは2023年11月21日、オーステッド・ヴェトナムの情報筋の話として、ヴェトナム天然資源環境省に海洋資源の調査・評価の承認申請を提出しない旨を報じた。
両国の共同洋上風力発電プロジェクトの開発活動も実施されない。
2023年11月22日
北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[2023年11月22日付北海道新聞記事に関しての申し入れ ロシア漁業の“乱獲”の根拠はない]
2023年11月22日付北海道新聞は、ロシア漁業による四島周辺での乱獲の懸念を伝えた。
実際にロシア漁業に関る者として知る限り、科学的勧告に基づき配分された漁獲割当の遵守が徹底されており、“乱獲”と指摘する根拠はない旨を同紙に伝えたので報告する。
四島周辺 乱獲加速の懸念 ロ大手、巨大トロール船投入<フォーカス>
2023年11月22日 00:00(11月22日 08:52更新) 北海道新聞
ロシア極東ウラジオストクの水産大手「ロシア漁業会社」が、北方四島周辺を含む極東海域のスケソウダラ漁に巨大な「スーパートロール漁船」の投入を加速させている。従来の約3倍の積載能力があり、2028年までに4隻を約3倍の11隻体制に増強する計画だ。ウクライナ侵攻を続けるロシア政府は国内の産業育成を図る狙いで支援。日本側は四島周辺でのスケソウダラの安全操業の再開が見通せない中、ロシア側の乱獲が加速し、漁業環境がさらに悪化する恐れがある。
今月上旬、同社4隻目のスーパートロール船が四島周辺で試験運転を終え、出漁した。船は全長108メートル、幅21メートルで、最大積載量を示す重量トンは約6千トン。船内ですり身や魚油などの加工品を製造する能力を持ち、同社幹部は「過酷な天候条件でも操業できる強い船だ」とアピールする。
同社は11年、プーチン大統領の盟友でオリガルヒ(新興財閥)のゲンナジー・ティムチェンコ氏の子息らが設立。22年の漁獲量は国内最多の約28万3千トンで、8割をスケソウダラが占める。スーパートロール船は21、22両年に1隻ずつ投入し、23年は5月に続いて2隻目。スケソウダラの最盛期の今年1~4月に国内で操業した116隻中、同社の漁船が漁獲量のトップ3を独占した。
スーパートロール船が相次いで投入される背景には、ロシア政府が17年に導入した投資制度がある。政府が企業に対し、漁獲枠を優先的に与える代わりに漁船の更新や加工場整備の投資を義務付けるものだ。
■輸出産業へ転換
ロシアは14年のウクライナ南部クリミア半島の併合後、欧米などの制裁に対応するため、自国産業の育成を強化。世界有数の水揚げ量を誇るスケソウダラ漁も近代化を進め輸出産業への転換を狙う。かつては老朽漁船が多く設備などの遅れから加工品の大半を輸入に頼ったが、同社幹部は10月、中国で開かれた水産展示会で「新しい漁船団の最新技術は、最高品質の製品を保証する」と強調した。
極東では北方領土の水産・建設業「ギドロストロイ」も投資制度を活用し、21~22年に色丹島でスケソウダラの加工場を稼働させ、2隻のトロール漁船に加工能力を備える改修を実施。極東の水産業は、加工設備の拡充に伴って漁獲量も増える循環が生まれている。
■「即時停止」要請
こうした動きに道東の漁業者は懸念を強める。1990年代以降のスケソウダラの資源量減少はロシアの乱獲が一因とされる。さらに今年1月にロシア政府が対ロ制裁を科した日本に反発し、四島周辺での日本漁船による安全操業の政府間協議を拒否。年千トン近い漁獲量が認められていた四島周辺のスケソウダラ刺し網漁は出漁できなくなった。
根室管内羅臼、標津、別海3町の関係者は10月中旬、道や外務省、水産庁などを訪れ「ロシアのトロール漁船の即時停止」を求めた。要請書によると、10年以降、根室海峡で年間延べ100~200隻超のロシアのトロール漁船の操業が常態化。「根こそぎ取る」ロシアに対し、資源保護も重視する地元漁業は先細り、羅臼の22年のスケソウダラの漁獲量はピーク時の1割に満たない7341トンにまで落ち込んでいる。
取材に対し、羅臼漁協の萬屋昭洋組合長は「海はロシアだけのものじゃない」と即時停止を求め、政府は資源管理の観点から「ロシアのトロール漁船の操業に問題があることは常時伝えている」(外務省ロシア課)と説明。ただ、安全操業を巡る日ロの政府間協議も途絶える中、漁業関係者からは「ロシアが何をしてもこちらではどうしようもない」と諦めの声も漏れる。(本紙取材班)
■日ロ 厳しさ増す漁業協力
隣接する日ロ両国は旧ソ連時代から漁業協力を続けてきたが、近年はロシア側が強硬姿勢を強め、日本側には厳しい状況が続く。
ロシアは1985年の日ソ漁業協力協定に基づく日ロ双方の200カイリ内でのサケ・マス漁に関して、2016年からロシア水域での日本漁船などの流し網漁を禁止した。環境保護が理由だったが、ロシアのウクライナ南部クリミア半島併合に日本が対ロ制裁を発動したことへの反発や、ロシア国内での漁獲を増やす思惑もあったとされる。
