ロシア漁業ニュースヘッドライン

北海道機船漁業協同組合連合会
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一般社団法人北洋開発協会

“資源管理はその合理的利用とパッケージでなければ経済的怠け者(サボタージュ)となる”“日本の保守的なTAC設定との乖離は益々大きくなる 日本海4万トン超え 対日本2.7倍に”

2023-08-31 09:25:17 | 日記

 

2023年08月28日

リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二

[ロシア農業省 北海道接続西サハリン海域スケトウダラ 科学勧告に基づきTAC期中見直上積み決定]

“資源管理はその合理的利用とパッケージでなければ経済的怠け者(サボタージュ)となる”

“日本の保守的なTAC設定との乖離は益々大きくなる 日本海4万トン超え 対日本2.7倍に”

ロシア農業省は、今年2023年漁期、科学研究機関の勧告に基づき、同年8月14日付命令No.683により、北海道接続西サハリン海域スケトウダラのTAC9,000トンを期中見直しして、5,000トン上積み、1万4,000トンに引上げることを決定した。

先に、全ロシア海洋漁業研究所ヴニロ・サハリン支部サフニロは、西サハリン海域の当該資源が極めて高水準な状況にあることを発表していた。

これにより、日本の資源評価のスケトウダラ日本海北部系群が往来しているロシアEEZ日本海(沿海地方海域/西サハリン海域)のTAC設定は4万700トンに達し、日本EEZの1万5,300トンの2.7倍の設定となった。

また、さらに来年2024年のロシアEEZ日本海(沿海地方海域/西サハリン海域)の当該資源のTACについては4万9,400トンとする科学的勧告が既に行われており、日本の保守的なTAC設定との乖離は益々大きくなることになる。

 

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日本EEZ“またがり資源”韓国近海スルメイカ操業 2023年度漁期漁業種別TAC設定

2023-08-30 16:13:40 | 日記

 

2023年09月01日 

リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二

[日本EEZ“またがり資源”韓国近海スルメイカ操業 2023年度漁期漁業種別TAC設定]

韓国漁船による自国EEZにおけるスルメイカ操業の2023年度漁期(管理期間2023年7月-2024年6月)の漁業種別TAC、留保枠、そして実証試験枠が、今般、別表のとおり発表された。

正式TACの総枠は、留保枠を含め既報のとおり7万9,000トンから変更なく、前年度比の92%、新設された実証試験枠を含めると約8万1,000トンで95%となる。

大型トロールと二艘引き西海トロールが、東経128度以西に限定されている操業海域において、約3万トンを確保し、加えて新たに西南海区の二艘引き中型トロールに約2,000トンの実証試験枠が設定され、朝鮮半島西部沿岸沖合が全体の4割を占めることになる。

引き続き、これまで日本の資源評価において、この動向が、ほぼ論議の対象外となっていることが問題点として指摘されるところとなる

2022年度漁期(管理期間2022年7月-2023年6月)は、当該生産量2万7,200トン、前年度比において63%、TAC設定8万5,590トンに対する開発率32%でこれを完了した。

主要漁業沖合イカ釣りのTACは期中見直しされ、2,200トン上積みされたが、開発率は35%、1万トンにとどかず、前年度同期比66%の8,560トンにとどまった。

なお、2020年度漁期となる2021年1月1日から、近海網漁船にもイカのTAC管理が導入されており、2022年度漁期は、前年度同期を12%上回る4,090トンを漁獲、当初枠のTAC開発率が100%に達し、留保枠も利用されるところとなった。

*日本の自国EEZの2022年-2024年のTACは、漁獲シェアが高かった2007年当時のデータを参照し生物学的許容漁獲量(ABC)中60%を日本1国で獲れるとの前提で算定した値とした上で、7万9,200トンの設定となっている。

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#52 洋上風力発電と漁業 海外の経験 米国 NJ州 クジラ座礁問題等を受け洋上風力支持急落

2023-08-30 11:15:52 | 日記

 

2023年09月01日

北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

[#52 洋上風力発電と漁業 海外の経験 米国 NJ州 クジラ座礁問題等を受け洋上風力支持急落]

日本での先行する欧米の洋上風力発電の漁業分野との共栄、相乗効果等の成功体験は、ほとんどが開発事業者による切り抜き発信で、実際に漁業分野の情報にアクセスしていくと様々な問題が報告されている。

米国北東部ニュージャージー州では、クジラの座礁問題等を受け、洋上風力発電プロジェクトに対する市民の支持が急いると、同国漁業界紙が伝えている。

モンマス大学が行った最新の世論調査では、洋上風力発電プロジェクトについて、2019年の同調査と比較した時、支持が急落していることが分かった。

2019年の調査では支持が76%だったが、最新の調査では54%まで低下、14%だった反対が40%まで上昇している。

この支持層の低下は、リゾート沖に見えるタービン群の将来の景観が、地域の夏の観光経済にどのような影響を与えるか等について、長い論議が続いた後に起こった。2022年12月からニュージャージー州とニューヨーク州の海岸でクジラの座礁が相次ぎ、洋上風力発電プロジェクト反対派は、これを調査を行っていた船舶と作業に関連付けている。

