バルコニー席に座り、「ザワークラウト」(580円)をつまみながら「スタウト」(840円)を口にする。
スタウトの苦味とドイツ料理の爽やかさ。
フランスの甘い抑揚はないけれど。
漆黒のローストビールの薫りが夕方の風に溶けていき、ビルの向こうの空が淡い色に染まっていく。 . . . 本文を読む
この世界観はまさしく漫画「AKIRA」だった。
ネオ東京から逃げて旧市街で酒を飲む。
2020年、オリンピックは東京に来るのだろうか。
「AKIRA」は現実であり、現実が「AKIRA」に近づいている。
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カウンターの古木に手を触れる。もう何十年も多くの人を様々な酒肴で愉しませてきたこのカウンターも経年によって、少し形を変え、ピカピカと光を放っている。その温かみのある木に触れているだけで、とても落ち着いた気分になるのは何故だろう。冷たいコンクリートをずっと歩き通してきたからなのか。 . . . 本文を読む
「ギネス」をゴクリと飲る。おいしい。漆黒のビロードが体内に落ちていく。ダブリンの音楽でなくとも、ギネスの麦汁は喜びを抑えられないらしい。タンブラーの細かい泡がぱちぱちといっている。そうすると、腰につんざくようなホーンセクションとともにルーサー・ヴァンドロスがパワフルにお腹の奥を振動させる。いいじゃないか。この雰囲気。演歌の似合う烏森に、ここはAORとR&Bが鳴り響く。
おつまみがなくても、このご機嫌な音楽こそが最高のおつまみだ。 . . . 本文を読む
本橋さんの写真に心を打たれた。現場で撮っているという確かな感触が写真の奥から見えてくる。 「あとがきにかえて」の中で本橋さんは、このような言葉を書いている。 写真は上手とか下手ではなく、どのように写真との関係に自分が関われるかと。 過日、カメラマンを目指していたという友人の言葉にハッとさせられた。 「そこにいなければ、その写真は撮れない」。 文章は頭の中でも書けるが、写真はそうではない。そこにいなければいけないのだ。 現場にいることがとりわけ重要になってくる。 . . . 本文を読む
真紅の赤いキャンバスに白地の壁は赤と白のワインを表現しているのだろうか。小窓のガラスにはキッチンのドローイング、店頭に掲げられた黒板には、その日のお奨めのメニューが書き込まれている。
まるで、違う風が吹いているようだ。タバコと加齢臭とやきとんの白煙、そしてオーデコロン、それにデオドラントが入り混じった風が、ここだけ西欧の陽気なそよ風に変わっている。
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日南。日向。サンマリン。
宮崎にはとかく陽の温かみを感じる。その地鶏、もしもはや地鶏とはいえないにしても、その温かみの中で育った鶏はもはやブロイラーではないのかも。
だから、頬張るたびにぎゅっとつまった味わいを感じるのは天にも昇るような福だよね。
そういう意味を含んでいる。 . . . 本文を読む