
その日は大学の卒業式だった。
ボクは会社を抜け出し、大学の講堂で卒業式に臨んだ。
通学生の若者らは、新しい門出の日だったが、おっさんにとっては、普通のサラリーマンに戻る日を意味していた。
それはボクにとって、少し寂しいことだった。
仕事を終え、ボクはひとりで卒業の祝杯をあげた。
巣鴨の立ち飲み屋。
「でかんしょ」はこの巣鴨にもあったのか。
新小岩、池袋と比べると、この巣鴨が一番広かった。
基本的には立ち飲みだが、腰掛けられるあるスペースもある。それは椅子などという野暮なものではなく、丸太状のもの。
駅や公園などで最近よく見かける腰掛けられるパイプみたいなアレである。
店内が広いので、どこにポジションするか迷う。
とりあえず、店の真ん中らへんにボクは立った。
「でかんしょ」はチケット制である。
1,000円で1,100円分のチケットが買えるのだ。
チケット制のいいところは、あれこれと使いみちをイメージできるところにあるだろう。
例えば、「チューハイ」(200円)を3杯飲むとして、それで600円。
あとの500円をどういう戦略で肴を頼むか。
幸か不幸か、メニューがやたらと多い。
迷うのである。とにかくしきりに悩むのだ。
例えば、「もつ煮込み」が350円ともなれば、残り250円。果たして本当に「モツ煮込み」でいいのだろうか。
それとも、串焼きを頼むか。しかし、1本100円は痛い。
そうなってくると、「本日のおすすめ品」を見るのがいい。
一品料理を安価で提供してくれる。
「わかめとタコの酢の物」が200円。
いいじゃん。
「里芋ほくほく」200円。
それもいいじゃん。
「イカ下足揚げ」200円。
いいじゃん。いいじゃん。
これで、ぴったり1,100円。
「チューハイ」×3+つまみ×3=1,000円て。
これはすごいことではないか?
ポイントは200円のつまみのチョイスだろう。
いや、350円と150円の組み合わせも悪くない。
けれど、ボクの場合は「本日のおすすめ品」の中から選ぶ200円メニューが一番いいと思う。
センベロチケットの楽しさは、あれこれと組み合わせを考える妙にある。
それは「たきおか」や「晩杯屋」にはない楽しみだ。
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