モンマス大学の世論調査のまとめによると、住民の10人中4人は洋上風力発電プロジェクトが州の夏の観光経済に悪影響を与える可能性があると考えている。

また、約半数が海岸に大量に打ち上げられるクジラと関連付けており、さらに、洋上風力発電プロジェクトが州の大幅な雇用増加につながると考えている市民はほとんどいないとしている。

加えて、クジラ座礁への懸念から洋上風力発電プロジェクトに対する疑問が生じており、調査対象者の約半数が風力発電プロジェクト調査作業要因である可能性があると考えていて、特に、20%はそれを確信していると指摘している。

2023年1月半ば、米国北東部沿岸に、2ケ月間たらずで7頭の死んだクジラが打ち上げられていることから、洋上風力発電プロジェクトを停止するよう求める声が高まった。

漁業関係者は、クジラが打ち上げられたのが、洋上風力発電所が原因だと断言することはできないが、言えることは、この2ケ月たらずの間に、ニュージャージー州に打ち上げられた7 頭のクジラはすべて、ニュージャージー沖の風力発電所の地質作業が最も強まっている期間だと指摘した。

ニュージャージー州選出上院議員ビンス・ポリスティナは、クジラの死因を特定できるまで、洋上風力開発に関連するすべての作業を一時停止する必要があると語り、7頭のクジラの死が単なる偶然であるとは信じがたいと言及した。

米国海洋大気庁(NOAA)は、これまでのところ、ニュージャージー州とニューヨーク州での最近のクジラの死のほとんどを占めている種はザトウクジラだが、洋上風力発電開発作業の影響かは判明していないとした。

しかし、この沿岸沖合における数少ない変化は、洋上風力発電所開発のための調査活動で、爆撃のような音で海底を叩いており、激しい音がクジラの聴覚器に損傷を与える可能性があることが知られており、浅瀬への座礁の可能性が指摘されている。

 

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2023年漁期 40°N以北-180°E以西沿岸 ロシア・北海道 シロザケ漁獲量比較を開始する 北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

2023-08-30 02:49:23 | 日記

 

2023年08月30日

リポート 北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

[2023年漁期 40°N以北-180°E以西沿岸 ロシア・北海道 シロザケ漁獲量比較を開始する]

近年、北海道に隣接するサハリン州では太平洋サケマス増殖事業において10億尾内外の稚魚放流を実施しており、昨年2022年、初めてシロザケのみで10億粒を超える採卵が行われていて、その内容を問わなければ、数量的に、双方は、ほぼ、同等の増殖事業を展開していることになる。

一般社団法人北洋開発協会(北海道機船漁業協同組合連合会内 担当 原口聖二)は、一昨年2021年漁期から、シロザケの生産において増殖事業に依存度が高い北海道とサハリン州、そして野生の割合が高いその他のロシア極東地方の各沿岸の当該資源漁獲量の比較を行っており、今年2023年漁期も北海道の本格的シロザケ操業を迎え、これを開始することとする。

 

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ロシア スケトウダラすり身 中国・韓国市場での売上高で米国を抜く

2023-08-29 15:34:06 | 日記

 

2023年08月29日

リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二

[ロシア スケトウダラすり身 中国・韓国市場での売上高で米国を抜く]

今年2023年の報告日、中国・韓国市場にけるスケトウダラすり身売上高においてロシアが米国を追い越したと全ロシア漁業者水産物輸出者協会ヴァルペ会長ズベレフが発表した。

世界市場のすり身価格は昨年2022年に比べ20%-30%低下したが、同じ品質でロシア製品の方が安価なため、アジア市場は米国産のかわりにロシア産のスケトウダラすり身を購入するようになったとしている。

FAOのデータではと今年2023年のすり身価格は20%-30%低下、第1四半期の売上高は10%減少した。

専門家らは、日本とヨーロッパの両方ですり身の需要が減少しており、双方の消費者が不必要な支出をすべて削減した結果だと指摘している。

一方で、アジア市場では米国製品の需要が減少しているものの、ロシア製品の需要が増加しており、これは、ロシアのすり身メーカが低コストで要求される品質の水準を満たす製品を供給しているからだと説明している。

今年2023年上半期の中国のロシア産スケトウダラすり身の輸入量は9,628トン、韓国の同輸入量は2,148トン、計1万1,776トンで、これに対し米国は、9,146トンだった。

一方、昨年2022年同期の両国の当該輸入量は、ロシア産659トンに対し米国産1万3,831トンだった。

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ロシア漁業ニュースヘッドライン 2023年09月  http://kisenren.com

