ファゴ=ラルジョによれば、シモンドンが MEOT の結論で言おうとしていたことは以下のように要約される。
技術的発明行為は集団的レベルでの個体化である。技術者は優れた意味での転導者であり、この転導者が人間の文化を宇宙的な次元へと開く。
この要約に補足的説明を加えよう。
集団的レベルでの個体化とはどういうことか。技術的発明が実現されると、発明者は技術的対象との直接的関係に入ることで「純粋な個体」になる。しかし、その発明によって、単に発明者個人のレベルで技術的対象への直接的な働きかけとその対象とのコミュニケーションとが成立するだけではない。その発明が発明として社会的に受容されるとき、その発明がもたらした技術的対象を用いる人間の集団もまた、共同体の拘束から解放された技術的対象との直接的関係に入ることで「純粋な個体」に近づく。これが集団的レベルでの個体化である。
技術者が転導者であるとはどういうことか。技術者は、ある技術的対象の開発に適用された原理を、その開発を通じて獲得されたノウハウを基に他の対象へと応用する。かくして、ある原理は徐々にその適用領域を拡張していく。これが転導であり、それを実行する技術者はまさに転導者である。
なぜ転導者としての技術者は人間の文化を宇宙的次元へと開くことができるのか。諸原理を転導的に拡張・展開しようとする技術者は、そのときの人間社会の技術的限界をつねに乗り越えていこうとするからである。この方向での無限の志向性が人間的世界の枠組みを超えて宇宙的な次元の探究へと人間文化を導く。