2021年07月30日
北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[ロシア産スケトウダラ中国加工 もう元に戻らない可能性がある]
世界のスケトウダラ生産350万トンの内、ロシアが180万トン、米国が150万トンを占めている。
ロシアのスケトウダラ漁業は洋上でH&G(ドレス)を生産し、漁獲量の約2/3を中国へ輸出、中国が陸上でフィレ加工してEUへ再輸出することで成立してきた。
しかし、新型コロナウイルス(CV19)拡散防止対策以降、中国の冷凍水産物輸入規制により、ロシア産製品の輸出が極端に鈍化、2021年1月-5月、中国のH&Gを中心とする原料ベースでのロシアからの冷凍スケトウダラ製品輸入量は、41万3,900トンから10万500トンに激減した。
ロシアは国内外市場向けフィレの生産、アジア・アフリカ諸国等新規市場への製品供給に取り組んだが、今春のスケトウダラAシーズン操業においても前年の80%の漁獲は行ったことから、ロシア極東地方と、保税状態において韓国等に相当量の過剰在庫があるとされている。
ロシア水産物加工流通協会常務理事アレクサンドル・ファミン(報告担当者 原口聖二:元日ロ漁業委員会ロシア側代表)は、CV19以前のように中国加工能力が戻らない可能性があると指摘、この問題は規制ばかりでない経済的事情があると説明している。
ファミンは、CV19以前、まるで中国は掃除機のようにロシアのH&Gを中心とするスケトウダラ低次加工製品を一掃していたと語り、中国人自身がスケトウダラをあまり食べず、それをフィレ加工して、EU、米国、および他の国に再輸出していたと指摘、ただし、それは中国の労働力が、ほとんど価値がない時までのことだと言及した。
また、近年、中国の生活水準が上がり、ともなって賃金が上昇、中国企業がスケトウダラを買入して再加工することに経済的メリットが無くなっていると説明、その結果、伝統的に中国に輸出されていたスケトウダラ製品が、ロシアの冷蔵庫に落ち着き、行き場を失い、過剰在庫になっていると語った。
なお、スケトウダラ製品の過剰在庫に加え、太平洋サケマス操業が開始されたことから、当該製品滞留問題が深刻化しており、中国への製品供給が再開されない場合、業界は最大3億5,000万ドルを失う可能性があるとの観測を業界団体の代表者は明らかにしている。