2023-08-29 12:13:34 | 日記

  2023年08月29日

 

ユーザー 各位

 

拝啓 時下ますますご隆昌のこととお慶び申し上げます。日頃は格別のお引き立てを賜り厚く御礼申し上げます。

 さて、ロシア漁業庁長官シェスタコフは、2023年8月16日、大統領プーチンと会談を行い、投資目的漁獲割当等、漁業分野の活動進捗状況を報告しました。

   シェスタコフは、今年2023年漁期、ロシア漁業の生産量が350万トン以上に達し、前年2022年同期を13%上回っており、自国EEZ外でも生産が増加して、当該複合体が着実に稼働していることを強調、投資目的漁獲割当が、付帯する条件としてのプロジェクトにより、漁獲物の最大80%まで加工処理する能力を創設して、原料ベースでの製品輸出依存からロシア漁業を脱却させることになる等と説明しました。

  しかし、シェスタコフはロシア漁業が成長している一方で、一連の制裁措置により、外国による船舶修理への対応状況が悪化しており、自国のこの能力の強化の重要性を指摘、産業省と協力して問題に取り組んでいるものの、関係するすべての部門の統合的なアプローチと作業の調整が必要だと説明を加えました。

  今月号においては、一連の制裁措置下におけるロシア漁業のこれら対応、取り組み等に関する情報を引き続き TopNews としてご報告申し上げます。

  なお、ロシア政府は、投資目的漁獲割当第2弾設定のための法令整備等を加速させています。これら関連情報もあわせてお知らせ申し上げます。

                                                          敬具

(国際漁業対策事業部;原口聖二)

 

TopNews ロシア漁業庁長官 投資目的漁獲割当等 漁業分野の活動進捗状況をプーチンへ報告

・日本EEZイトヒキダラ漁獲割当オークション また不成立(ロシア漁業政策および漁業協定関連等外15件)

・カニ漁獲割当オークション第2弾 年内実施見込み(投資クオータ/漁獲割当オークション関連外7件)

・ロシア漁業者漁獲量 350万トンとなる(8月17日)(ロシア漁業生産/貿易動向関連外7件)

・北海道接続西サハリン海域スケトウダラ 高水準資源評価(スケトウダラ・マダラ・ニシン等操業関連外3件)

・猛烈な南北格差で進捗するロシア漁業者カラフトマス操業(太平洋サケマス操業関連外23件)

・2023年漁期 ロシア漁業者イワシ・サバ操業概況(イワシ・サバ サンマ漁業関連外10件)

・ペルー・ショック 引き続き上昇するロシアのフィッシュミール価格(その他ロシア漁業関連情報等外12件)

・韓国冷凍スケトウダラ市場動向 2023年8月 下降傾向も高水準維持(韓国スケトウダラ市場関連)

・中国 南シナ海と東シナ海の禁漁期間が明ける(韓国・中国等 東アジア漁業関連)

・英国・EU 漁業管理の改善に関する3項目に合意(ポスト英国EU離脱Brexit関連外1件)

・洋上風力 米英コスト上昇で立て続けにプロジェクト中断(洋上風力発電と漁業 海外の経験外7件)

 

計97オリジナル報告

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洋上風力発電と漁業 海外情報から見えた実相と北海道の沖合底びき網漁業 月刊アクアネット誌 2023年8月

2023-08-26 14:06:51 | 日記

 

月刊アクアネット誌 2023年8月

洋上風力発電と漁業 海外情報から見えた実相と北海道の沖合底びき網漁業

原口 聖二(はらぐち せいじ)

北海道機船漁業協同組合連合会 常務理事。58歳。北海学園大学経済学部卒業後1988年入会。2012年より現職。北洋転換遠洋底びき網漁船・沖合底びき網漁船のロシア海域操業を一貫して担当。民間ベースと政府間ベースの漁業交渉のため訪モスクワ70回超。現在、水棲生物資源の管理保全と合理的利用、漁業分野の経済等への貢献に関する海外の経験と日本のあり方に強い関心をもって任務にあたっている。

 筆者は、漁業に関わる立場から洋上風力発電の動向に関心を持ち、昨秋から欧米の漁業分野の業界紙のサイト等へアクセスして、“洋上風力発電と漁業”に関する情報の収集と発信を行ってきた。その中で、日本にはこれまで伝わっていなかった様々な影響と問題提起が存在していることが分かってきたので、その一端を報告したい。

「きせんれん」と沖底船

 北海道機船漁業協同組合連合会(愛称:きせんれん)は、沖合底びき網漁船と呼ばれる160トンクラスの漁船33隻が所属する水産業協同組合法に基づく連合会組織で、札幌に事務所をおいており、小樽、稚内、釧路の各機船漁業協同組合、枝幸、紋別、網走、広尾、日高、室蘭等の各漁業協同組合が会員となっている。漁船団は、一部、ロシアとの政府間協定に基づく相手国水域での漁獲割当を有しているが、主に日本の排他的経済水域(EEZ)で、道内10基地を根拠に、年間15万〜20万tのスケトウダラ、ホッケ、その他底魚類を漁獲し、地元水産加工業界等へ原料魚を供給している。

