資格等級制度を設けている会社において従業員個々の資格等級を変更する場合、特に“降格”にあたってはトラブルとなりやすいので、慎重を期したい。
そもそも降格するには(本来は“昇格”するにも)、合理的な理由が必要だ。
しかし、「年功型人事」をベースに置いたままの資格等級制度は、一般的には「経験が長くなるほど能力が高まる」という前提で設計されているため、「能力が低まった」と判断する基準を設けていないことが多い。このような制度の下では、降格することは、非常に困難と言える。
「成果主義」を取り入れた資格等級制度ならば昇格も降格もありうることに合理的な説明が可能となるが、もし従来無かった制度を今後導入しようという話であれば労働条件の不利益変更となりうる点に配慮しなければならないし、また、成果主義人事のデメリットも数多く指摘されているところであるので、安易に新規導入を考えるべきではない。
一部には「昇降格は人事権の行使であるので会社の裁量が広く認められるはずだ」と主張する向きもあるが、会社の主張を認めている判例は、ほぼすべてが、役職を下げる「降職」(これも含めて「降格」と呼ぶこともあるが、ここでは区別しておく)についてのものである。資格等級を下げる「降格」は、明らかな指標によるものでない限り認められにくいと考えるべきだろう。
ましてや、経営者の恣意による降格や、賃金を下げることや自発的な退職を促すことを主眼に置く降格は、それが無効となるばかりでなく慰謝料まで支払うよう命じられるリスクすらある。
なお、「懲戒処分としての降格」というのもあるが、これについても、就業規則等に根拠規定を設けておかなければならず、かつ、社会通念上の妥当性も欠いてはならないので、注意を要するところだ。
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