釈迦の里
葉桜
池の下の階段を降り
門に立つ
光晴先生は言う
「若草、よもぎ、うぐいす色」
風の四月
ふきを持った女
東へ向かった
ーーー
ハインさん
ベトナムはホーチミンから
三十六歳 奧さんと娘二人を故郷に
日本で五年目
パンデミックで
感染者数 一位は中国 二位はベトナム と言う
ずっと帰れず
在日外国人は
祖国の家族と
Facebookや動画通信サイトで
毎晩
画面越しで会い 話す
涙もある
わたしたちは祖国 日本にいて労働をしているけれど
もしも外国で低賃金 二段ベッドで4人の共同生活
朝早くからバンに乗って
知らぬ街の労働場で言葉が通じぬ人たちと過ごし
懸命に夜は資格習得の勉強をして
過ごして
帰ろうにも契約年数の消化があり
パンデミックで帰郷もできぬとなったら
どうだろうか
相手の立場になって考える訓練を怠ってきた
わたしたちは
彼らを知らずのうちに傷つけてはいないだろうか
ハインさんは言う
「夏はベトナム、38度、39度、40度」
ハインさんに限らず
たいていの在日外国人労働者は
話しかけるとうれしがってくれる
笑顔でいろいろ答えてくれる
悲しい話と寂しい話
酷い話は一切せず
家族の写真を見せてくれたり
日本の「ヤキニクがスキ」と笑ったり
「ニホン、ナツ? アツイ!!」
と大きく笑う
労働場で笑顔を忘れていることに
彼らは話していて気づく
時に動画サイトで夜
4000キロ離れた故郷の家族に
わたしと話したことを
話題にしてくれているのかもしれない
風の四月
若草、よもぎ、うぐいす色
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