開発事業者発信の成功体験

 筆者は、この連合会に勤務し、漁業に関わる者として洋上風力発電の動向には一定の関心を持ってきたが、近年の洋上風力発電への開発事業者の取り組みの進捗は、自らの予想をはるかに超えており、地方自治体の前傾姿勢がこれを加速させているように感じるところがあった。当該沿岸沖合の既存の経済的利用者となる「漁業者への配慮」「十分な説明」「共存共栄」等のフレーズに加え、魚礁効果等、日本における報道では、先進地とされる欧米での成功体験が並んでいたが、これらは一様に開発事業者の発信によるものばかりとなっていた。

 このことから筆者は、2022年の秋から、洋上風力発電と漁業に関する欧米の漁業分野の業界紙のサイト等へアクセスし 、「洋上風力発電と漁業 海外の経験」というタイトルのブログを始め、情報の収集と発信を行うこととした。その中で、英国、アイルランド、ノルウェー、デンマーク、スウェーデン、フランス、オランダ、そして米国等のプロセスは、必ずしも成功しているとは言い難く、日本にはこれまで伝わっていない、様々な影響と問題提起が存在していることが分かるところとなった。

欧米の漁業界による危惧と批判

 2023年3月、米国の漁業団体らで構成される“責任ある沖合開発連盟”(RODA)、米国海洋大気庁(NOAA)、そして米国内務省海洋エネルギー管理局(BOEM)は、洋上風力発電開発が漁業と海洋環境にもたらす影響について、これまでの情報等の包括的な報告をとりまとめている。それより先の2020年11月には、ノルウエー海洋研究所(HI)が、やはり、洋上風力発電開発が漁業等にもたらす影響について報告書を発表している。

 欧米の漁業界が指摘しているのは、風力発電所の建設中の杭打ちの現場近くで魚類が打撲で死んだり、発生する衝撃音で建設が完了した後もしばらくの間、当該地域を資源が避け続けること、杭打ち衝撃音、稼働中のタービンの騒音が、タラ等の産卵行動中のコミュニケーションなど生物学的に重要な手がかりをかき消す可能性があること、さらには、商業的に価値の高い様々な魚種が、送電施設によって形成される電磁場にさらされ、通常の行動能力を失い捕食される機会が増大することが危惧されること等だった。

 また、米国漁業界紙は、政府が政治的利益、第三者団体が寄付金、そしてエネルギー会社が耐用年数の短い大規模な洋上風力発電で巨額の利益を、それぞれ求め、勝手に行動していると批判しており、同国漁業界は不信感をあらわにして、複数件の訴訟も始まっている。

 ノルウエー漁業界紙によると、同国漁業界が、洋上風力発電プロジェクトの候補地選定のプロセスが政治的圧力と無責任な地方自治体の決定に基づいていると批判しているほか、ヨーロッパの北部漁業者同盟も、天然資源をどのように最大限に利用できるかについて、真の対話が必要であり、それは、伝統的な海の利用者の声を平等に尊重するためのものだとして、各国政府に対し、食料安全保障の考慮と海洋環境の健全性等を求めるための行動の開始を決議した。

 これら全て、世界中の漁業者が共通に指摘していることは、

★当該沿岸沖合を独占利用しようなどとは全く考えていない。

★自らが知らない間に選定地が決まり唐突に説明会が始まる。

★漁業当局に十分なヒアリングを行うことなく、他の部局が主導する地方自治体の前傾姿勢による拙速な取り組み。

★事業開発者から漁業分野の科学的知見を理解しようとしない姿勢を感じている。

この4点に集約される。

漁業分野の科学的勧告が置き去りにされている

 温暖化による漁場形成の変化に翻弄されている漁業者において、カーボンニュートラルを目指すエネルギーの開発に対して異論を唱える者は、ほぼゼロと言っても過言ではないと筆者も感じている。ではなぜ、世界中の漁業者が、共存共栄こそが歩むべき道と理解しながらも、多くのネガティヴな指摘をするのかというと、やはりプロセスにおいて、“漁業分野の科学的勧告が担保されるのか”、“これが置き去りにされている”と、大きな不安を感じているからだと考えている。我々漁業界がこれまで長い時間、科学研究機関と交流し、資源の保全管理と合理的利用を行ってきたことに対する理解を求める必要があり、共存共栄のための相互理解がそのプロセスにとって重要だと指摘したい。

