派遣労働者を受け入れたものの、その者の能力が期待していたよりも低かったということが、まれにある。そうした場合に、派遣先としては、期間満了前に派遣契約を中途解除したくもなろうが、それは法的に許されるのだろうか。
これに関して、まず正しく理解しておくべきなのは、「派遣労働者の雇い主は派遣元(派遣会社)であって派遣先ではない」ということだ。
つまり、派遣契約を中途解約することは「B to B」の問題であって、原則として、行政機関はこれに介入しない。労働者派遣法でも、派遣労働者の国籍・信条・性別等を理由とする派遣契約解除を禁じ(第27条)、派遣先の都合による派遣契約の中途解除にあたっては、当該派遣労働者の新たな就業機会の確保、派遣元が支払うべき費用(休業手当等)の負担などの措置を講じなければならない旨を定めている(第28条)が、それ以上のことは制限していない。
こうしたことを踏まえて考えれば、派遣契約の中途解除の可否は「会社間でどのように取り決めているか」次第と言えるわけだが、派遣会社が用意する契約書には、「派遣元の責めによらない中途解除にあたっては、休業手当や解雇予告手当、場合によっては残余期間の派遣料金を賠償する」といった特約条項が設けられているのが通常だ。
したがって、結論としては、その派遣労働者が職場の風紀を乱したとか、企業イメージを著しく損ねたといったことでない限り、原則として派遣先側から派遣契約の中途解除はできない(中途解除するのであれば、最大で残余期間の派遣料金を全額補償しなければならない)と考えるべきだろう。
そもそも、冒頭の命題における「能力不足」が派遣労働の本旨を満たさないほどであったなら別の者を派遣するよう求めることは可能である一方、「“期待していたよりも”低かった」という理由による派遣契約の中途解除は、労働者派遣法第26条第6項が禁じる「派遣労働者の特定」に類する行為とも見られかねない。
派遣労働者に一定水準以上の職務遂行能力を求めるなら、それは派遣契約を締結する前に明確にしておくべきではなかろうか。
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