厚生労働省の有識者会議「柔軟な働き方に関する検討会」(座長:松村茂 東北芸術工科大学教授)は、平成29年3月の『働き方改革実行計画』において「テレワーク(ICT(情報通信技術)を活用した、場所や時間にとらわれない働き方)の一形態」という位置づけであった「非雇用型テレワーク」を、「自営型テレワーク」と名付け直し、「雇用型」とは一線を画した“別物”として柱建てした。
自営型テレワークは、会社との間に雇用関係が無いことから、(法文上は)労働時間規制が無く、身分保障(解雇制限等)の義務も課されず、社会保険料の負担も無い。また、通勤費も支払わなくてよく、年末調整や住民税徴収等の事務負担も無い。
そのため、会社にとっては使い勝手が良いと考えられる向きが多いかも知れない。
しかし、類似のケースでは、フリーランスカメラマンの死亡を業務上災害と認めた事例(東京高判H14.7.11)や住宅設備機器の修理補修を請け負っていたカスタマーエンジニアを労働組合法上の労働者であると断じた事例(最三判H23.4.12)など、裁判所が実態を見て「労働者性がある」と判断する可能性はあるので要注意だ。
また、雇用関係が無いがゆえ、
(1)会社への帰属意識が希薄になる、
(2)ノウハウが社内に蓄積されない(社外に流出する危険性すら有る)、
(3)後継が育成できない、
といったデメリットがあることも認識しておかなければならない。
そうした点を踏まえたうえでメリットの方が大きいと感じられるなら、自営型テレワークを上手に活用するべきだろう。
通勤に係る社会的なコスト(一企業が支払う通勤費だけの問題ではない)の削減やワークライフバランスの実現等の観点からも、社会的に望まれていることではある。
なお、同じ厚生労働省の「雇用類似の働き方に関する検討会」(座長:鎌田耕一 東洋大学法学部教授)では、「労働者がその多様な事情に応じた就業ができるようにする」ことについて、雇用対策法の改正(法律名の変更を含む)も視野に入れつつ議論されている。こちらの進捗状況も注視しておきたい。
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