ゼロサムゲームの構図にも

 日本政府は、2023年2月、洋上風力発電の建設場所をEEZまで拡大するための法整備を検討していく方針を示した。北海道の沖合底びき網漁業は、駆け廻し漁法とオッター・トロール漁法で、沿岸側で操業が禁止されているラインの外側(沖側)で操業を行っている。これは、沿岸漁業との棲み分け調整に加え、文字通り洋上を“駆け廻り”、沖合底びき網漁業が広範な海域を利用することを特徴としているためで、また同時に、利用する底魚資源の漁場形成も広範にわたっている実態がある。

 仮に洋上風力発電プロジェクトが沖合底びき網漁業の利用海域の一部を求めた時、我々の操業に魚礁効果はほぼ無縁であり、建造物を縫って操業することもできず、動力を失った時の衝突リスク等、おおよそメリットの想定は不可能で、海域が競合する場合には、共存共栄とはほど遠い、ゼロサムゲームの構図になると予想される。さらなる問題点は、当該海域における操業機会の喪失ばかりではなく、回遊する資源の再生産等への重大な影響が存在していることだ。

 我々の漁業基地、北海道でも、先の統一地方選挙において鈴木直道知事が洋上風力発電の導入促進を公約に掲げ再選を果たした。経済産業省と国土交通省は、洋上風力発電に関するセントラル方式の一環として、2023年度に実施を予定する調査対象区域について、都道府県からの情報提供と第三者委員会における意見を踏まえ、北海道日本海側の「岩宇(がんう)・南(みなみ)後志(しりべし)地区沖」、「島牧(しままき)沖」、そして「檜山(ひやま)沖」の3区域を初めて選定したと発表した。

 北海道の沖合底びき網漁業にとって、最も重要な漁獲対象資源はスケトウダラだが、現在、北海道日本海側資源(日本海北部系群)は、低位な資源評価から、世界中のスケトウダラ漁場において資源開発率(漁獲割合)が10〜20%に設定されているにもかかわらず、この漁場のみ5%を切る極めて低い総許容漁獲量設定で資源回復に取り組んでいる最中となっている。一方で、上述の調査海域には、重要なスケトウダラ資源再生産のための産卵場が含まれており、成魚の資源利用者は、調査海域漁業者ばかりでなく、少なくとも北海道の日本海側全体に及び、広域の多くの漁業者となる。

真の共存共栄に向けて

 今回、先進地とされる欧米の洋上風力発電への対応に関する漁業分野の経験の一部を紹介することができた。現時点(2023年7月)において、北海道日本海のプロジェクト、その他の沿岸沖合のプロセスの今後の展開に関する詳細な情報に接していないが、洋上風力発電とのゼロサムゲームを回避し、真の共存共栄を目的に、科学研究機関を交えた論議の場と、納得のいく科学的勧告を強く求めるべく、関係者への働きかけ、我々の業界の立場の表明を開始したところとなっている。

 

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#51洋上風力発電と漁業 海外の経験 米国 漁業界 エネルギー管理当局が耳を傾けない

2023-08-25 21:22:34 | 日記

 

2023年08月25日

北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

[#51洋上風力発電と漁業 海外の経験 米国 漁業界 エネルギー管理当局が耳を傾けない]

“望むだけ会議を開催することと実際に漁業界の意見に耳を傾けることは別だ”

日本での先行する欧米の洋上風力発電の漁業分野との共栄、相乗効果等の成功体験は、ほとんどが開発事業者による切り抜き発信で、実際に漁業分野の情報にアクセスしていくと様々な問題が報告されている。

米国海洋エネルギー管理局(BOEM)は、先週(2023年8月13日からの週)、洋上風力発電開発の候補として太平洋岸北西部オレゴン州のブルッキングスとクースベイの沿岸沖合を指定する提案を発表した。

この地域は開発に最適な場所であり、安定した強い風が吹いており、完全に稼働すると最大 2.6 ギガワットの電力を生成する可能性があるとされている。

これらの地域は、主要な漁場への基地であるばかりでなく、先住民族にとって重要な場所でもある。

ニューポートに本拠を置く、トロール漁業協同組合(Midwater Trawlers Cooperative)常務ヘザー・マンは、多くの利害関係者の懸念が無視されているように感じると述べ、この地域で32隻の漁船が操業をおこなっており、漁場を失うばかりでなく、予期せぬ環境への影響も懸念していると語った。

昨年2021年、バイデン政権は米国の洋上風力エネルギーについて高い目標を設定、2030年までに30ギガワットの電力生成を目指す方針を示した。

化石燃料からの移行を提唱する非営利団体“リニューアブル・ノースウェスト”のオレゴン州代表ダイアン・ブラントも洋上風力発電プロジェクトには、対処しなければならない独特の欠点があり、それは、やはり、漁業界や地域社会が抱いている『私たちの声は届いているのだろうか?』といった懸念や疑問だと指摘している。

