労働安全衛生法の改正により、平成27年12月1日から会社に「ストレスチェック制度」の実施が義務付けられるが、それに先立ち厚生労働省は、同制度の具体的な内容を定めた「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」を公表した。
それらによると、事業者には、定期的に(毎年1回)ストレスチェックを行うことが義務付けられ、その結果によっては、労働者の心理的な負担を軽減するための措置を講ずるよう努めなければならないほか、ストレスチェック制度の実施体制や実施方法などを定めた規程の整備などが求められている。
ところで、ストレスチェックは「医師、保健師、看護師、精神保健福祉士」により実施される必要があるので、当然コストも発生することになるが、この費用は会社が負担しなければならないのだろうか。
この点については法令等に明記されてはいないのだが、一般の定期健康診断の実施に要した費用について、「法で事業者に実施の義務を課している以上、当然、事業者が負担すべきものである」とする労働省(当時)労働基準局長による通達(昭和47年9月18日基発第602号)がある。ストレスチェックに要した費用もこれと同様に「会社負担」と考えるのが自然だ。
追記:本稿執筆後に、これと同趣旨の通達が発せられ(平成27年5月1日付基発0501第3号)、ストレスチェックに要する費用も会社が負担するべきこととされました。
では、ストレスチェックの受診に要した時間も、「労働時間」として扱わなければならない(=賃金の支払い対象にする)のかと言うと、“時間”については“費用”とは少しニュアンスが異なっている。上記通達では、一般健康診断(重量物取扱い等の有害業務従事者を対象とする「特殊健康診断」を除く)は「労働者の健康確保は事業の円滑な運営の不可決な条件であることを考えると、その受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましい」とするに留まっているのだ。すなわち、就業時間中にストレスチェック等を受診する時間を設け、あるいは、就業時間外に受診した場合に時間外労働として賃金を支払うことまでは、義務づけられていないと解される。
なお、ストレスチェック受診にあたり年次有給休暇を利用することは問題ないものとされている。労働基準法が改正され、年間に一定日数の年次有給休暇を取らせなければならなくなったこととも関連して、この方式の採用を検討する価値はありそうだ。
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