実際、縄のれんは店頭にはかかっていない.素通しの引き戸の向こうには古典的な立ち飲みの姿が見渡せる。
他を寄せつけない威厳は、名店立ち飲みのそれだ。
数々の立ち飲みを経験してきたが、この威厳と風格のオーラは並の店ではなく、一瞬店の引き戸を引くのを躊躇させてくれる。
少しの躊躇いのあと、店に入り、右手のカウンターに陣取ると実感が湧いてきた。
「ようやくここに辿りついた」と。
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メニューは「食堂」に相応しくおいしそうな洋食メニューがずらりと並ぶ。そのひとつひとつが本格的だ。
まさに「だけど食堂」!
レトロ調、コスプレ、この幾つかのトラップをかいくぐって辿り着くとそこには本格的な洋食屋。だけど、酒場である。この複雑なロジックは到底文章で表現できるものではない。
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今、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの280円酒場。都内の至るところに店舗を見かける。
「一番搾り」のジョッキも280円なのだから、ここに来れば誰でも貴族のように振る舞える。
さらに「麒麟淡麗」の大ジョッキをテーブルに配せば、より貴族的に見えること間違いなしだ。 . . . 本文を読む
でも、ちょっと待って欲しい。
「Covers」が発表されたのは1988年である。ボクはその当時のことをよく覚えている。
「Covers」が発売されようとした矢先、発売元のレコード会社、東芝EMIは「すばらしすぎて発売できません」というコピーを掲げ、急遽一般紙の一面を使って発売中止を決めた。あまりにもセンセーショナルな出来事だった。
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島らっきょう(300円)をつまみに飲む「オリオンビール」は最高だった。きめの細かい泡は沖縄のビーチに寄せて返す波のしぶきに似ていたし,黄金色のピルスナーはぎらぎらと照り尽くす沖縄の太陽そのものだった。 . . . 本文を読む
池袋から品川に行く道すがらがこれほど寂しい夜はなかったと思う。これまでは新宿、渋谷を通り過ぎると、品川まではわりとすぐに着いた。
きっと、果てしなく話題が尽きないおしゃべりのせいだったのかもしれない。
だから、今夜のボクは、もしかして堪らなくなって新橋まで来てしまったのかもしれない。 . . . 本文を読む
寄りかかれる場所を探したが、そんなとところはどこにもなかった。
落ち着かないのは居場所がないからなのだろうか。
ここじゃない、どこかへ。
行ったり来たりしながら、気が付けば、いつもボクはどこかの世界で、立ち尽くしている。
でも、自分がどこにいるのかすら、もしかするとボクは自覚していないのかもしれない。 . . . 本文を読む