ヘザー・マンは、米国政府からは、最も大きな影響を受ける可能性のある人々の懸念に耳を傾けることよりも、バイデン政権のエネルギー目標を達成することに関心があるように感じると語り、BOEMが興味を持っているのは、沿岸沖合区画をリースする競売を進め、政権の目標にチェック・マークを入れることができるようにすることだと言及した。

また、ヘザー・マンは、BOEMが、漁業界と地域社会が望むだけ、多くの会議を開催すると表明しているが、会議を開催することと実際に漁業界の意見に耳を傾けることは別のことだと言及、それは一方通行の関係で、本物のエンゲージメントではないとした上で、漁業界は取り返しのつかない道を歩むことになるのではないかと危惧しているのであって、洋上風力発電プロジェクトを否定したことは一度もなく、正しい、責任ある方法を求めているだけだと加えた。

ヘザー・マンは紛争の少ない沿岸沖合区画を探すためにオレゴン州沿岸沖合海域全体を再調査することを主張しており、そうしなければプロセスのスケジュールが大幅に遅れる可能性がある。

 

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ロシア 水産物流通業界 太平洋サケマス魚卵 前年比2.3倍と見積もる 国内市場に満足感

2023-08-24 00:39:38 | 日記

 

2023年08月24日

北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

[ロシア 水産物流通業界 太平洋サケマス魚卵 前年比2.3倍と見積もる 国内市場に満足感]

ロシア水産食品メーカ、卸売業者、流通業者ら大手約30社で構成される業界団体“ルイブヌイ・ソユーズ”(Рыбный союз:魚連合)副代表セルゲイ・グドコフは、今年2023年漁期、太平洋サケマスの漁獲量が過去5年間で最高の57万トンとなる可能性があり、当該魚卵製品生産量は2万3,000トンに達するとの観測を示している。

前年2022年の当該魚卵生産は1万トンだった。

ロシア国内市場の需要は1万6,000トン-1万7,000トンとされており、グドコフは、これを満たすのに十分な今漁期の実績だと説明している。

報告担当者 原口聖二:報告担当者は2017年にサンクトペテルブルグで開催された第1回ロシア国際漁業フォーラムの円卓会議でセルゲイ・グドコフと席を並べた。

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ロシア 水産物流通業界 カラフトマス豊漁卸売価格下落 あと2-3週間後に小売価格に反映 北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二 

2023-08-23 10:03:17 | 日記

 

2023年08月23日

北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

[ロシア 水産物流通業界 カラフトマス豊漁卸売価格下落 あと2-3週間後に小売価格に反映]

ロシア水産食品メーカ、卸売業者、流通業者ら大手約30社で構成される業界団体“ルイブヌイ・ソユーズ”(Рыбный союз:魚連合)副代表セルゲイ・グドコフは、今年2023年漁期、昨年2022年の3倍の太平洋サケマスが漁獲されており、カラフトマス製品の卸売価格が35%-40%下落していることから、魚卵製品も含め、2-3週間後に小売価格にこれが反映されるとの観測を示した。

これらは商流・物流の卸売と小売りのタイムラグであり、意思決定のもと大量の商品が入荷される時、大幅な値下げが予想され、最終的な市場評価額は9月末か10月初め頃に落ち着くと説明した。

 

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2023年ロシア太平洋サケマス操業5日間毎の漁獲における魚種構成の推移(8月20日) 北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

2023-08-23 10:02:03 | 日記

 

2023年08月23日

北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

[2023年ロシア太平洋サケマス操業5日間毎の漁獲における魚種構成の推移(8月20日)]

今年2023年漁期、ロシア漁業者による太平洋サケマスの商業操業は6月1日に開始され、8月20日までの生産量は、54万5,000トンとなり、当初漁獲勧告量の106.5%に達している。

また、この生産量は、直近奇数年2021年を15%上回っている。

今漁期の当該商業操業開始以前の5月後半から8月20日までの太平洋サケマス漁獲物の魚種構成の推移は別図のとおりで、カラフトマスが86%を占めている。

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ロシア科学研究機関 バレンツ海タラバガニ資源調査へ  科学調査船“プロフェッサー・ボイコ” (Профессор Бойко)

2023-08-21 00:44:01 | 日記

 

2023年08月20日

北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二

[ロシア科学研究機関 バレンツ海タラバガニ資源調査へ]

全ロシア海洋漁業研究所ヴニロは、所属科学調査船“プロフェッサー・ボイコ” (Профессор Бойко)が2023年8月-9月のバレンツ海のタラバガニ資源調査の任務を開始したと発表した。

この調査はバレンツ海南部のロシアEEZの広範な海域で行われ、当該資源の空間分布の特徴とパターン、生物学等の情報が収集される。

今年2023年、ロシアの全海域のタラバガニのTAC設定は2万8,780トンとなっているが、この内、バレンツ海が1万2,690トン、44%を占めている。

バレンツ海のタラバガニは、旧ソ連の1960年代に極東海域から移植され、2000年代に定着、繁殖を続け、ロシアEEZにおいて商業操業が開始された。

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#50 洋上風力発電と漁業 海外の経験 豪州 漁業界 政府提案は水産物消費者に壊滅的影響を与える

