内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

技術と哲学との新しい出会い ― シモンドン研究を読む(2)

2016-09-03 17:41:24 | 哲学

 シモンドンの哲学を主題とした研究文献は現在収集中で、まだそれほど多くは出版されていない単行本に限っても、単著共著合わせて六冊しか手元にない。
 それらの中で出版の日付が一番古いのが Gilbert Simondon. Une pensée de l’individuation et de la technique, Albin Michel, coll. « Bibliothèque du Collège international de philosophie, 1994 である。この本は、出版の二年前の1992年4月に Collège international de philosophie で開催されたシンポジウムの発表原稿が元になっており、巻頭には、出版に際しての Gilles Châtelet の序文とシンポジウムの際の Hubert Curien の開会の辞が置かれ、十一本の論文が収められ、巻末には、シモンドン自身の短い文章が二つ補遺として付されている。
 序文には、シモンドンの哲学の特徴が三点指摘されている。
 まず、従来の人間(中心)主義が主張する対立的な二元論、つまり、技術と文化を対立させる二元論、あるいは、科学的概念の厳密さと感情の混沌とした性格とを対立させる二元論を拒否すること。
 つぎに、科学的探究の諸作業を規則の適用に還元しないこと。そのような還元は思考の停止でしかなく、探究ではありえない。
 そして、技術的開発と科学的発明とを既存のカテゴリーの中に統合してそれらを麻痺させないこと。そうではなく、技術的開発や科学的発明が哲学にいかに決定的な仕方で影響を与え、新しい概念の創出をもたらすかを示すこと。
 シモンドンの哲学的企図は、技術と哲学との間の新しい分節化を要求する。それゆえに、このシンポジウムでは、哲学者、科学者(生物学者と数学者)、技術者たちが一堂に会し、個体化の哲学と技術の哲学との二部立てになっている。