2022年03月31日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[ロシアスケトウダラ漁業者協会は貿易鈍化を好機ととらえる]
ロシアスケトウダラ漁業者協会(会長ブグラク)は、ルーブル安、供給制限等により、今年2022年の水産物輸入の鈍化が予想され、これを国内市場への製品供給拡大の好機ととらえている。
ブグラクは、2022年の水産物の輸入が、2014年の危機と同様な深刻な状態になる一方、冷凍・冷蔵物流のコストは50%増加し、このことから、水産物供給者が淘汰されるとの観測を示している。
2014年、経済危機と西側諸国からの食品禁輸措置により、ロシアの水産物輸入はほぼ半減した。
翌2015年の輸入は、13.6億ドル、47万2,000トンにとどまり、これは2013年比において金額で53%、数量で47%減となった。
この影響は、国内市場への水産物供給量の増加と、水産養殖の発展に帰着するところとなった。
現在の状況は、輸入白身魚を国産スケトウダラに代替する有望な機会といえる。
2021年、パンガシウス(アメリカナマズ)、ティラピア、メルルーサ等の白身魚のフィレが2万6,200トン、さらに、その他魚種のフィレが3万4,500トン輸入されている。
ブグラクは、ロシア漁業が近年、スケトウダラ、マダラ、ピクシャ(コダラ)を原料にフィレ、ミンスの生産を増加させており、需要の一部をこれらに置換することが可能だと指摘している。
また同時に、製品価格が需要制限要因になる可能性があるとしている。
ロシアの白身魚のフィレの輸入平均価格は、パンガシウス1.74ドル/kg、メルルーサ2.26ドル/kg、ティラピア3.32ドル/kgと低く、スケトウダラ原料のフィレはこれらと競合することになる。
また、ラウンド(W/R)のメルルーサは2万1,000トン輸入されているが1.72ドル/kgで、こちらもスケトウダラ、マダラが競合することになる。
ブグラクによるとロシアのスケトウダラ製品の年平均の市場規模は12万5,000トン-13万トン程度とされてきたが、昨年2021年の供給量は25万トンに達し記録となり、1人あたりの消費量もEUと米国の平均を上回った。
スケトウダラはロシアにとって最も重要な商業資源であり、国内漁業生産量に占めるシェアは35%となっている。
2021年、スケトウダラのフィレ、ミンス、すり身の総生産量は過去最高の15万トンに達しており、“投資クオータ”第1弾で建造されたスーパートロールと既存船の船内設備の更新による洋上加工と、新たに建設された水産加工場による陸上加工で、製品の高次加工化が促進されている。
スケトウダラ漁業者協会のデータでは、今年2022年初めから現在まで、スケトウダラのフィレ、ミンス、すり身の生産量は前年2021年同期比で65%増加している。