昨年2月のロシアのウクライナ侵攻後も四つの漁業協力枠組みのうち、地先沖合漁業と日本200カイリ内のサケ・マス流し網漁、北方領土・貝殻島周辺のコンブ漁の交渉は妥結。いずれも日本側から協力費を得られるなど、ロシア側の利益が大きいと判断したとみられる。来年の地先沖合漁業に関しても年内の交渉入りに向け政府間で調整が続く。
一方、北方四島周辺水域の安全操業も日本側が協力金などを支払うが、「非友好国」の日本の漁船がロシア側の管轄権に触れない形で操業することに治安当局などの反発が根強い。操業再開に向け、ロシア側が政府間協議に応じる見通しはたっていない。(本紙取材班)
2023年11月21日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[ロシア 深海カニ資源利用契約切れ対象漁獲割当オークション不成立と外国人投資法]
資源利用契約が終了した深海カニの残枠4ロットを対象とするカニ漁獲割当オークション第1弾の追加として、2023年11月22日、当該オークションが実施される予定だったが、参加申込期限となる同17日までに応札申請者がなく、不成立となったことをロシア漁業庁が明らかにした。
上場が発表されたのは極東海域のベニズワイガニとトゲズワイガニの漁獲割当4ロットだった。
オークションの漁獲割当落札者にはロシア国内造船所において全長50m以上のカニ漁船の建造が義務付けされることとなっていた。
今回、オークションが設定された背景には、沿海地方のテフィダ(Тефида)社が、“国防•安全保障戦略産業に対する外国人投資手続法” (外国人投資法)に抵触し、ロシア漁業庁から資源利用契約が打ち切られ、残枠が発生したものと見られている。
2020年10月30日に開催された当該第1弾のオークションで、テフィダ(Тефида)社が深海ガニ4ロットに応札申請、他に応札者がなく、規則に基づき、スタート・プライスでこれらを獲得していた。
しかし、2022年3月、ロシア独占禁止庁が、同社が米国資本により不当に管理されていると認定、その後、訴訟判決結果等、一連の経緯を受け、ロシア漁業庁は、2023年7月、資源利用契約を打ち切った経緯がある。
ロシアでは2022年10月7日付連邦法No.389-FZで、外国人投資法が改正され、漁業活動への外国人資本参加が完全事前承認制となっており、これは漁獲割当配分を受ける漁労事業ばかりでなく、加工、積替え、荷揚、輸送、保管等、漁業活動にかかるすべてを対象としている。
これより先の2021年7月にも、やはり“外国人投資法”の改正が行われており、漁業分野の外国人資本参加の事前承認の義務付け上限を、50%から25%とする規制強化がなされていた。
2023年11月17日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[2023年 ロシア水産物輸出 一連の制裁措置で数量増も金額伸びず]
ロシアは漁業生産量において世界第5位であり、その製品も国際市場において需要が確保されている。
この中にあって、スケトウダラ、ニシン、そしてタラが上位3魚種を占めている。
しかし、現在、水産物製品輸出数量が増加傾向にあるものの一連の制裁措置により金額は伸びていない。
今年2023年1月-10月、前年2022年同期比で輸出数量は11%増加しているが、金額ではわずか1%で、10%のラグが発生している。
一方で、競合他国製品価格は上昇しており、実質的にロシアの輸出価格は下落していると評価される。
これらの主な要因は、非友好国による制裁措置の影響といえる。
2022年7月、米国はロシア産水産物製品の輸入を全面禁止した。
2022年3月以降、EUはロシアの水産物製品輸出者リストを更新していない。
2022年7月、英国ではロシア産白身魚の輸入関税を引き上げ、35%を設定した。
また、2022年からEUとノルウエーはロシア船舶の入港を制限している。
更にEU理事会は、来年2024年1月に発効する自主的関税割当(ATQ)制度改定からロシアとベラルーシの水産物を除外することを提案しており、採択された場合、現在の免税ではなく、13.7%の標準関税が課されることになる。
ロシア産スケトウダラ製品輸出価格は2023年に10%下落している。
H&G(ドレス)はKgあたり1.2ドルから1.08ドル、フィレは3.65ドルから3.3ドルとなった。
ロシア産スケトウダラのフィレの輸出価格は、米国産同製品価格とのラグが顕著となっており、2022年、平均価格はロシア産が3%下回っていたが、今年2023年は19%開いており、kgあたりロシア産3.3ドルに対し米国産が3.9ドルとなっている。
スケトウダラのすり身価格はフィレほどのラグがないが、ロシア産2.2ドルに対し米国産が2.3ドルとなっている。
ロシア産水産物製品は、制裁措置による市場制限や物流不全により、海外市場において低価格での販売を余儀なくされ、今年2023年、平均輸出単価が10%低下している。
加えて、ロシア政府は、2023年9月21日付決定No.1538により、水産物を含めた広範な商品の輸出関税を、ルーブルとドルの為替レートに連動させて設定、同年10月1日からこれを施行することとした。
