年次有給休暇(以下、「有休」と略す)は、原則として、労働者が任意の日に取得できることになっている。
労働基準法では、有休取得日の具体的な指定に関して会社が権利を行使できるのは「労使協定に基づく計画的付与」と「事業の正常な運営を妨げる場合における時季変更」に限定しており、それ以外は、労働者が指定した日に有休を取らせなければならないとしている。
そして、意外に思う人もいるかも知れないが、この規定は、日によって所定労働時間数が異なる労働者についても、同じ扱いが適用されるのだ。例えば“土曜半ドン”の勤務体系において、金曜に休もうが土曜に休もうが1日分の有休を使うのに変わりはないのをイメージすると理解しやすいだろう。(本稿においては、“半休制度”や労働基準法第39条第4項に基づく“時間単位付与”は採用していないものとする。)
となれば、有給休暇は、その名の通り“賃金の出る休暇”なのだから、労働者としては所定労働時間の長い日にこそ取りたくなるのも自然であろう。逆に、会社としては、所定労働時間の短い日に休んでもらいたいところだ。特に時給制の従業員については、有休取得日の賃金が目に見えて発生するので、その傾向が強まる。
では、有休取得日の賃金を、「所定労働時間分の通常の賃金」ではなく、「平均賃金」もしくは「標準報酬日額相当額」(労使協定の締結要)とするのはどうだろうか。もちろん合法(労働基準法第39条第7項)であるし、そうしておけば、どの日に休んでも同じ額の賃金が支払われるので、労働者は所定労働時間の短い日に休みやすくなるという寸法だ。
これは、一見妙案のように思えるが、冷静に考えてみると、会社にとっては不利になる話だ。つまり、所定労働時間の短い日に休んだ場合でも平均賃金または標準報酬1日分を支払うことになるので、結局、コスト面から見れば得策とは言えない。
むしろ、この策を講じるのは、所定労働時間の長い日に休まれることによる“業務効率の低下”を極力抑えるためと認識すべきだ。
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