2023-08-21 00:43:50 | 日記

 

2023年08月20日

北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

[#50 洋上風力発電と漁業 海外の経験 豪州 漁業界 政府提案は水産物消費者に壊滅的影響を与える]

日本での先行する欧米の洋上風力発電の漁業分野との共栄、相乗効果等の成功体験は、ほとんどが開発事業者による切り抜き発信で、実際に漁業分野の情報にアクセスしていくと様々な問題が報告されている。

オーストラリアのニューサウスウェールズ州の漁業界は、ハンターとイラワラの沿岸沖合に洋上風力発電所を建設するという連邦政府の提案を強く非難している。

ニューサウスウェールズ州漁業者協会代表トリシア・ビーティは、連邦政府が検討している提案は馬鹿げており、絶滅危惧種の保護、自国の商業漁業者や水産物消費者に壊滅的な影響を与えるだろうと述べた。

気候変動・エネルギー大臣が、ハンターとイラワラの沿岸沖合を海洋再生可能エネルギープロジェクトのための地域とすると提案、雇用の安定とエネルギー安全保障という政府の意図を説明しているが、これらには海洋環境に重大な悪影響を与えるという深刻な懸念と証拠があるとトリシア・ビーティは言及した。

洋上風力発電プロジェクトは比較的新しいため、影響についてはつい最近まであまり知られていなかったが、現在、進行中の研究により、海洋生物、植物プランクトン、海流、さらに水温にまで影響を及ぼし、深刻な懸念すべき状況に至ることが分かってきていると語った。

洋上風力発電所の建設中の杭打ちの現場近くで魚類が打撲で死んだり、発生する衝撃音で建設が完了した後もしばらくの間、当該地域を資源が避け続けること、杭打ち衝撃音、稼働中のタービンの騒音が、魚類の産卵行動中のコミュニケーションなど生物学的に重要な手がかりをかき消す可能性があること、更には、商業的に価値の高い様々な魚種が、送電施設によって形成される電磁場にさらされ、通常の行動能力を失い捕食される機会が増大することが危惧されること等が既に報告されている。

トリシア・ビーティは提案されている洋上風力発電プロジェクトが、ニューサウスウェールズ州の商業漁業者に大きな影響を与え、同州ばかりでなくオーストラリア全土の水産物供給、食料安全保障を奪い、海上交通を危険に晒すことになると述べ、先月(2023年7月)にも、コストの高騰とプロジェクトの性質を理由に、英国での開発を中止したスウェーデンの*“ヴァッテンフォール”(Vattenfall)社の件を例示して、これらの追求をやめ、より実行可能で生産的な代替案に目を向けるべきだとして、提案を断固拒否すると語った。

*報告担当者 原口聖二:“ヴァッテンフォール”社は、2023年7月、英国イングランド東部ノーフォーク州沿岸沖合“ボレアス”洋上風力発電プロジェクトの開発を中止すると発表した。

これらの背景には、原材料の鉄鋼、風力タービン自体に加え、タービンを取り付ける特殊な船舶費用など、あらゆるものの価格の急激な上昇と、融資条件のコスト上昇が存在している。

2020年年代後半に発電を開始する予定だったこの1.4ギガワット(GW)プロジェクトは、気候変動目標の達成とエネルギー安全保障の強化を目的として、洋上風力発電容量を現在の約14GWから2030年までに50GWに拡大するという英国最大の計画の一つだった。

“ヴァッテンフォール”社代表アンナ・ボルグは、全体のコストが約40%増加しており、このプロジェクトを続けることはまったく意味がないと語った。

脱炭素ビジネス・コンサルタント会社は、この件が、英国の洋上風力発電産業全体にとって“真の危機”の始まりとなる可能性があると警告している。

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2023年漁期 中国 南シナ海と東シナ海の禁漁期間が明ける 一斉出漁

2023-08-21 00:23:05 | 日記

 

2023年08月20日

リポート 北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

[2023年漁期 中国 南シナ海と東シナ海の禁漁期間が明ける 一斉出漁]

今年2023年漁期、中国の南シナ海と東シナ海の禁漁期間が同年8月16日13:00に明け、福建省では800隻以上の漁船が一斉に出港した。

南シナ海と東シナ海の12°00′N–26°30′N海域では、同年5月1日から禁漁措置がとられていた。

中国が操業を解禁した海域には、沖縄県の尖閣諸島や台湾周辺も含まれていて、NHKが、地元の漁業関係者の中に、中国当局から解禁を前に「台湾周辺に近づくな」などと通知を受けた者と明らかにした者もあり、今後、中国当局が日本や台湾などとの関係を念頭に中国漁船をどのように管理するのか注目されると報じた。

