2023年03月29日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二
[#22 洋上風力発電と漁業 海外の経験 米国 漁業への影響 ノルウエーの研究結果を指摘]
日本での、先行する欧米の洋上風力発電の漁業分野との共栄、相乗効果等の成功体験は、ほとんどが開発事業者による切り抜き発信で、実際に漁業分野の情報にアクセスしていくと様々な問題が報告されている。
米国ニューイングランド漁業管理評議会(NEFMC)事務局長トーマス・ニースは、洋上風力発電プロジェクトの漁業への大きな影響に関する報告として、ノルウエー海洋研究所のリポートの存在を指摘している。
洋上風力発電所が放出する磁場が、白身魚のハドックの幼魚の移動能力を低下させ、捕食される機会を増加させる可能性がある。
洋上風力発電所は、高電圧交流 (HVAC) あるいはHVDCのケーブルのいずれかを使用して電力を陸上に送る。
前者は海岸から約 30マイル以内の短距離、後者はより長い距離のプロジェクトに適しているとされる。
最近の複数の研究では、商業的に価値の高い様々な魚種が、HVDC によって放出される磁場にさらされることによって悪影響を受けることが報告されている。
これにより、魚の移動能力が混乱し、状況によって捕食者からの危険にさらされる機会が増大することになる。
米国漁業者は、同じ白身魚のタラとハドックの類似性を指摘している。
米国東部メイン湾沖で提案されている洋上風力発電プロジェクトでは、ケーブルをタラの産卵場に通す計画となっており、個体数を大きく減少させる可能性があることに懸念を表明している。
トーマス・ニースはNEFMCがメイン湾でのすべての活動を管理しているわけではないが、多くの水棲生物資源を利用する漁業を管理していると述べ、洋上風力発電プロジェクトに関し、水産科学の専門知識を取り入れた取扱いを同国内務省海洋エネルギー管理局(BOEM)に求めるとした上で、産卵場などの“敏感で重要な資源の生息地”にケーブルを配置することを禁止すべきである旨を加えた。