2019年06月07日(またがり資源情報:スルメイカ)
北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[韓国海洋水産部 次期漁期TACを発表]
韓国海洋水産部は昨日2019年6月6日、2019年漁期(2019年7月-2020年6月)の同部管理8魚種のTACを下表のとおり発表した。
総計は30万9,327トンで、サバが25%、アジが110%増加となった。
また、既報のとおりイカは、現漁期(2018年7月-2019年6月)から試験枠として新設された西海トロールのTACが実績枠となり、新漁期にも1万1,290トン設定された。
イカのTACを比較した時、日本が2019年漁期(2019年4月-2020年3月)6万7,000トン(前年比69.1%)に対し、韓国は9万7,103トン(前年比87.3%)で、2017年-2018年漁期の両国の漁獲量が4万2,000トン-4万3,000トンと、ほぼ同等にもかかわらず、低い削減率に設定している。
なお、韓国のTAC対象11魚種の内、개조개(オオアサリ)、참홍어(エイ)、소라(サザエ)は、管轄自治体管理となっており、今回の発表には含まれない。
(関連過去情報)
2019年05月20日 (またがり資源情報:スルメイカ)
北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[韓国スルメイカ2019年漁期TACが設定される 日本との削減率比較]
韓国海洋水産部は、日本EEZのまたがり資源と位置付けられるスルメイカの2019年漁期(2019年7月-2020年6月)のTAC設定を9万7,103トン(西海トロール枠1万1,290トンを含む)とすると発表した。
①2019年漁期の日本のTAC(2019年4月-2020年3月)と韓国の比較
日本 6万7,000トン(前年比69.1%)
韓国 9万7,103トン(前年比87.3%)
②2017年/2018年の日韓の漁獲量比較
日本 6万2,195トン/4万1,967トン(前年比67.5%)
韓国 7万6,360トン/4万3,109トン(前年比56.5%)
日韓の漁獲量がニアイコールになったにもかかわらず、韓国のTACの削減率が低いことが分かる。
日本近海のスルメイカは冬に東シナ海で生まれ主に太平洋を北上するグループ(冬季発生系群)と、秋に日本海で生まれ日本海を回遊するグループ(秋季発生系群)で構成されている。
日本の資源評価における秋季発生系群と冬季発生系群の韓国近海の漁獲分類は、“1月-3月冬季発生 4月-10月秋季発生 11月冬季・秋季混合 12月冬季”となっている。
韓国のTACの削減率が低い理由は、これまで冬季発生系群への依存度が低かったためとの仮説もたつが、冬季発生群に分類される2018年冬季から2019年春季にかけ、新たに設定された西海トロール試験枠で約8,200トンのスルメイカを漁獲しており、不明な部分が多いことが分かる。
また、現状、明らかに資源が日本海沿岸国とまたがっている当該資源について、次の漁獲情報が加味されていない資源評価とTAC設定になっていることが、あらためて指摘される。
①北朝鮮水域における中国漁船操業(日韓EEZよりはるかに大きい漁獲をしているとの情報がある)
②ロシア水域でのロシア国内漁船による沿海地方海域、西サハリン海域、南クリール海域操業
③ロシア水域沿海地方海域でのロ韓、ロ朝、ロ中漁業協定に基づく各国漁船の操業
④日本海を中心とした北朝鮮の違法操業
⑤その他
これらの指摘に対し、日本の関係機関は、秋季発生系群を対象に、日本海北西部の人工衛星の夜間可視データを利用し、灯火を用いる漁船操業のモニタリング体制の構築に取り組み、中国漁船、北朝鮮漁船の漁獲量の把握を試みているが、その推定は困難な状況にある。
なお、秋季発生系群を対象に、公表された2012年からの北太平洋公海部分(NPFC海域)での中国漁船とロシア漁船の漁獲データが日本の資源評価の一部に加味されたが、そのオーダは合算して千トン台で小さな数量となっている。