kotoba日記                     小久保圭介

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宇野健蔵著 『七間町八景』

2023年01月09日 | 生活

七間町八景

今読ませていただきました

言葉は常に音楽的である

ということを

ここまであからさまに表現した作品を

目にしたのは何年ぶりだろう

この小説で内容を爆破して

リズムだけ残し

それが最後まで続く

フリージャズの即興の如く

スピードと間だけに

言葉を賭けた作品となっている

ジェームス・ジョイスの『フィネガンズ・ウェイク』は

翻訳不可能と言われて

英米文学者の柳瀬尚紀氏が

日本語に翻訳したことの功績は

帯を書いた当時の著名な文学者達をみれば

その比類なき野望と忍耐に感服するしかない

多言語で書かれ

意味不明の文が長編として刊行されている

さて

言葉の速度でもって

意味を消滅させる今作は

ジョイスのそれとは違い

スピードで意味を消滅させることの意図が

はっきり読み取れる

それが八景という題で

八景のどこからみても

景は景であるとばかり

高速なカットアップ法を用いて

読者を混乱させ

意味を消す

この作品に書かれてあるのは

こうでこうだから

と読むのは間違った読み方です

本作は音楽を聴くように

書かれてある言葉を朗読するに限る

それが最高の読書の楽しみ方の方法です

難解な書物であれ

意味不明の本作であれ

とにかくそこに書かれてあるものを読む

読むという行為自体が大事であることを

ここまで言い放った作者は最近いない

言葉は音であり

意味の表層を滑走するべく

言葉たちがばらばらになって

いっきに滑り落ちてくる

その爽快感は

再度申し上げるけれど

小説に意味を求める括りを

今一度小説好きな人たちは

いったん手から放し

書かれてあるおびただしい言葉の転がり様を

音読することで

体感するのが有益である

音楽はイヤホーンで聴くものではない

体全体で響きを楽しむものが

本来の姿です

同様に言葉も体で響かせてみると

今までとはまったく違った

八景が

体感できれば

この作品の良き読者となって

自己変化の愉悦に浸ることができるであろう

和音を無視した無軌道な音(言葉)こそ

本来の音(言葉)だと知るに至るまで

今作を何度も朗読する

言葉本来の姿が

意味というものを貼り付けられる以前の

音としての言葉の活き活きとした姿が

垣間見られれば

最高です

面白い作品でした

読ませていただき

ありがとうございました

 


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