レートは1ドルあたり95ルーブルを超える時、輸出関税は7%となり、80ルーブル未満の時ゼロとなる。
この輸出関税設定は来年2024年末まで継続される見通しとなっている。
これらのことから、ロシア漁業分野については、さらに財務内容が悪化する可能性が指摘されている。
2023年11月17日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二
[ロシア 2023年漁期 南クリール海域イワシ漁獲勧告量期中見直し 88万4,000トンに]
今年2023年漁期、ロシア漁業者によるイワシの漁獲量は、同年11月12日(同年1月-2月の日本EEZ操業を含む)までに42万7,030トンとなっている。
ロシア漁業庁は、今般、科学的勧告と漁業実態等から、今漁期の南クリール海域の漁獲勧告量を期中見直しして、40万トン上積み、計88万4,000トン以上に設定すると発表した。
なお、同庁は先に、来年2024年の当該資源の漁獲勧告量を発表している。
2023年11月16日
北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二
[#68 洋上風力発電と漁業 海外の経験 デンマーク オーステッド 相次ぐPJ撤退 経営陣刷新]
日本での先行する欧米の洋上風力発電の漁業分野との共栄、相乗効果等の成功体験は、ほとんどが開発事業者による切り抜き発信で、実際に漁業分野の情報にアクセスしていくと様々な問題が報告されている。
世界中の漁業者は共通に、洋上風力発電プロジェクトについて、自らが知らない間に選定地が決まって唐突に説明会が始まり、漁業当局に十分なヒアリングを行うことなく、他の部局が主導する地方自治体の前傾姿勢による拙速な取り組みが行われ、事業開発者から漁業分野の科学的知見を理解しようとしない姿勢を感じていると指摘している。
一方、新型コロナウイルスのパンデミックを発端とするサプライチェーンの混乱は、ウクライナ紛争で一段と深刻化しており、輸送コストや原材料費の高騰、金利の上昇、そして、インフレにより、風力発電事業者の利益が圧迫され、内容が悪化しており、このような環境で、漁業分野を含め満足な補償等に対応がなされるのか、はなはだ疑問な状況が伝えられている。
洋上風力発電開発事業者として世界最大クラスのデンマークの”オーステッド”(Ørsted)社は、米国でのプロジェクトに次いで、ノルウエーでのプロジェクトからも撤退する。
”オーステッド”は、投資家の信頼回復を目的に今般、経営陣の刷新を行った。
財務責任者のダニエル・レルプと最高執行責任者のリチャード・ハンターが退任、それぞれ、欧州事業の最高責任者であるラスムス・アーボーと、取締役会のメンバーであるアンドリュー・ブラウンが暫定的に着任する。
2021年からオーステッドの最高経営責任者を務めるマッズ・ニッパーは、“新しくてこれまでとは異なる能力”が必要だと述べた。
デンマーク政府が50%以上を所有する同グループの株価は今年2023年に入って約55%下落している。
2023年11月16日
北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二
[#67 洋上風力発電と漁業 海外の経験 米国 丁抹オーステッド 次は諾プロジェクトから撤退]
日本での先行する欧米の洋上風力発電の漁業分野との共栄、相乗効果等の成功体験は、ほとんどが開発事業者による切り抜き発信で、実際に漁業分野の情報にアクセスしていくと様々な問題が報告されている。
世界中の漁業者は共通に、洋上風力発電プロジェクトについて、自らが知らない間に選定地が決まって唐突に説明会が始まり、漁業当局に十分なヒアリングを行うことなく、他の部局が主導する地方自治体の前傾姿勢による拙速な取り組みが行われ、事業開発者から漁業分野の科学的知見を理解しようとしない姿勢を感じていると指摘している。
洋上風力発電開発事業者として世界最大クラスのデンマークの”オーステッド”(Ørsted)社は、米国でのプロジェクトに次いで、ノルウエーでのプロジェクトからも撤退する。
ノルウエーでの洋上風力発電プロジェクトの入札を予定していたコンソーシアムから事前資格期限前に撤退したとパートナーの1社が2023年11月13日発表した。
これより先に“オーステッド”は、2023年10月31日、同年第3四半期に284億デンマーク・クローネ(6,100億円)の減損を計上したことを明らかにして、米国の主力プロジェクト“オーシャン・ウィンド”を中止することを決定している。
“オーステッド”のノルウエーのパートナー“ボヌール”(BONHR.OL)は、“オーステッド”から、ポートフォリオへの投資を優先するため、同国での洋上風力発電開発プロジェクト参加から撤退し、そのための提携も打ち切るとの通報があったことを明らかにした。
新型コロナウイルスのパンデミックを発端とするサプライチェーンの混乱は、ウクライナ紛争で一段と深刻化しており、輸送コストや原材料費の高騰、金利の上昇、そして、インフレにより、風力発電事業者の利益が圧迫されていることが指摘されている。