内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

社会的価値体系の新たな構造化をもたらす新技術の導入 ― シモンドン研究を読む(25)

2016-09-27 09:18:20 | 哲学

 技術的発明は、人を解放し、主体を成り立たせる。「技術的努力は、人間を共同体から解放し、人間を真の個体とする」(« l’invention technique libère l’homme de la communauté et fait de lui un véritable individu », ILFI, p. 512)。技術的発明は、人々の間に、互いを分け隔てている文化的帰属とは独立に、主体同士としてのコミュニケーションを成立させ、端的に独立な個体としての人間同士の関係へと人々を導く。この関係が「通・超個体性」(« la transindividualité »)のモデルになる(MEOT, p. 336)。
 技術的発明が文化的に閉じた人間の共同体の中に普遍的な価値を入り込ませる。

La normativité technique modifie le code des valeurs d’une société fermée, parce qu’il existe une systématique des valeurs, et toute société fermée qui, admettant une technique nouvelle, introduit les valeurs inhérentes à cette technique, opère par là même une nouvelle structuration de son code des valeurs (ILFI, p. 513).

技術的規範が閉じた社会の価値体系に変更をもたらす。なぜなら、価値の分類化・系統化の基準がそこにはあり、あらゆる閉じた社会は、新しい技術を承認・受容することでその技術に内在する諸価値を導入し、その導入そのものによって己の価値の体系の新しい構造化を実行することになるからである。