 

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#49 洋上風力発電と漁業 海外の経験 米国 魚と漁業者を台無しにする 欧州の経験から学ぶべき

2023-08-18 15:57:40 | 日記

 

2023年08月18日

北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

[#49 洋上風力発電と漁業 海外の経験 米国 魚と漁業者を台無しにする 欧州の経験から学ぶべき]

日本での先行する欧米の洋上風力発電の漁業分野との共栄、相乗効果等の成功体験は、ほとんどが開発事業者による切り抜き発信で、実際に漁業分野の情報にアクセスしていくと様々な問題が報告されている。

米国海洋大気庁(NOAA)高度回遊性魚種諮問委員デヴィッド・シャリット(米国クロマグロ協会会長)は、米国政府が洋上風力発電の開発を急ぐあまり、魚と漁業者を台無しにしていると言及し、同国が、この分野で数十年先行している欧州の経験から学ぶべきだと指摘している。

欧州初の洋上風力発電所は32 年前に建設され、それ以来、116 施設となった。

欧州の洋上風力発電が海洋環境に及ぼす影響への取り組みは極めて遅かったが、ここ10年間で、これを取り返しつつある。

近年、欧州の科学者たちは、洋上風力発電プロジェクトによる海洋生態系の変化を認定するためのさまざまな方法を開発、これらを採用している。

調査は、ストレス因子となるタービン、音響、電磁場などの物理的存在と動的影響、表層魚と底魚の生息地、食物連鎖などを評価するように設計されており、多くの場合、将来の洋上風力発電所建設エリアをグリッドで系統的に調査し、その境界を越えてある程度の範囲まで拡大して行われている。

そうすることで、洋上風力発電プロジェクトの稼働後に再調査されたときに得られるデータと比較するために非常に重要な基準線が確立されることになる。

海洋生態系に対する洋上風力発電プロジェクトの短期、中期、長期的な影響を定量化することは、常識となりつつある。

これを現在の米国のアプローチと比較した時、まったく及ばないものとなっている。

米国のすべての洋上風力発電プロジェクトを管理する海洋エネルギー管理局(BOEM)は、建設前に調査を義務付ける計画はないと繰り返し述べている。

米国政府は、洋上風力発電プロジェクトが魚や漁業者に及ぼす潜在的な影響への備えを怠っており、非常に不確実な結果を受け入れることを好み、洋上風力発電開発の重要な生物学的、生態学的、社会経済的影響を無視している。

大規模な洋上風力発電と海洋生態系は根本的に相容れないという事実を認識する必要がある。

米国東部沿岸沖合のいくつかの洋上風力発電プロジェクトではすでに建設が始まっている。

これらのプロジェクトの一部は、およそ2028年までに稼働する予定となっており、すでに一部の開発事業者は、漁業者の生計に与える悪影響を相殺するための将来の補償について、BOEMと予備的な協議を行っている。開発事業者は、補償を可能な限り低く抑えるために全力を尽くすことに間違いはない。

漁業者は自分たちの主張を裏付けるデータの提供を求められるだろうが、現状を見た時、必要なデータは得ることが出来ないと予想される。

海洋生態系に対する洋上風力の影響を定量化するための基準となるデータが存在しない場合、魚と漁業者、そして実際には国家が不利益を被ることに帰着することになる。

NOAA、BOEM、そして全ての洋上風力発電開発事業者が基準となるデータの必要性を認識していることは明らかで、2020年に“オーシャノグラフィ”(Oceanography)に発表されNOAAが配布したリポート“洋上風力発電が魚や漁業に及ぼす影響の背景の設定”でも、最も適切な証拠を入手するには、データ・ベース設定の改善が決定的に必要だと指摘している。

しかし、BOEMは、このデータ・ベースの改善を確立する代わりに、NOAAから得た既存のデータを使用して、風力発電開発プロジェクトの区域を決定している。

BOEMが使用しているデータは、資源評価や漁業管理に使用するために開発されたもので、意図された目的にはまったく適していない。

主要な漁業法であるマグナソン・スティーブンス法は、魚やその生息地へ有害な影響を与える漁具の使用、浚渫やエネルギー開発などの非漁業活動を禁止している。

この法の保全目標は、潜在的な悪影響から海洋環境を保護するという、より広範な目標と一致している。

洋上風力発電プロジェクトのプラスとマイナスの両方の影響を正確に定量化するために不可欠な、海洋生態系に関するデータが、現在、絶望的に欠如しているということは、科学的不確実性の最小限の閾値をはるかに超えていることを意味しており、これらを満たすデータ・ベースを確立することで、はじめて海洋生態系に対する影響を理解することができ、まだリースされていない沿岸沖合区域に関する将来の意思決定を可能にするのである。

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