夜明けの時間が少しずつ遅くなり、肌をなでる風もひんやりとして、一足早い秋の訪れを感じるようになった。
すだく虫の音もひと際賑やかで、夏の終わりを告げているようで、何となく気持ちが急かされる。
夏野菜のキュウリやトマトなども、盛りを過ぎて枯れ葉が目立ち、雑草も一頃の勢いを失っている。
その一方で、山栗のとげが鋭くなって黄味を帯び、クルミも一回り大きくなって枝がしなってきた。
小さな秋は、いつも通りに音もなく近づいて来る。
山の畑では、おばあさんが「ささげ」の取入れをしていた。
さやが青く豆が膨らまない間は、煮たり茹でたりして食べるが、今頃収穫するのは実食用である。
茎ごと引き抜いて葉を取り、藁で束ねて2週間ほど乾燥して、棒で叩いて豆を取る。
大小を選り分けて、問屋へ出すとのことである。
手間の掛かる割にはさほどの額にはならないが、僅かばかりの収入もお年寄りの生き甲斐になっているようだ。